スポーツの世界史

スポーツの世界史
編著=坂上康博、中房敏朗、石井昌幸、高嶋 航
B6サイズ/652ページ/4500円+税/2018年10月1日発売/ISBN978-4-909383-04-4

本書は、専門家向けの論文集でも、また事典や教科書でもなく、読み物として面白い一般読者向けの「スポーツで読む世界史」をめざした。《面白さ》の中身はさまざま。ナショナリズム、アイデンティティ、ジェンダー、メディア、植民地、暴力、人種、民族、階級、市民、国民統合、政治的利用―それぞれの国や地域の歴史的な特徴を示すような魅力的なテーマや視点、興味深いトピックスやエピソードなどをふんだんに盛り込んだ。  スポーツを通した世界史との新たな出会いがここにある。

3つの特徴(1) スポーツ史の決定版

近代スポーツの半分以上を生み出した英米のスポーツ史をはじめ、社会主義国におけるスポーツの政治的利用、中南米などにおけるスポーツシーンと人種の問題、先進国において見られるジェンダーとスポーツの関係、ユーゴスラヴィアなど多民族国家における民族とスポーツなど、近現代において世界各地で見られるスポーツと政治・国家・経済など、それぞれのスポーツ誕生の背景とそれをめぐる世界史的問題を網羅。さらに選手のエピソードをまじえ、貴族のたしなみからグローバル文化に至る経緯を具体的に解説。

3つの特徴(2) 最新のスポーツ事情に言及

「2007年にマカオで開催したアジアインドア競技大会で、初めてeスポーツが採用され、 アジア競技大会でも2022年に正式種目となる。」(終章より)。
−−スポンサー企業やテレビ放映優先の大会日程やメダル至上主義、それに起因するドーピング問題など、現代スポーツ界に特徴的な問題を抉り、ネイションブランディングや世界経済、国際政治とスポーツとの関係を見透かす。

3つの特徴(3) webコンテンツ展開

巻末に記載されたパスワード(発売時シール貼付)を、本書紹介ページの下側にある「webコンテンツ_スポーツの世界史」をクリックしたあとに入力すると、本書の内容全てが見られるサイトへ入れます。各デバイス対応デザイン(レスポンシブ)で、画像はカラーで掲載され、拡大閲覧もスムーズ。パソコンはもちろんスマートホンでも読みやすく、いつでも読書を可能にします。
通常の電子書籍(kindleなど)では難しかった、見開きにわたる大きな画像の見やすいレイアウトなど、ビジュアル面を重視した体裁にしています。

【目次】

序章|「ルードゥス」から「スポーツ」への道のり
ルードゥスの世界/「スポーツ」という語の由来|「運ぶ」から「娯楽、慰み」へ/軍事問題としてのスポーツ/宗教問題としてのスポーツ(1)/宗教問題としてのスポーツ(2)/「スポーツ」の新たな意味︱刻印される階級意識/狩猟や釣りが「スポーツ」であるということ/世界に広がる「スポーツ」

第1章 イギリス|近代スポーツの誕生
18世紀的スポーツ/ヴィクトリアニズムの到来/ジェントルマン教育の改革とスポーツ/ミドルクラスとアマチュアリズム/労働者階級とプロサッカー/帝国とアマチュアリズムの長い黄昏

第2章 フランス|スポーツの魅力を引き出す「遊び」の精神
中世中期からフランス革命までのスポーツ/スポーツの王、王のスポーツ/19世紀から20世紀初頭におけるフランス・スポーツの3つの流れ/フランスから生まれた2つの近代オリンピック/第1次世界大戦後のフランスとスポーツ

第3章 ドイツ|市民的結社としてのトゥルネン協会とスポーツクラブ
トゥルネンの誕生/労働者トゥルネン・スポーツ運動の展開/トゥルネンとスポーツの抗争/ナチズムによる「均質化」と余暇の組織化/分断国家ドイツのスポーツとスポーツ体制/ドイツ統一とスポーツの発展に向けて

第4章 スペイン|「モザイク社会」の中のスポーツ
近代スポーツの伝播と受容/スポーツの大衆化とメディア、女性の参画/内戦、そしてフランコ独裁下におけるスポーツ/民主化と国際大会の開催

第5章 チェコ|世界最大のスタジアムでの大規模なマスゲームの祭典
4つの祭典のはじまり/変容するソコル祭典|体操祭からマスゲームを中心にしたスポーツ祭典へ/4つの祭典の特徴/戦後のソコル祭典とスパルタキアード

第6章 ハンガリー|市民社会における暴力とスポーツ
19世紀|男らしさと国民をめぐる競合/第1次世界大戦前後|軍事暴力支配と体育・スポーツ/20世紀|統制されない暴力とサッカー

第7章 ユーゴスラヴィア|多民族統合の象徴からナショナリズムの担い手へ
「ユーゴスラヴィア主義」とソコル運動/社会主義体制下のスポーツ/ユーゴスラヴィアの解体と紛争の中で/紛争後のスポーツ

第8章 ソヴィエト/ロシア|スポーツ大国の成立と再生
帝政期までのロシア・スポーツ/新しい人間|社会主義国家の身体文化/サッカーとアイスホッケー|「見るスポーツ」の発展/冷戦期のオリンピック/ソ連解体後のロシア・スポーツ

第9章 アメリカ|「レベル・プレイングフィールド」を目指す限りなき挑戦
アメリカの誕生と余暇、娯楽、スポーツ/3大スポーツと文化的統合/スポーツ文化の成熟/人種・エスニックマイノリティの経験/女性の経験/現代のアメリカンスポーツ

第10章 カリブ海地域|バックヤードのアスリートたち
植民地におけるクリケット体験/植民地解放への願い/アメリカへの道|旧スペイン領カリブ海地域/大リーガーの供給地へ|ドミニカ共和国/もし、神が望めば/グローバル化が生みだすアスリート/異文化混淆の歴史の中で

第11章 ブラジル|「人種」を通してみたサッカー小史
白人エリートのスポーツとしてのサッカー/国技となったサッカー/ペレ登場とマランドラージェン

第12章 アルゼンチン、ウルグアイ、チリ|スポーツからみる南米の政治史
前近代のスポーツ︱先スペイン期から植民地期まで/近代スポーツの導入︱自由主義の時代/スポーツと国家の関係構築︱変革の時代からポピュリズムの時代へ/スポーツと国家の関係の変容︱軍事政権期から民主化へ

第13章 オーストラリア︱スポーツは国民文化
9994|クリケット/マーングルック?|メルボルンが生んだフットボール/ルール30|商業的国民統合/ネットボール|女性による女性のためのスポーツ/ローンボウリング|老人のスポーツ?/アボリジナル・ノックアウト|先住民のスポーツ

第14章 アフリカ大陸|「スポーツとはなにか」を世界に問いかける大地
「アフリカ大陸」のとらえかた|「サハラ以南」に注目する/西洋スポーツの伝来と普及|20世紀初めまで/戦間期の展開|1920~30年代/アフリカのプレゼンスの高まり|20世紀後半のスポーツと政治

第15章 イスラーム|近代との調和
ムスリムの伝統競技/社会に根づく近代スポーツ|サッカー/スポーツをするムスリマたち

第16章 インド|植民地経験からクリケット大国へ
クリケット/サッカー/オリンピック

第17章シンガポール|東南アジアの一都市国家における帝国の遺産と世界的野心
スポーツはどのようにしてシンガポールにやってきたか/スポーツへの参加とその拡大/日本軍による占領とスポーツ/シンガポール人の国際大会への参加/シンガポールの経済発展とスポーツ界での野心

第18章 フィリピン|アメリカの「黄色い弟(リトル・ブラウン・ブラザー)」とそのスポーツ
アメリカの植民地化とスポーツの導入|1898年~1910年代/フィリピンスポーツの黄金時代|1920年代~1945年/スポーツ先進国からの転落|1945年~現在

第19章 中国|「東亜病夫」からスポーツ大国へ
スポーツの受容/YMCAの影響力/ナショナリズムのショーケース/躍進する新中国のスポーツ/改革開放時代を迎えて/高まるサッカーへの期待

第20章 朝鮮/韓国|スポーツに託された解放と統一の希望
朝鮮へのスポーツの伝播と組織化/植民地支配のなかのスポーツ/南北の対立とスポーツ/ソウル五輪開催の意味/南北のスポーツと統一

第21章 日本|スポーツと武術/武道のあゆみ150年
明治維新がもたらしたもの/スポーツの浸透と「武道」の創出/戦後の再出発と1964東京オリンピック/新たな時代に向かって

終章 グローバルスポーツへの展開|スポーツはどこへ?
勝利への渇望とドーピング/ナショナリズムと「あそび」の喪失/スポーツの国際的な組織化/黄金の三角形|スポーツ・テレビ・スポンサー/国際総合スポーツ大会の諸相/開発のためのスポーツ/eスポーツの展開とスポーツ概念の更新/〈終章章末資料(表1〜3)〉

【編著者紹介】(執筆順)

坂上康博(さかうえ やすひろ)担当章:「はじめに」「第21章」
1959年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。一橋大学大学院社会学研究科教授。研究テーマは日本の近現代を中心としたスポーツの社会史。主要著作に『昭和天皇とスポーツ』(吉川弘文館、2016年)、『にっぽん野球の系譜学』(青弓社、2001年)、『権力装置としてのスポーツ』(講談社1998年)、『海を渡った柔術と柔道』(青弓社、2010年、編著)。

中房敏朗(なかふさ としろう)担当章:「序章」「終章」
1962年生まれ。奈良教育大学大学院教育学研究科修士課程修了。大阪体育大学准教授。研究テーマはスポーツ史。主要著作に『なにわのスポーツ物語』(丸善プラネット、2015年、共著)、『体育・スポーツ史概論』(市村出版、2015年、共著)、『スポーツという文化』(TBSブリタニカ、1992年、共著)、『英国社会の民衆娯楽』(平凡社、1993年、共訳)。

石井昌幸(いしい まさゆき)担当章:「第1章」「第16章」
1963年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程単位取得退学。早稲田大学スポーツ科学学術院教授。研究テーマはスポーツ史。主要著作に「19世紀イギリスにおける「スポーツマンシップ」の語義―1800年から1892年までを中心として」『スポーツ社会学研究』(第21巻第2号、2013年)、「イギリスのインド支配と身体」『植民地教育史年報―植民地教育と身体』(第17号、2015年)。

高嶋 航(たかしま こう)「第17章(訳)」「第18章」「第19章」
1970年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退。京都大学大学院文学研究科教授。研究テーマは東アジアのスポーツ史。主要著作に『帝国日本とスポーツ』(塙書房、2012年)、『軍隊とスポーツの近代』(青弓社、2015年)、『中国ジェンダー史研究入門』(京都大学学術出版会、2018年、共編著)、『スポーツがつくったアジア』(一色出版、2017年、共訳)。

【執筆者】(執筆順) 和田浩一(わだ こういち)担当章:「第2章」
神戸大学大学院教育学研究科修士課程修了。フェリス女学院大学国際交流学部教授。研究テーマは日本におけるクーベルタン・オリンピズムの受容過程。主要著作に「筋肉と精神の「偉大な結婚」―近代オリンピックにおけるスポーツと芸術の結合」『現代スポーツ評論35』(2016年)、「近代オリンピックの創出とクーベルタンのオリンピズム」小路田他編著『〈ニッポン〉のオリンピック』(青弓社、2018年)。

有賀郁敏(あるが いくとし)担当章:「第3章」
1957年生まれ。筑波大学大学院体育科学研究科博士課程単位取得退学。立命館大学産業社会学部教授。研究テーマはドイツスポーツ史、余暇の社会史。主要著作に『現代スポーツ論の射程―歴史・理論・科学』(文理閣、2011年、編著)、『現代国家と市民社会』(ミネルヴァ書房、2005年、共著)、『〈方法〉としての人間と文化』(ミネルヴァ書房、2004年、共著)、『近代ヨーロッパの探究8 スポーツ』(ミネルヴァ書房、2002年、共著)。

岩瀬裕子(いわせ ゆうこ)担当章:「第4章」
首都大学東京大学院人文科学研究科社会人類学教室在学。研究テーマはスポーツと文化のはざまにおける社会人類学的研究(自治・身体・協働・民衆文化)。主要著作に「人間の塔の「歴史」の再解釈―「衰退期」に注目して」『スペイン史研究』(第31号、2018年2月)、「スペイン・カタルーニャ州における「人間の塔」」『よくわかるスポーツ人類学』(ミネルヴァ書房、2017年)。

㓛刀俊雄(くぬぎ としお)担当章:「第5章」
1956年生まれ。筑波大学大学院体育科学研究科博士課程単位取得退学。奈良女子大学研究院人文科学系教授。研究テーマは近現代身体文化史。主要論文に「チェコスロヴァキアの人民スポーツ運動―その位置づけに関する一試論」(有賀郁敏他『近代ヨーロッパの探究8 スポーツ』ミネルヴァ書房、2002年)。

姉川雄大(あねかわ ゆうだい)担当章:「第6章」
1974年生まれ。千葉大学大学院社会文化科学研究科博士課程修了。千葉大学アカデミック・リンク・センター特任講師。研究テーマは近現代東欧(ハンガリー)史。主要著作に「戦間期ハンガリーにおける国民化政策の反自由主義化」『歴史学研究』(第953号、2017年)、『せめぎあう中東欧・ロシアの歴史認識問題』(ミネルヴァ書房、2017年、共著)、『教育支援と排除の比較社会史』(昭和堂、2016年、共著)、『福祉国家と教育』(昭和堂、2013年、共著)。

山崎信一(やまざき しんいち)担当章:「第7章」
1971年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。東京大学教養学部非常勤講師。研究テーマは旧ユーゴスラヴィア地域の近現代史。主要著作に『映画「アンダーグラウンド」を観ましたか?―ユーゴスラヴィアの崩壊を考える』(彩流社、2004年、共著)、『アイラブユーゴ―ユーゴスラヴィアノスタルジー』1〜3(社会評論社、2014〜15年、共著)、『セルビアを知るための60章』(明石書店、2015年、共編著)、『スロヴェニアを知るための60章』(明石書店、2017年、共編著)。

岩本和久(いわもと かずひさ)担当章:「第8章」
1959年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。札幌大学地域共創学群教授。研究テーマは近現代ロシア文化。主要著作に『フロイトとドストエフスキイ』(東洋書店、2010年)、「近代ロシア文学におけるスポーツ表象の変遷」『スラヴ研究』(第62号、2015年)。

川島浩平(かわしま こうへい)担当章:「第9章」
1961年生まれ。米国ブラウン大学大学院史学研究科博士課程修了。早稲田大学スポーツ科学学術院教授。研究テーマはスポーツ史・スポーツ文化研究。主要著作に『アメリカ文化事典』(丸善、2017年、共編)、『人種神話を解体する 第3巻』(東京大学出版会、2016年、共編)、”Japan, American Football, and Super Bowl in Past, Present, and Future,” The International Journal of the History of Sport, 34 (1-2), 2017、『人種とスポーツ』(中央公論新社、2012年)。

窪田 暁(くぼた さとる)担当章:「第10章」
総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程単位取得退学。奈良県立大学地域創造学部准教授。研究テーマはスポーツ移民の文化人類学。主要著作に「海を渡る理由―ドミニカ共和国、聖母カルメンの祭り」『季刊民族学』第41巻3号(千里文化財団、2017年)、『「野球移民」を生みだす人びと―ドミニカ共和国とアメリカにまたがる扶養義務のネットワーク』(清水弘文堂書房、2016年)、『グローバル・スポーツの課題と展望』(創文企画、2014年、共著)。

松岡秀明(まつおか ひであき)担当章:「11章」
1956年生まれ。カリフォルニア大学バークレー校大学院文化人類学研究科博士課程修了。前・大阪大学コミュニケーションデザイン・センター招聘教授。研究テーマは宗教、医療、ブラジル文化史。主要著作に『ブラジル人と日本宗教』(弘文堂、2004年)、Japanese Religions in and beyond the Japanese Diaspora(Institute of East Asian Studies, University of California at Berkeley, 2007, 共編著)、「資源としてのサッカー―あるIT企業におけるその活用をめぐって」『成城大学共通教育論集』第9号(2017年)。

松尾俊輔(まつお しゅんすけ)担当章:「第12章」
1987年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程在学、同教務補佐員。研究テーマは南米の近現代政治史・スポーツ史。主な論文に “Sports Policy, the YMCA, and the Early History of Olympism in Uruguay,” in Cesar R. Torres and Antonio Sotomayor (eds.), The Olympic Movement in the Making of Latin America and the Caribbean (Fayetteville, AR: The University of Arkansas Press, forthcoming).

藤川隆男(ふじかわ たかお)担当章:「第13章」
1959年生まれ。大阪大学大学院文学研究科修士課程修了。大阪大学大学院文学研究科教授。研究テーマはオーストラリア史。主要著作に『妖獣バニヤップの歴史―オーストラリア先住民と白人侵略者のあいだに』(刀水書房、2016年)、『アニメで読む世界史2』(山川出版社、2015年、編著)、『人種差別の世界史―白人性とは何か?』(刀水書房、2011年)、『猫に紅茶を―生活に刻まれたオーストラリアの歴史』(大阪大学出版会、2007年)。

川本真浩(かわもと まさひろ)担当章:「第14章」
大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。高知大学人文社会科学部准教授。研究テーマはイギリス帝国=コモンウェルス史。主要著作に「「創られた伝統」としての長距離走―植民地期ケニアにおける陸上競技小史」『高知大学学術研究報告』63(2014年)、「「グレニーグルズ合意」(1977年)にいたる道(1)」『海南史学』50(2012年)。

佐藤尚平(さとう しょうへい)担当章:「第15章」
オックスフォード大学大学院政治学国際関係学研究科博士課程修了。早稲田大学文学学術院准教授。研究テーマは中東現代史とイギリス帝国史。主要著作にBritain and the Formation of the Gulf States, Manchester University Press, 2016、“‘Operation Legacy’: Britain’s Destruction and Concealment of Colonial Records Worldwide”, Journal of Imperial and Commonwealth History, 45 (4), 2017、‘The Sportification of Judo: Global Convergence and Evolution’, Journal of Global History, 8 (2), 2013.

Stefan Hübner(シュテファン・ヒューブナー)担当章:「第17章」
ヤーコプス大学大学院歴史学研究科博士課程修了。シンガポール国立大学リサーチフェロー。研究テーマは近現代史。主要著作にPan-Asian Sports and the Emergence of Modern Asia 1913-1974, NUS Press, Singapore, 2016(高嶋航、冨田幸祐訳『スポーツがつくったアジア―筋肉的キリスト教の世界的拡張と創造される近代アジア』一色出版、2017年)、“Muscular Christian Exchanges: Asian Sports Experts and the International YMCA Training School (1910s-1930s)”, Giles Scott-Smith and Ludovic Tournès (eds.), Global Exchange: Scholarship Programs and Transnational Circulations in the Contemporary World (19-21st Centuries), Berghahn Books, 2017.

金 誠(きん まこと/キム ソン)担当章:「第20章」
1974年生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科博士課程単位取得退学。札幌大学地域共創学群教授。研究テーマはスポーツ史・朝鮮近代史。主要な著作に『近代日本・朝鮮とスポーツ―支配と抵抗、そして協力へ』(塙書房、2017年)、「スポーツにみる植民地権力とナショナリズムの相克― 第11回オリンピック競技大会(ベルリン)の金メダリスト孫基禎を中心に」『現代韓国朝鮮研究』(第16号、2016年)。

書評紹介およびレビュー

okua(osaka university knowledge archiuve)(2019-02)より
紙面はこちらから(pdf)
『スポーツの世界史』インタビュー記事(『現代スポーツ研究』vol.3(2019-03)より
紙面はこちらから(pdf)

(2018年10月21日アマゾンレビュー)
スポーツの歴史を、国ごとに概説したものである。種目ごとというのはよくあるが、国ごとというのは珍しい。あくまでも「世界史」という視点に立ち、文化、社会、国家戦略、グローバリゼーションといった問題のなかにスポーツを置き、改めて問い直そうとしているからだ。
とりあげられているのは、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、チェコ、ハンガリー、ユーゴスラヴィア、ソヴィエト/ロシア、アメリカ、カリブ海地域、ブラジル、アルゼンチン・ウルグアイ・チリ、オーストラリア、アフリカ大陸、イスラーム地域、インド、シンガポール、フィリピン、中国、朝鮮/韓国、日本。
それぞれの国のスポーツ史研究家が執筆者となり、わかりやすく語ってくれている。単一のテーマや種目ではなく、幅広く扱われているので、全体像がよく分かる。入門書として最適だろう。
一方で、国ごとの特徴も見えてきて興味深い。なぜオリンピック種目の半数がイギリスで誕生したのか。カリブ海地域で野球選手として成功してアメリから渡ることが、本人や地域社会にとってどのような意味をもつのか。かつて中国では上層の人々のやるようなものではないと軽蔑されたスポーツが、国家的に重要な位置づけへと変わってきた経緯はどのようなものなのか。
650ページ以上と分厚い本だが、何度も読み返すべき魅力に満ちている。

朝日新聞2018年10月6日掲載
『スポーツの世界史』(坂上康博、中房敏朗、石井昌幸、高嶋航編著、一色出版・4860円)は、スポーツの発展の歴史を国ごとにまとめた。競技ごとの歴史をまとめた本はあるが、国ごとは珍しい。総勢20人の執筆編集チームを立ち上げ、21カ国と3地域を網羅した。論文集でも事典でもない歴史物語を目指し、スポーツを通して国や地域の素顔を描く。

日本経済新聞2018年11月8日掲載
ありそうでない、網羅的集大成。
政治体制、階級、性差、権力など、社会のあり方が浮かぶ

2018年10月2日、最近のアナログレコードみたいにDLコードを仕込んだり、ユーゴスラヴィアやソ連など所謂東側の国にも頁を割き気になった坂上康博,中房敏朗,石井昌幸,高嶋航 (編著)『スポーツの世界史』(一色出版)が届きました。というか、ユーゴスラヴィアの項の筆者は『アイラブユーゴ』の山崎信一氏じゃないですか。

2018年10月5日、『スポーツの世界史』(坂上康博他編、一色出版)が手元に届いた。帯に本当に書いてある(巻末のパスワードを入力すると、全ての内容がwebページで閲覧できます)。持ち運びが大変な大著なだけに、webで読めるのはありがたい。面白い試み。

2018年9月9日、一色出版から『スポーツの世界史』(坂上康博他編)が刊行されるようです(9月25日予定)。そうそうたるメンバーです。/スポーツはどのように生まれ、どのように世界史を創ってきたのか?

2018年11月23日、旅のお供は『スポーツの世界史』(一色出版)。この9月に発売されたばかりの分厚い本この本は、読み応えがありそうです。

ミエリン鞘はとも呼ばれ、軸索に巻き付いて絶縁体として働く構造である。これにより神経パルスはミエリン鞘の間隙を跳躍的に伝わる(跳躍伝導)ことで神経伝達が高速になる。ミエリン鞘は末梢神経系の神経ではシュワン細胞、中枢神経系ではオリゴデンドロサイトから構成される。

脳の中にある空洞のこと。脳脊髄液で満たされている。脊髄にあるものは中心管と呼ばれる。

神経堤細胞は脊椎動物の発生時に見られる神経管に隣接した組織。頭部では神経、骨、軟骨、甲状腺、眼、結合組織などの一部に分化する。

細胞の生体膜(細胞膜や内膜など)にある膜貫通タンパク質の一種で、特定のイオンを選択的に通過させる孔をつくるものを総称してチャネルと呼ぶ。筒状の構造をしていて、イオンチャネルタンパク質が刺激を受けると筒の孔が開き、ナトリウムやカルシウムなどのイオンを通過させることで、細胞膜で厳密に区切られた細胞の内外のイオンの行き来を制御している。刺激の受け方は種類によって多様で、cGMPが結合すると筒の穴が開くものをcGMP依存性イオンチャネルと呼ぶ。TRPチャネルも複数のファミリーからなるイオンチャネルの一群であり、非選択性の陽イオンチャネルである。発見された際に用いられた活性化因子の頭文字や構造的特徴から、A (Ankyrin), C (canonical), M (melastatin), ML (mucolipin), N (no mechanoreceptor), P (polycystin), V(vanilloid)の7つのサブファミリーに分類されている。TRPは、細胞内や細胞外の様々な刺激によって活性化してセンサーとして働いたり、シグナルを変換したり増幅したりするトランスデューサーとしての機能も併せ持つ。温度センサーやトウガラシに含まれるカプサイシンのセンサーとしても機能していることが知られている。

任意の遺伝子の転写産物(mRNA)の相同な2本鎖RNAを人工的に合成し生物体内に導入することで、2本鎖RNAが相同部分を切断して遺伝子の発現を抑制する手法。2006年には、この手法の功績者がノーベル生理・医学賞を受賞している。

様々な動物種間で塩基配列やアミノ酸配列を比較することによって、類似性や相違を明らかにする手法。この解析によって動物種間の近縁関係や進化の過程を予測することが可能になる。

発生過程で神経管を裏打ちする中胚葉組織であり、頭索類・尾索類では背骨のような支持組織としての役割を持つ。脊椎動物では運動ニューロンの分化を誘導するなど発生学的役割を持つ

魚類に顕著にみられる鰓のスリットで、哺乳類では発生の初期にはみられる。発生が進むと複雑な形態形成変化が起き、消失するが、外耳孔などは鰓裂の名残ということができる。

動物の初期発生において最初の形態形成運動として原腸陥入が起こる。原腸は消化管に分化する。この原腸陥入によって生じる「孔」を原口と呼ぶが、これが将来の動物の体の口になるのが前口動物であり、肛門になるのが後口動物である。半索動物、脊索動物は後口動物である。

ナマコの幼生のことをオーリクラリア幼生と呼ぶが、ウニのプルテウス幼生、ヒトデのビピンナリア幼生、ギボシムシのトルナリア幼生など、形態的共通性をもつ幼生全体をまとめてオーリクラリア(型)幼生と呼ぶ。今日ではディプルールラ型幼生という呼び方が広く使われている。この説はガルスタングが1928年に提唱した。その時代にはオーリクラリアという用語が使われたため(ディプリュールラ説ではなく)オーリクラリア説と呼ばれている。

Hox遺伝子はショウジョウバエで発見されたホメオティック遺伝子の相同遺伝子である。無脊椎動物のゲノムには基本的に1つのHoxクラスターがあり、脊椎動物のゲノムには4つのHoxクラスターがある。Hoxb1は4つあるクラスターのうちのBクラスターに属する1番目のHox遺伝子という意味である。

脊椎動物胚の後脳領域には頭尾軸にそった分節性(等間隔の仕切り)がみられる。この各分節をロンボメアと呼び、図14に示すように7番目までは形態的に明瞭に観察できる。

脊椎動物のゲノムにはふたつか3つのIsletが存在する。Isletは脳幹(延髄、橋、中脳)の運動性脳神経核に発現して、運動ニューロンの分化に関与している。

感桿型では光刺激はホスホリパーゼCとイノシトールリン酸経路を活性化させる。繊毛型ではホスホジエステラーゼによる環状GMPの代謝が関与している。

気嚢による換気システムは獣脚類と呼ばれる恐竜から鳥類に至る系統で段階的に進化していったと考えられる。

このような特異な形態は胚発生期には見られず、生後に発達する。その過程は頭骨に見られる「テレスコーピング現象」と並行して進む。

1. Sato, T. (1986) A brood parasitic catfish of mouthbrooding cichlid fishes in Lake Tanganyika. Nature 323: 58-59.

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4. Meyer, A. et al. (1990) Monophyletic origin of Lake Victoria cichlid fishes suggested by mitochondrial DNA sequences. Nature 347: 550-553.

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31. Janvier, P. (2015) Facts and fancies about early fossil chordates and vertebrates. Nature, 520(7548), 483.

卵や精子、その元となる始原生殖細胞などを指し、子孫に遺伝情報が引き継がれる細胞そのものである。

卵や精子を作る減数分裂において、母由来の染色体と父由来の染色体が対合したときに、同じ領域がランダムに入れ替わる(組み換えられる)。つまり、我々の”配偶子の”染色体は、父親と母親由来の染色体がモザイク状に入り交じったものなのである(体細胞の染色体は免疫グロブリンなどの一部の領域を除いて基本的には均一なものと考えられている)。

 タンパク質にコードされる遺伝情報をもつ塩基配列。狭義にはゲノムDNAのうち、mRNAに転写され、タンパク質になる部分。近年は、タンパク質に翻訳されないものの、機能をもつtRNA、rRNAやノンコーディングRNAなども遺伝子の中に含められるようになっている。本書では、特に注意書きのない限り、タンパク質の元となるmRNAになる部分を遺伝子、と呼ぶ。

 では、その転写因子はなにが発現させるのか、というと、やはり別の転写因子である。卵の段階から、母親からmRNAとして最初期に発現する遺伝子は受け取っているので(母性RNA)、発生の最初期に使う転写因子を含む遺伝子群に関しては、転写の必要がないのである。その後、発生、分化が進んでいくと、それぞれの細胞集団に必要な転写因子が発現し、実際に機能をもつ遺伝子の転写を促す。

遺伝子は、核酸配列の連続した3塩基(コドンと呼ばれる)が1アミノ酸に対応し、順々にペプチド結合で繋げられてタンパク質となる。3つの塩基は43=64通りになるが、アミノ酸の数は20個、stopコドンを含めても21種類しかない。したがって、同じアミノ酸をコードするコドンは複数あり、たとえ変異が入ってもアミノ酸は変わらないことがある。これを同義置換と呼ぶ。一方で、変異によってコードするアミノ酸が変わってしまう置換を非同義置換と呼ぶ。

 ふたつの系統が祖先を共通にした最後の年代。本章では、近年の分岐年代推定を利用して作成された系統樹(当該文献[9]のFig.1を参照)からおよその年代を読み取り、記入している。

 アフリカツメガエルや、コイ科、サケ目など、進化上の随所でも全ゲノム重複が起こっている。

 最もよく知られている放射性同位元素による年代測定は、放射性炭素年代測定である。炭素12Cは紫外線や宇宙線によって、空気中では一部(1/1012)が常に14Cに変換されている。つまり、大気中ではいつの時代も1兆個の炭素原子のうちひとつが14C、残りが12Cという割合なのである(太陽活動の変化などにより若干のブレはある)。しかし一旦生物の体内に炭素が取り込まれ、そしてその生物が死に、地中に埋まってしまえば、もう宇宙線も紫外線も当たらないので、14Cへの変換は起こらない。ここで14Cは放射性同位元素であることに注目したい。14Cは約5730年で半分が崩壊し12Cに変換される。したがって、14Cの比率でいつその物質が地中に埋まったのかがわかるのである(文献7)。

 ただし、この放射性炭素年代測定では、14Cの検出限界の関係で、せいぜい6万年が限界である。それより昔は火山岩に含まれる物質の、やはり放射性崩壊の半減期を元に推定される。例えば、K-Ar法では、40Kが40Arに13億年の半減期で放射性崩壊することを利用する。溶岩からできたての火山岩か、あるいは何億年も経ったものかを調べることができる。40Kは岩石中に元々大量に存在するため、差異を検出することは不可能だが、40Ar(常温で気体)は大気中には微量しか含まれないため、岩石中に封入された気体の中の40Arの含有率を計測することにより、その岩石の古さがわかる。当然、40Arの率が高い物が古い岩石である。このように、複数の放射性元素の崩壊の半減期から地質年代というのは推定される。

 南米にもごく少数ながら有袋類が現存しており、これらのゲノム解析・比較から、オーストラリア・南米で現生の有袋類の共通祖先は、実は南米で生まれ、当時陸続きだった南極大陸を経て、オーストラリアにいたったと考えられている。

 世界で最も臭いといわれているシュールストレミングをネットで取り寄せて購入したとき、人々は逃げるどころか、わざわざ悶絶するために集まってきた。いい匂いの物を取り寄せても20人もの人数は集まるとは思えず、怖い物見たさという悪趣味な好奇心はたいしたものである。無論、取り寄せた私も例外ではない。ちなみに、シュールストレミングはひとかけらをクラッカーの上に載せるくらいの食べ方なら悪くない気もする。

このふたつの硬骨の作られ方について、第3章に詳述があるので参照。

 ガノイン鱗には我々の歯のエナメル質を作る遺伝子と相同な遺伝子が発現しており(文献18)、イメージとしては歯で身体を覆われているようなもので、当然極めて強固である。

 遺伝子にはその由来によっていくつかの異なる呼び名がある。オーソログとは、共通祖先がもつある遺伝子Aが、種分化によって2種以上の生物に受け継がれた時、受け継がれた遺伝子たちをオーソログと呼ぶ。パラログとは、遺伝子重複によって生じたふたつ以上の遺伝子を指す。最近では大野乾氏の功績をたたえ、ゲノム重複によって生じたパラログで現存するものを特にオオノログOhnologと呼ぶ。

 異化と同化……この2種類の化学反応によって生命活動は維持されている。異化は物質を分解してエネルギーを取り出す代謝経路、同化はエネルギーを使って必要な物質を体の中で作り出す代謝経路。

 アデノシン三リン酸の略。生体内のエネルギー通貨として、様々な化学反応に用いられている。

 組織中の核酸分子(ここでは特定の遺伝子から転写されたmRNAを指す)の分布を検出する手法。調べたい遺伝子の塩基配列を元に、そのmRNAに特異的に結合する分子を設計・合成することで特異度の高い検出が可能となっている。

 通常の生物の核ゲノムはそれぞれの両親に由来する染色体が2本1セット存在し(ディプロイド)、その染色体間で組み替えが起こるため遺伝的な由来を辿る作業がしばしば煩雑になる。しかしミトコンドリアは母親由来であるため(ハプロイド)、そのゲノムを利用することで比較的簡便に遺伝的な類縁関係を遡ることが可能となる。

 増幅断片長多型:制限酵素で切断したゲノムDNA断片をPCRにより増幅し、断片の長さの違いを網羅的に検出比較する方法。この断片長の違いを種間の類縁関係の推定に使用することが多い。

 sexual conflict。ある形質が片方の性にとっては有利だが、もう片方の性にとっては不利な場合にオスメス間で生じる対立。

 次世代シーケンサーを利用して、各組織に発現する遺伝子の種類や量を網羅的かつ定量的に推定する解析方法。

 真核生物のゲノムに散在する反復配列のうち、一度DNAからRNAに転写され、その後に逆転写酵素の働きでcDNAとなってからゲノム中の別の座位に組み込まれるものを指す。数多くのレトロポゾンが存在しており、例えばヒトゲノムは約40%がレトロポゾンによって占められている。

 太陽光には連続したことなる波長成分の光が含まれているが、その波長によってエネルギーが異なるため、水中に到達する波長成分の割合が深さによって異なることがわかっている。特に濁ったビクトリア湖のような水環境では浅場の方が短波長である青色光の成分が多く、深場では長波長の黄色〜赤色の成分が多いことがわかっている。

 タンパク質をコードするDNA配列上の塩基置換にはアミノ酸の置換を伴う非同義置換と、伴わない同義置換がある。一般に、同義置換は生体に影響を及ぼさないため中立であるが、非同義置換は生体にとって不利であることが多い。ただしタンパク質の機能変化が個体にとって有利な場合は非同義置換の割合が上昇することが知られており、それを正の自然選択と呼ぶ。同義置換と非同義置換の割合を統計学的に比較する方法がある。詳細については第7章およびコラム「適応進化に関わる候補遺伝子や候補領域を絞り込むアプローチ」を参照。

   発生初期の胚の一部の細胞群から作られ、生殖細胞を含む様々な組織に分化可能な性質(多能性)を有する細胞株。英語名(embryonic stem cells)の頭文字をとって、ES細胞と呼ばれることも多い。

 変異体を元になった親系統と交配すること。TILLING変異体に関しては変異以外の部分を親系統由来のゲノムに置換するために行う。1回の交配で全体の50%の領域が置換されるため、90%以上を置換するためには最低4回の、99%以上を置換するためには最低7回の戻し交配が必要である。

 タンパク質の二次構造のうち代表的なモチーフのひとつ。水素結合により形成されたらせん状の形である。

 Francis Crickが1958年に提唱した、遺伝情報がDNA→(転写)→mRNA→(翻訳)→タンパク質、という流れで伝わるという概念のこと。分子生物学の基本となる極めて重要な概念である。

 ヒメダカの原因遺伝子としてだけでなく、ヒトの先天性白皮症(つまりアルビノ)やホワイトタイガーの原因遺伝子としても知られる。水素イオンを運ぶトランスポーターをコードすることがわかっているが、その黒色素産生(メラニン合成)における機能は未解明な点が多い。

 相同組換えの鋳型となる外来DNA断片のこと。通常、導入したい配列(GFP遺伝子や特定の塩基置換など)の上流・下流それぞれに、導入したいゲノム領域と相同な配列(相同アームと呼ばれる)を持ったDNA断片である。

 RNAポリメラーゼが結合し、RNAを転写するのに必要最小限の遺伝子上流配列。通常、単独では下流の遺伝子は転写されないが、周辺に転写活性化領域(エンハンサーなど)が存在すると、その影響を受けて下流に存在する遺伝子が転写される。

 オオシモフリエダシャクの「工業暗化」の例を考えるとわかりやすい。これは、産業革命以降のイギリスで、暗化型と呼ばれるより黒い個体の割合が多くなったとされる例である。この蛾は、自然が多い地域では淡色型が目立ちにくく、鳥に捕食されづらかったが、すすで黒くなった木が多い工業地帯では、より黒い暗化型のほうが目立ちにくく、生き残りやすかった。この場合、仮に蛾の色をより黒くするアミノ酸変異が生じたとすると、そのアミノ酸変異は工業地帯で生存に有利で、固定されやすいだろう。ちなみに、近年、具体的にどんな遺伝的変異がこの工業暗化に関わっていたのかが詳細に解析されつつある。

 SWS = short wave sensitive opsin、つまり短波長の光に感受性をもつオプシンのサブタイプ。

 第4章にも記載されているように、深いところには波長の長い赤い光のみが届く傾向がある。つまり、水深の深いところに棲む集団では、青い光を感受するSWSの機能は重要ではなくなってしまう。

 Gタンパク質はGTP結合タンパク質ともよばれ、GTPと結合することで活性化される。GTPを加水分解する性質をもっており、結合しているGTPがGDPに加水分解されると自身が不活性化される。受容体からの信号を中継するものは三量体(α、β、γサブユニット)として存在している。

 神経伝達物質は、放出された後、即座に分解されなければ迅速な伝達を成し得ない。したがって、こういった分解酵素の存在は、ATPが実際にその部位で神経伝達物質として働いていることの傍証となる。

 セロトニンは生体内に存在するモノアミンの一種であり、神経系では神経伝達物質として機能する。生体内のセロトニンの大部分(〜95%)は腸管に存在しており、神経系に存在するものは割合としては小さい。神経系では中脳の縫線核という部位のニューロンで産生され、情動機能等に関係しており、セロトニンの再取り込み阻害剤には抗鬱薬の作用がある。味蕾に存在するセロトニンはそれらとは別の働きをもっていると考えられる。

 迷走神経には感覚性の線維と運動性の線維の両方が含まれており、ここでの迷走感覚神経とはその中の感覚性の要素のみを指す。

 神経細胞(ニューロン)で、突起状の構造(軸索や樹状突起)以外の、核の周辺部の構造を細胞体という。

 ある細胞が放出するリガンドが、その細胞自身の受容体に働くことを自己分泌という。近傍の細胞の場合は傍分泌と呼ぶ。近隣の同じ性質をもった細胞に作用する場合と、自分自身に働く場合を合わせて、自己・傍分泌と呼ぶことが多い。哺乳類のキスペプチンニューロンは、キスペプチン以外に放出するニューロキニンB、ダイノルフィンと呼ばれるペプチドが、キスペプチンニューロン自身に作用することで、アクセルとブレーキのように働き、そのタイムラグでキスペプチンの放出を間歇的に引き起こす。これが前述のGnRHパルスを生み出しているとされている。

 市場に出ている子持ち昆布の中には、ニシン以外の魚(タラの仲間など)を用いて加工されているものもある。また、本物のニシンの卵の場合も、自然に海藻に産みつけられた卵はもっとまばらなので、あのようにびっしりと卵が並んで食べ応えのある子持ち昆布は人為的に作られているようだ。

 タンパク質の一次構造を形成する際にアミノ酸間に形成されるペプチド結合ではなく、側鎖にあるアミノ基とカルボキシル基の間に形成されるペプチド結合のこと。

 2-⑴で述べたように魚類の卵膜の別名は“コリオン”である。将来コリオンになるタンパク質のため、“材料”の意味をもつ“-genin”をつけて、コリオジェニンと呼ばれている。

 遺伝子のうち、半数体ゲノムにつき1コピー(体細胞では2コピー)しかない遺伝子以外のもの。

 共通祖先から生じたいくつかの遺伝子のうち、異なる生物種において類似または相同な機能をもつ遺伝子同士のこと。たとえば、ヘモグロビン、ミオグロビン、サイトグロビンなどは共通祖先から由来するグロビン遺伝子ファミリーであり、ヒトもマウスもこれらの遺伝子をもつが、このうちヒトのヘモグロビン遺伝子とマウスのヘモグロビン遺伝子はオーソログの関係にあるといえる。

 遺伝子ファミリーの中には、突然変異などによって機能を失ってしまうものがある。例えば、変異によって翻訳の途中にストップコドンが入ったり、プロモーターの欠損による転写不能や、転写後のプロセッシングに関与する配列の欠如による成熟mRNAの形成不全などがある。このように、配列の痕跡は残っており、どの遺伝子ファミリーに属するかは明らかだが、機能的でない遺伝子を偽遺伝子(Pseudogene)という。

 魚類では毎年数百の新種記載があり、2018年現在において硬骨魚類の現生種の記載数は3万をこえる。

 栄養リボンという邦訳は、山岸宏『比較生殖学』(東海大学出版会、1995年)による。

 第8章で触れられているデンキウナギなどは、長い身体の大部分が発電器官になっており、肛門の位置が同じように著しく前方に位置する。

 酵素活性は同じであるが、アミノ酸配列の違いによって性質の異なる酵素タンパク質。タンパク質の電気泳動度の差異から、その支配遺伝子座における遺伝子型の差異を検出できる。

 生物相の分布境界線で、この線を挟んで動植物相が大きく変化する。この線の西側が東洋区、東側がオーストラリア区とされる。ウォーレスとウェーバーがそれぞれ異なる境界線を提唱した。スラウェシ島やティモール島は両者の境界線の間に位置する。

 個体や系統を識別する上で目印となるDNA配列のこと。系統間で塩基配列が異なる領域があれば、そこをDNAマーカーとして利用できる。

 ゲノムDNAを制限酵素で切断し、100〜200kbの断片を細菌人工染色体(BAC)ベクターに組み込んでクローン化したもの。大きな領域の物理地図や塩基配列決定に必要とされてきた。

 DNAマーカーや既知のクローンを用いて、配列が一部重なり合うクローンを同定する作業を繰り返し、目的遺伝子近傍のクローンコンティグを作成する方法。

 ミュラー管とは哺乳類の発生過程で将来卵管になる管で、オスではこのホルモンの働きによって退縮する。しかし、真骨魚類にミュラー管はなく、別の機能をもつと考えられる。

 メダカ博士こと山本時男博士は、1953年d-rR系統(オスが緋色、メスが白色の限定遺伝をもとに育成作出された系統、X染色体上に潜性(劣性)のr遺伝子、Y染色体状に顕性(優性)のR遺伝子をもつ、体色により遺伝的な性の判別が可能)の孵化直後から性ホルモンを経口投与して性の人為的転換に成功した。すなわちXrXrでもアンドロゲン投与によりオスとなり、正常メスXrXrと交配して、メスメダカばかりを生んだ。XrYRもエストロゲン投与によりメスに性転換し、正常のオスXrYRと交配した。性ホルモンによる性転換が多くの研究者から示されていたが、山本博士によって初めて遺伝的な性と性ホルモンによる性転換の関連が明らかにされた。コラム⑧も参照。

 コ・オプション(co-option)、遺伝子の使い回し。既存の遺伝子が新たな機能を担うようになること。

 非同義置換よりも大きな影響を与えるのがフレームシフトである。3の単位で塩基は読まれていくが、もし、3の倍数以外の挿入/欠失が起こった場合は、その後の配列が全て読み枠がズレてしまい、その挿入/欠失より後(C末端側)ではまったく異なるタンパク質ができてしまう。