第8章 水生に最適化した脳の多様化︱魚類の脳

はじめに︱条鰭類とは何か

 魚類は四肢動物以外の脊椎動物の総称である。魚類には、脊椎動物の進化の過程で出現した様々なグループが存在する。前章で取り扱った円口類(無顎類)も魚類に含めることが普通であるが、左右対になっている鰭(対鰭:胸鰭と腹鰭)を持つもののみを魚類と呼ぶこともある(円口類には対鰭はない)。円口類には顎がないので無顎類と呼ばれ、対鰭(あるいは対鰭が進化してできた四肢)を持つ脊椎動物は顎を持つという特徴も共有しているので、顎口類と呼ばれる。したがって、魚類とは無顎類と四肢動物以外の顎口類という言い方もできる。前章で取り扱った円口類が最も古くに出現した魚類である(図1)。

図1.脊椎動物の系統樹
分岐分類学的には四肢動物も硬骨魚類に含まれるが、四肢動物は「魚類」とみなさないのが普通である。

 無顎類よりも後で進化してきた顎口類のなかで、最も古い時代に出現したと考えられている魚類は軟骨魚類(ギンザメ、サメ、エイの仲間)である。その後、肺あるいは肺が変化してできたと考えられている浮き袋(鰾)(えらぶた)を持つ硬骨魚類が出現した(図1)。硬骨魚類には、肉鰭類(シーラカンスとハイギョの仲間)と条鰭類のふたつのグループがある。肉鰭類は、鰭の基部に芯となる骨とその周囲の筋肉でできた柄のような構造があるという特徴を持つ。遊泳時に水を掻く主要部となる膜状の部分は柄の先についている。肉鰭類から四肢動物が進化したと考えられている。一方条鰭類では、鰭の基部に柄のような構造はなく、薄い膜状の構造のみである。条鰭類は、様々なグループにさらに分類することができる。出現したと考えられている順に、ポリプテルスの仲間(多鰭類)、チョウザメの仲間(軟質類)、ガー・アミアの仲間(全骨類)、および真骨類である(図2)。真骨類には、メダカ、キンギョ、コイといった身近な魚や普段食卓に上る魚のほとんどが含まれている。真骨類はいろいろなグループにさらに分類される。主要なグループとしては、出現した順にウナギの仲間、アロワナの仲間、イワシ/コイ・ナマズの仲間、サケの仲間、タラの仲間、棘鰭類がある(図3)。棘鰭類は爆発的な発展を遂げたグループで、ハゼ、メダカ、マグロ、アジ、サンマ、タイ、スズキ、ヒラメ、フグなど多数の種が所属する。

魚類の脳の構成要素と外形

 多様性の話に入る前に、理解するための土台として、脳について概説する。魚類の脳は非常に単純な構造をしていて、我々ヒトを含む哺乳類の脳とは比較にならないほど不完全なものと思っている人がいるかもしれない。しかし、 「脳の部品・区画」は哺乳類や他の四肢動物と共通で、全てが揃っている。発生初期の脳は管状の単純な構造(神経管と呼ぶ)であるが、発達が進むにしたがって区画が形成され、それらが膨らみを形成し、次第に複雑な形態になる。具体的な「脳の部品・区画」とは、前の方から、大脳(終脳)、間脳、中脳、、小脳、延髄である。延髄の後方に、脳と並んで中枢神経系の構成要素である脊髄が続く図4:コイ)。全ての顎口類にこれらの脳区画が存在している(円口類は少し違う。7章参照 )。また管状構造の時代の真ん中の腔所は成体でも残っており、液体(脳脊髄液)のつまった脳室と呼ばれる場所となっている点も共通した性質である。

図4.コイの脳を左上から見た図

小脳に属する構造は斜体に、延髄に属する構造には下線が引いてある。延髄の腹側面から出る外転神経は図示していない。

 脳の外形は、図5に示すように魚類のグループによって違いがある。例えば真骨類以外では、橋と延髄の脳室(第四脳室)が左右に大きく開いており、第四脳室の外壁が堤防状に背側に膨隆している(図5A〜F)。この膨隆部には聴覚、平衡感覚、側線感覚(水流や振動といった機械刺激の感覚、種によっては電気感覚を受容する側線器もある)が送られてきている。この場所はシーラカンスではとりわけよく発達している(図5B)。より後方の延髄の形態にもグループによって違いが見られる。真骨魚においては、化学感覚のひとつである味覚が到達する場所が発達して膨隆する種がある(例えば図4のコイ:後述)。真骨類以外の条鰭類でも味覚を受ける延髄領域は存在するが、このような膨隆が形成される種はない。小脳は、ポリプテルスでははっきりと左右に分かれているが図5D、その他のグループでは左右の小脳が正中で癒合して無対性になっている。ハイギョとポリプテルスでは終脳本体(大脳半球)が前後に非常に長く伸びている(図5C・D)。ハイギョとポリプテルスの脳の外形は、小脳、延髄、終脳の形態など全体的に両生類と非常によく似ているのは進化的な視点から興味深い。また、嗅球と大脳半球の位置関係にも違いがある。ハイギョ、ポリプテルス、チョウザメ、アミア、真骨類のドワーフグーラミーでは大脳半球のすぐ前に嗅球があるが図5C〜G、軟骨魚類のメガマウスとシーラカンスでは大脳よりも吻側に位置し両者の間を長い嗅索が繋いでいる(図5A・B)。このように条鰭類の脳の外形は、分類群によってかなりの違いを示す。一方、分類群内でも脳の形態に種差が見られ、例えば嗅球と大脳の位置関係についてみれば、同じ真骨類でもドワーフグーラミーのように前者のパターンを示す種もあれば、後者のパターンの種もある(例えば図6Fのナマズ)。真骨類における種差は非常に大きく、驚異的な多様性を示す。そこで、以下では真骨類について論じる。

図5.様々な魚類(円口類以外)の脳背側面

Gのドワーフグーラミーは比較的視蓋が大きいという点を除くと、これといって特徴のない“普通の”真骨類の脳の例として示す。真骨類の場合、間脳は終脳と視蓋によって覆われて上からはほとんど見えない場合が多い。メガマウスとシーラカンスの図では、嗅索が長いため途中を一部省略してある。[山本直之「神経系」谷内透他編『魚の科学事典』(朝倉書店、2005年)に基づき、アミアとドワーググーラミーの図を加えて改変]

図6.カワハギ,ウツボ,クロウシノシタ,シマウシノシタ,シログチ,ナマズの脳背側面。特殊化/巨大化している脳部位は灰色にしてある。ナマズの嗅索は長いため、途中が一部省略してある。 [山本直之「神経系」谷内透他編『魚の科学事典』(朝倉書店、2005年)、板沢靖男他編『魚類生理学』(恒星社厚生閣、1991年)より改変]

なぜ真骨類の脳は多様なのか?

 魚類を含む動物は、外界(および体内)の環境情報を処理・統合することによってとるべき行動を決定している。具体的には、餌を採ったり、外敵から逃げたり、隠れたりなど、そのときどきの状況に応じた適切な行動をとる。また、適切な時期に、適切な場所で、同種の異性と産卵を行なう際にも、環境情報に基づいて行動する必要がある。

 25000種以上の種からなる真骨類は、脊椎動物中で最大の分類群である。軟骨魚類は900種程度、シーラカンスは2種、ハイギョは6種、チョウザメ類は30種程度、アミアは1種のみ、ガーは7種であるのと比べると圧倒的に種類が多い(円口類も種類は少ない。第7章参照)。真骨類は、赤道直下から極地付近、深海から沿岸部にいたる様々な環境の海水域から湖や川の汽水域、さらには淡水域まで分布している。たとえ同じ海域であっても、表層を遊泳するものや中層あるいは海底付近を遊泳して生活している種もあれば、海底でじっとしていて獲物を待ち伏せする種もある。底質も岩、砂、泥など様々な場所があることも言うまでもない。似たような底質であっても、そこに生えている藻類が違えば、やはり環境に違いがでる。すなわち、真骨魚が生息している環境は種によって千差万別である。例えば光環境については、深海では光が全く届かなかったり、届いたとしてもごくわずかで非常に暗い場合もある。また、真っ暗な洞窟に生息する種もある。このような生息環境では、行動決定するにあたって、視覚に依存することはできないか、利用できたとしても得られる情報は極めて限定的なものとなってしまう。また、浅い海に生活している種であっても、夜行性の種はやはり暗い環境で行動する必要があり、月齢によっては真っ暗の場合もありうることになる。

 以上、光環境について言及したが、水流にも環境による違いがある。川の上流部では水の流れが極端に早いし、大きな湖や池では水流はほとんどない場合もある。さらに川の下流域では、干潮時はほぼ淡水になる一方で満潮時には海水が流れ込んでくるという時間帯による水質の変化も起こる。切りがないのでこの程度に留めるが、各種感覚に関してそれぞれ環境から得られる情報の量や質が異なることは理解していただけたと思う。すなわち、生息環境や習性によって、魚が対峙する環境は驚くほど多様であり、従って様々な感覚情報の情報量や重要度も種によって非常に異なることとなる。

 興味深いことに、真骨類の脳の形態は生息環境や生態を反映して極めて多様であり、外部形態のレベルで極端な違いが見られる例が多数存在する。具体的には、ある種にとって重要と思われる感覚を処理する脳の場所が発達する(大きくなる。膨らみを形成する)という傾向が顕著である。以下では、わかりやすい外部形態を中心に、真骨類の脳の多様性について、具体的な例を紹介・解説していく。組織レベルでも興味深い多様性の事例があるので、それもいくつか紹介する。

視蓋

 視蓋は中脳の背側部を占める構造で、眼の網膜からの視覚情報を受ける中枢部位(一次視覚中枢)の中で通常一番大きな場所である。カワハギの視蓋は著しく大きく発達している(図6A)。カワハギは昼行性で、比較的浅い砂底の海に集団で生息している場合が多い。甲殻類、ゴカイ、クラゲ、二枚貝などを捕食する。海底で、口から水を吐き出して砂を吹き飛ばし、隠れている餌生物を発見して捕食する行動も示す。砂を吹き飛ばした後の餌生物の発見には、視覚が重要と思われる。カワハギは同種他個体とコミュニケーションを取るが、これも視覚に依存している。コミュニケーションに利用するのは、背鰭と体色パターンである。真骨魚の鰭は、のような作りになっていて、団扇の形を決定する放射状の芯のような構造(と呼ぶ)と、鰭条と鰭条の間に張っている薄い膜状の構造からなる。

 カワハギの背鰭は少し特殊で、最も吻側の鰭条が1本だけ独立して頭の上に生えて、「ツノ」のようになっている。カワハギを2匹同じ水槽に入れると、どちらが強いのかはっきりとさせるため、争いが発生する。勝負が付くと、勝ち組のカワハギはこの「ツノ」を立てる。負け組のカワハギは「ツノ」を後方に折り畳む。つまり、犬がお腹を見せるのと同じような降伏のサインを出すのである。また、勝ち負けにともなって体色にも変化が見られ、弱い方は黒っぽくなる。「ツノ」の状態や体色は、嗅覚、側線感覚、聴覚、味覚などで判別できるはずはなく、明らかに視覚情報によって認識している。釣りが好きな方は、カワハギが餌取り名人であることをご存知ではないかと思うが、カワハギは狙っている餌を正面から見ることも多い。すなわち、この時に両眼視による視覚的な観察を行なっている。鋭い歯を使って、巧みに針を避けつつ餌を齧り取る。釣り人が気がつかないうちに、餌は取られて針だけになってしまうという悲劇がしばしば発生するのはこのためである。

 このようにカワハギの生活は、視覚情報に決定的に依存している。そのため、視覚中枢である視蓋が非常に大きくなると考えられる。次のセクションで紹介する夜行性のウツボの視蓋(図6B)と比較すると、脳全体に占める視蓋の割合がカワハギでは大変大きいことがわかっていただけると思う。なお、背中側からみた図6Aではわからないが、カワハギの視蓋は非常に厚く、体積も大変大きい。

嗅球

 嗅球は脳の一番先端(吻側)にあって、匂いを受容する嗅細胞の軸索が終わる嗅覚の一次中枢である。嗅球から発する軸索は、嗅索と呼ばれる軸索の束を通って、主に大脳半球の嗅覚の二次中枢に向かう。上に述べた視覚の場合と同様に、嗅覚の重要度を反映して、脳全体の大きさに対する嗅球の相対的な大きさに多様性がみられる。ウツボは岩礁に住み、昼間は岩にできた穴などに入っているが、夜になるとでてきて頭足類(とりわけタコ)、甲殻類、および魚などを捕食する。暗いため、視覚に依存して餌を探すのは困難である。ウツボの鼻には、板状構造が多数並んでいて、そのため匂いを感じる場所である嗅上皮の総面積は大変大きくなっている。したがって、主に嗅覚に依存していると考えられる。ウツボの嗅球は大変大きく(図6B)、カワハギの嗅球と比較するとその差は歴然としている。

 興味深いことに、ウツボの嗅球はただ大きいだけでなくて、組織構築も特異なものとなっている。嗅球の組織構築は通常、複数の層が同心円状に配列している。一番表層は嗅神経層、次が糸球体層(糸球体と呼ばれる円形の構造がある)、さらに深層が僧帽細胞層、そして最後が顆粒細胞層である(図7A)。同心円状の組織構築は、魚だけでなく四肢動物にも共通した特徴である。ところがウツボの場合は、顆粒細胞が層を形成しておらず、細胞塊として散在的に分布している。また糸球体も層状に配列しないで、やはりバラバラに分布している(図7B)。なぜウツボにおいて嗅球の組織構築がこのように特殊なのかは謎であるが、大量の嗅覚情報を処理する上で、層状構造よりも散在的な構築が有利となる場合があるのかもしれない。今後の研究が待たれるところである。

図7.キンギョとウツボの嗅球の横断切片をNissl染色したもの(Nissl染色は細胞体が染まるので、神経組織の構築が観察できる)。キンギョの嗅球は層状構造を形成している。表面から嗅神経層、糸球体層(GL)、僧帽細胞層(MCL)があり、中央に顆粒細胞層(GCL)がある。この断面だと、嗅神経層は確認しにくい。一方、ウツボの嗅球は層状になっておらず、顆粒細胞の集団(矢頭)と糸球体(星印)が散在的に散らばっている。[Yamamoto N. (2017)より引用]

 ヒラメ、カレイ、シタビラメが含まれる異体類では、嗅球の大きさに左右差が見られる。例えばクロウシノシタでは、左の嗅球の方が右よりも大きい(図6C)。クロウシノシタは、体の右側を海底につけて横たわっている(ヒラメと同じ)。体の左側は海水に接している側である。右の眼球は、変態時に左側(有眼側)に移動するが、右の鼻は右側(無眼側)のままなので、海底側についている。海底に接していて、匂い物質にあまり接することのない右側よりも、海水側で様々な匂いを感じる左側の嗅球が発達すると考えられる。この逆パターンもある。シマウシノシタは体の左側を海底につけて横たわっている(カレイと同じ)。この場合は、海底側の左の嗅球よりも右側の嗅球の方が大きくなっている(図6D)。

側線感覚、聴覚、平衡感覚の中枢とそれらに付随する小脳稜

 延髄吻側部の背側領域には、側線神経と内耳(第8脳)神経を介して、側線感覚、聴覚、および平衡感覚を受ける神経核群があり、これらの神経核群の上(背側)には小脳稜と呼ばれる構造が乗っかっている。これらの感覚核には樹状突起を小脳稜の中に伸ばして、そこで情報を受けるニューロンも含まれている。側線は水流や比較的ゆっくりとした水の振動を感じる感覚器であり、水生動物に広く見られる。側線がわからない人は、尾頭付きの捌かれてない魚を魚屋で観察してみるとよい。体の横に飛び飛びに点(実際には小さな穴)が前後に並んでいるのが観察できるであろう(スーパーだと、お客サービスで鱗が落とされていることが多く、その場合は確認しづらい)。この穴は奥に埋まっている前後に走行する管(側線管と呼ぶ)に繋がっている。水流があると側線管内にも水流ができるのでそれを検出している。魚に聴覚があるとは思っていなかった人もいるかもしれない。我々のように外から見える耳(耳介:外耳の一部)や中耳はないが、頭の中に内耳はあり、そこに音を感じることができる耳石器官がある。なお、内耳には直線的な加速度(遊泳スピードの変化や重力)や回転を感じる平衡感覚器もある。

 シログチは、砂底の比較的浅い海にすみ、特に夏場は岸近くまで寄ってくる。海底にいる甲殻類やゴカイ類、小型の魚類を捕食する。夜行性であるが、水が濁っているときには昼でも行動して海底に生息する餌生物を探索・捕食する。したがって、活動が活発なときは視覚にはあまり依存できない環境であることになる。一方、浅い海で活動する場合が多いが、岸近くでは波の影響を大きく受ける(海水浴のときにある程度沖にでると、波にのって上下する程度であるが、波打ち際に近くなってくると強い波に揉まれて倒れそうになった体験があると思う)。そのため、波に揉まれながらも発達した平衡感覚と側線感覚によって、姿勢を保って餌を探していると推測される。また、シログチは浮き袋を使って「グーグー」と鳴く。したがって、音を使ったコミュニケーションを行なっている可能性があり、それにともなって聴覚が発達している可能性もある。なお、シログチという標準和名はこの鳴き声に由来すると考えられている。またシログチの内耳の耳石は巨大であるが、これは平衡感覚あるいは聴覚、またはその両方の発達と関連していると思われる。シログチははイシモチという別称を持つが、これはシログチが巨大な耳石を持つことに由来する。シログチの脳の特徴は、小脳稜が膨隆していることである図6E。これは、小脳稜の下にある、側線感覚、聴覚、平衡感覚の中枢が発達して大きくなっていることを反映している。

 ウシノシタの仲間(シタビラメ類)は嗅球の大きさの左右差について言及したが、その小脳稜の発達の程度にも左右差がある。体の右側を海底につけて横たわっているクロウシノシタは右側の小脳稜の方が左側よりも大きく(図6C)、体の左側を海底につけているシマウシノシタでは左側の小脳稜の方が右側よりも大きい(図6D)。異体類で体の反対側に移動する感覚器は片方の眼球のみであり、側線や内耳は移動しない。海底付近や海底の砂の中を移動する餌生物から発生する振動は、海底側の方がより速く・効率的に伝わるために、側線感覚や内耳で捉えられる振動の感覚が送られる延髄の一次中枢が海底側で大きくなり、表面を覆う小脳稜も大きくなると考えられる。

 ここまでみてきた脳の形態の多様性は、同じ構造が特定の種では大きく発達していて別の種では小さいという例や、左右で大きさに差があるといった事例であった。しかしながら、まれにではあるが、特定の真骨魚の種には存在しているが、別の種にはないという構造もある。そのような例としてはナマズがあげられる。地下の大ナマズが暴れるから地震が起こるという俗信は江戸時代の初め頃には定着していたし、ナマズが地震の前に騒ぐのをみたといった話も江戸時代の見聞記に出てくる。大正時代以降は、真面目な科学的研究もあり、ナマズは地震の前に地中で起こる電気的な変化を感じることによって、行動が活発化すると考えられるようになった。ナマズは、他の普通の魚がもっている水流などの機械的な刺激を感じる側線器だけでなく、電気を感じる電気感覚性の特殊化した側線器ももっている。普段は、周囲の魚やエビなどの呼吸運動や遊泳にともなって筋肉から発せられる電気を感じて、餌生物の探索と捕獲に利用している。この電気感覚によって、地震前の地殻変動にともなった電気的変動をとらえられた時に暴れると思われる。電気感覚を処理する中枢がないと、せっかく受容した感覚も意味をなさないことは言うまでもない。ナマズの延髄には、通常の機械的側線感覚を処理する場所の横(外側)に、電気感覚性側線葉という膨隆が存在する(図6F)。電気感覚のない種には存在しない構造である。

延髄の一次味覚中枢

 味を感じる感覚器はと呼ばれ、味を感じる味細胞やそれ以外の細胞が複数集まって、花の蕾のような形の装置を形成したものである。我々ヒトの場合、味蕾は舌、口腔の壁、咽頭、喉頭上部に分布している。ところが真骨魚の場合、口腔や咽頭以外に体の表面(体表)にも味蕾を持つ種がいる(コイ、ナマズなど)。つまりこれらの種では、口の中に入れずとも、体に触れたものの味がわかるのである。我々ヒトで例えると、頬っぺたに押し当てれば、「このケーキのクリームは先月食べた別の店のものよりも上だな」とわかる、といった感じである。真骨魚には味覚が高度に発達した種が存在し、味覚に関わる脳部位に驚異的な発達と多様性が見られる。味蕾でとらえた味の情報は、第Ⅶ脳神経である顔面神経(体表と口腔前方部の味蕾)、第Ⅸ脳神経である舌咽神経(口腔後部から咽頭初部)、第脳神経である迷走神経(咽頭)を介して、延髄尾側部にある一次味覚中枢に送られる(脳神経については、図4参照。第12章のコラムも参照)。ニジマスなどでは、これら3つの脳神経が終わる部位は外見的に目立たず(図8A)、3本の脳神経の終末部位を区別することもできない。このような場合、3つの脳神経の終末領域は吻尾に連続的に繋がっていて、全体をまとめて孤束核と呼ぶことが多い。これは同じような状態である哺乳類の味覚(と内臓感覚)の一次中枢である孤束核に由来する名称である。ニジマスは、餌生物(小魚など)を発見する時に主に視覚に依存しており、味覚はあまり重要でないため、一次味覚中枢が発達していないと思われる。実際、ニジマスは美味しそうな味物質を放出するわけでもないルアーでもよく釣れる。

図8.ニジマス、キンギョ、コイ、セブラフィッシュ、ヒメジの脳背側面。特殊化/巨大化している脳部位は灰色あるいは斜線にしてある。キンギョとコイの嗅索は長いため、途中が一部省略してある。[Yamamoto N. (2017)より改変]

 味覚が発達している魚種では、一次味覚中枢の外部形態はニジマスとは全く異なっている。例えばキンギョでは、一次味覚領域の尾側部に左右にひとつずつ巨大な膨らみが形成されている(図8B)。この膨隆は迷走神経によって運ばれる味覚を受けているため、迷走葉と呼ばれる。キンギョが水槽の底の砂利を口に入れ、一瞬ののちに吐き出すのをみたことがある人もいると思う。これは、底に沈んでいる餌を食べているのである。キンギョの咽頭の天井には筋肉質の口蓋器官という器官がある。この口蓋器官の表面と、その下で口蓋器官と向かいあっている鰓には味蕾が大量に存在している。砂利に混じっている餌が味蕾に接すると、その餌がある場所の口蓋器官の筋肉がはたらいて突出し、鰓との間に餌をはさんで動かないように押さえつける。その状態で、食べられない砂利を水と一緒に吐き出したあと、口の中に残っている餌をおもむろに咽頭後部を経て食道へと送る。このような、餌があるところに対応した場所だけを局所的に突出させる芸当を行なうためには、相当高度な情報処理が必要である。自分自身のこととして考えれば、このことが理解できるだろう。3ミリくらいの小さな飴玉10個と同じくらいの大きさのビーズ50個をぐちゃぐちゃに混ぜて口に放り込んだのち、飴だけ口の中に残しつつ、ビーズは全て吐き出すなどということをあなたはできるだろうか? おそらくできないし、仮にできたとしても長時間の苦闘ののちに初めて達成できるであろう。残念ながら(?)、我々は口蓋器官を持っておらず、一次味覚中枢も迷走葉のように発達していないのだ。キンギョはこのような神業を素早く行なうことができる。それには多数の感覚性および運動性ニューロンが必要である。ニューロンがたくさんあるために、膨隆した迷走葉が形成される。

 コイはキンギョと同じコイ科の真骨魚なので、脳もそっくりかというと、延髄の様子はだいぶ違っている(他の脳領域はかなり似ている)。コイも口蓋器官を持っているので大きな迷走葉があるのは共通しているが、左右の迷走葉の間に別の大きな膨らみが存在している(図8C)。これは顔面葉である。顔面葉は、口腔前方部と体表の味蕾からの味覚を運ぶ顔面神経が終わる場所である。キンギョにもそれなりに大きな顔面葉があるが、コイと比較すると小さく、半ば迷走葉に覆われたような状態になっている。

 コイとキンギョの違いは何に起因するのか? それは、コイにはヒゲ(学術的には「触髭[しょくしゅ]」と呼ばれる)があるためである。ヒゲの表面には多数の味蕾が分布していて、餌の探索に役立っている。そのため、主に頭部の通常の表皮の味蕾からの情報だけを受けているキンギョの顔面葉より、頭部に加えてヒゲの大量の味蕾からの味覚も受けているコイの顔面葉の方が大きくなる。なお、コイやキンギョには、舌咽神経由来の味覚を受け取る舌咽葉もあるが、小さな膨らみで外から見てもわからない(組織切片で観察すれば同定できる:図9A。コイ科では、他にもカマツカやドジョウがやはりヒゲを持っていて、巨大な顔面葉と迷走葉を持っている。とすると、コイ科の魚はみんなかなり大きい顔面葉と迷走葉という膨隆をもっていて、それは行動や生態を反映しているというよりは、コイ科魚類の共通祖先から受け継がれた共通の形質であるという考え方もでてくる。しかし、やはりというべきか、そんなに単純ではない。モデル動物として有名なゼブラフィッシュはコイ科の魚である。ゼブラフィッシュにも迷走葉と顔面葉と呼ばれているところがあるにはあるが、膨隆というほどの代物ではない図8D。ゼブラフィッシュは、水底に沈んだものではなく、水中をただようプランクトンなどを捕食している。つまり、顔面葉と迷走葉の発達度合いは、捕食行動の違いや味覚への依存度の違いをストレートに反映していると考えるべきである。

図9.A:キンギョの一次味覚中枢の横断切片(Nissl染色)。B:キンギョ縦走堤の高さの横断切片(Nissl染色)。C:イットウダイの縦走堤を通る高さの横断切片(Bodian染色:細胞体と軸索が染まる)。D:イットウダイ縦走堤の組織構築。Cの切片を高倍率で撮影したもの。E:メダカの縦走堤を通る高さの横断切片(Nissl染色)。挿入写真はより高倍率で縦走堤の組織構築を示している。F:マハゼの縦走堤を通る高さの横断切片(Nissl染色)。挿入写真はより高倍率で縦走堤の組織構築を示している。スケールバーは500µm(A〜C, F)、100µm(D, E, Fの挿入写真)、50µm(Eの挿入写真)。「LVII:顔面葉,LIX:舌咽葉,L:縦走堤外側葉の細胞層,l:縦走堤外側葉の線維層,LX:迷走葉,M:縦走堤内側葉の細胞層,m:縦走堤内側葉の線維層,OT:視蓋,otr:視索,pc:後交連,Pit:下垂体,SM:視蓋の辺縁層,TL:縦走堤,VCl:小脳弁外側葉。][Yamamoto N. (2017)より引用]

 一次味覚中枢の形態の多様性の例はまだ他にもある。ヒメジの下顎の下にはヒゲが一対生えている(図10)。ヒメジのヒゲにもコイのヒゲと同じように、その表面に味蕾がたくさんある。そのため、やはり顔面葉が巨大となっている。しかし、ヒメジの顔面葉の場合はただ大きいというだけでなく、極めて特殊な形態をしていて、我々ヒトの大脳皮質のように表面がシワシワになっている(図8E)。なぜコイにはシワがなく、ヒメジにはあるのか? これは、ヒゲの使い方の違いを反映していると筆者は考えている。コイやドジョウのヒゲは動かない。水流や魚自身の遊泳によって、受動的にちょっとゆらゆらする程度である。しかし、ヒメジのヒゲの付け根には筋肉があり、自分自身の意志でヒゲを動かすことができる。実際は「動かすことができる」というようなレベルではなくて、高速でいろいろな方向に激しく動かしつつ餌を探すのである。ヒゲで砂を巻き上げながら餌を探索する行動も見られる。

図10.ヒメジ。コイやドジョウと違い、ヒゲを激しく動かして餌を探すことができる。

 また、ヒメジのヒゲはかなりの長さがある。基本的には動かないヒゲの場合は、あるヒゲに餌となるものが触れたとき、魚自身の体や口と餌の間の位置関係はほぼ一定である。それに対して、ヒメジの場合は、ヒゲが前の方を向いているときと、下を向いているときでは、ヒゲ先に触れる餌と魚の位置関係は全く異なっている。つまり、ヒゲがどの方向を向いているときに餌が触れたのかを考慮に入れないと、うまく餌を取れないことになる。したがって、ヒメジの顔面葉は、ヒゲに由来する味覚とヒゲがどの方向を向いているかというヒゲの位置情報の両方を受け取っていて、それらの情報を統合して、餌の位置を計算していると考えられる。

 コイやキンギョの顔面葉は、ニューロンが散在的にほぼ無秩序に分布しているのに対して、ヒメジの顔面葉はきれいな層状構造になっている。我々ヒトの大脳皮質も層状構造である。このような場合、層ごとに異なる情報が送られてきていて、縦方向に伸びた樹状突起が異なる層において別々の情報を受け取れるようになっている。そのため、個々のニューロンが複数の情報を一本の樹状突起で受け取って、それらを統合することができるのである。このような層状構造(シート状構造)が情報処理力をアップするためには、体積を大きくするのではなくて、シートの面積を大きくする必要がある。我々の大脳皮質の場合、シワを伸ばすとその面積はページを開いた状態の新聞くらいある。シワを作らないで風呂敷のような感じで包んだら、内部の空間の体積は巨大すぎてしまう。シワシワにしないと、今の頭の大きさでは脳を収容できず、我々の頭は想像上の火星人のような巨大なものとなるであろう。面積がどんどん大きくなると、収納するためにシワシワを作って折り畳まざるを得ない。ヒメジも火星人への道は避けて、シワシワの顔面葉を選んだと言える。

脊髄

 脊髄は脳ではないが、脳と同じく中枢神経系であり、やはりその形態に多様性がみられるため紹介する。

 ホウボウは、特殊化した胸鰭を使って砂地の海底を「歩く」ことができる(図11)。ホウボウの胸鰭の前方3本の鰭条は、間に膜状構造がないため、それぞれを独立的に動かすことができる(遊離鰭条と呼ぶ)。これらの遊離鰭条を使って歩くのである。残りの胸鰭の後方部分は通常の胸鰭の構造をしていて、遊泳にも使うし、派手な模様になっているためパッと広げて威嚇にも使う。遊離鰭条を使って海底を歩く、という時点で胸鰭の使い方としては十分に異例であるが、それだけではない。

図11.ホウボウ。胸鰭の前方3本の鰭条を使って「歩く」ことができる上に、同時に餌の探索も行なう。

 遊離鰭条の表面には化学物質を感じる単独化学受容細胞と呼ばれる細胞が大量に存在している。単独化学受容細胞は、味蕾の味細胞によく似た細胞であるが、複数が集まっている味蕾の場合と異なり、単独でバラバラに存在している。ホウボウが海底を歩く際、遊離鰭条に餌となるものが触れれば単独化学受容細胞がそれを感じる。つまり単に歩き回っているのではなく、同時に餌の探索も行なっていることになる。このようにして、砂の中や海底上のエビやカニなどを発見して捕食することができる。遊離鰭条の単独化学受容細胞の感覚情報は脊髄に送られている。ホウボウの脊髄には3対の大きな膨隆があり図12A、大脊髄副葉と呼ばれる(遊離鰭条以外の通常の形態の胸鰭の感覚が送られる場所も少し膨隆していて、こちらは小脊髄副葉と呼ばれる)。なぜ大脊髄副葉が3対あるのかというと、遊離鰭条が3対あり、ひとつの遊離鰭条に対応してひとつの膨らみが形成されるからである。

図12.ホウボウ、ハリセンボン、ヨリトフグ、エレファントノーズフィッシュの脳背面図。特殊化/巨大化している脳部位は灰色にしてある。ハリセンボンの嗅球は終脳の腹側に隠れていてみえない。[Yamamoto N. (2017)より引用]

 真骨魚の脊髄は通常とても長くて、脊柱管の尾側端まで続いていることが多い。ところが、ハリセンボンの脊髄はとても短い。驚くべきことに、脳全体の長さよりも短いのである(図12B)。ハリセンボンを含むフグやカワハギなどが属するフグ目には、他にも脊髄が短い種がいる(例えばマンボウ)。その一方で、ヨリトフグなどのように比較的長い脊髄をもつ種もいる(図12C)。ハリセンボンやマンボウの脊髄がなぜそんなに短いのか、またそんなに短いのに支障は生じないのか(逆にいえば、短くても問題ないのに他の魚種ではなぜ長いのか)、といった疑問がわくが、いまのところこの問題は謎のままである。

運動中枢

 ここまで、真骨魚の脳と脊髄の多様性について眺めてきた。脳の特定の部位が発達して巨大になったり、膨隆を形成したり、表面にシワができたり、組織構築が特殊化したりするなどの現象は、すべて感覚中枢で観察されるものであった。それも特に感覚の一次中枢に見られる現象である。では、運動ニューロンが分布している場所が発達して膨隆を形成するということはないのだろうか? 実は筆者は、ダンゴウオの運動系について調べてみたことがある。ダンゴウオは、指先サイズの丸っこい体型をしていて、主に北日本の沿岸に普通に見られる種である。見た目が可愛いのでペットとして飼う人もいる。近い仲間にはホテイウオがいるが、こちらは北海道ではゴッコと呼ばれ、食用にされているので知っている人がいるかもしれない(なかなかの美味。偽物キャビアもこの仲間の卵である)。ダンゴウオ(ホテイウオも)の腹鰭は特殊化して吸盤となっており、これを使って海藻や岩にくっついている。筆者は、この吸盤運動を行なうために脊髄の運動ニューロン群が特殊化して、ひょっとしたら膨隆が形成されているのではないかという可能性を考え、ダンゴウオの脳と脊髄を観察したことがある。膨隆があったら「吸盤葉」と名付けようと妄想していたが、結果は何も見つからなかった。膨隆はない、ごく普通の脊髄であった。トビウオは巨大な胸鰭を使って、かなりの長距離を滑空することができることは皆さんご存知であろう。トビウオの胸鰭運動ニューロンが位置している脊髄の高さも特にこれといって特殊化はない。「胸鰭葉」もないのである。結論を言うと、運動ニューロンが存在する場所が膨らむといった、外見からわかる特殊化は筆者が知る限りにおいては存在しない。

 感覚中枢(特に一次中枢)は膨隆を形成するのに、なぜ運動中枢ではそのようなことがないのか? ある感覚が発達している場合、感度が高く精細な感覚情報を得るために多数の感覚細胞が投入されている。実感してもらうために、架空ではあるが数字を挙げて少し考えてみる。例えば感覚の発達程度が平均的な種Aでは感覚細胞は1000個で、感覚が非常に発達している種Bでは2万個とする。これらの感覚細胞で得られた情報は、脳あるいは脊髄の一次感覚中枢に送られることになる。もし一次感覚中枢にあるニューロンの個数が種Aと種Bで同じだったら(例えば500個)、どうなるか? 個々の感覚細胞由来の情報が1個の中枢感覚ニューロンに伝わると仮定すると、種Aの個々の感覚ニューロンは2個の感覚細胞由来の情報を受けて集約することになる。一方、種Bでは個々の感覚ニューロンは40個の感覚細胞由来の情報を受けて集約する。しかし、さらに上位の二次感覚中枢に送る情報はどうなるかというと、いずれの種でも500個の中枢感覚ニューロンで表現できる情報量しかないことになる。つまり、種Bは20倍もの感覚細胞を投入したのにもかかわらず、情報量という観点で見ると、一次感覚中枢に到達した段階でその意義は失われてしまう。つまり、感覚器を発達させてより多くの感覚細胞を配置したからには、中枢にもそれに見合った多くのニューロンを配置しないと意味がないのである。だから、ある感覚が非常に発達している種では、大量の感覚ニューロンが必要になり、感覚中枢が大きくなってその場所が膨れる、という現象が起こってくる。

 それでは、運動ニューロンの場合はどうか? 運動ニューロンは、より上位の運動関連ニューロン(運動前ニューロンと呼ぶ)や近傍の運動パターンを形成する回路を形成しているニューロンなどから入力を受けている。このような運動ニューロンへの入力は、感覚器から一次感覚中枢に送られてくる情報とは性質が異なっている。感覚器から来る情報は、言わば「生データ」であり、これからそれを解析・処理・統合していくべき情報である。そのような作業は、多くのニューロンを投入しないとできない。一方、運動ニューロンに送られて来る情報は、運動前ニューロンやさらにその手前の回路ですでにかなりの処理が行なわれたものである。運動ニューロンの軸索は筋肉に入ると枝分かれて、多くの筋線維を同時に支配している。すなわち、そもそも筋収縮を制御するためにそれほど多くの運動ニューロンは必要でない。このような、取り扱う情報の性質の違いが、感覚中枢は発達して巨大化することがあるのに対して、運動ニューロンのある場所が膨れたりすることがない理由と思われる。

真骨魚類特有の脳部位とその多様性

 この章の初めの方で述べたように、魚類は四肢動物と共通した主要な脳部位をもつ。一方で、真骨類あるいは条鰭類特有で他の脊椎動物の分類群には見られない脳領域も幾つか存在する。

 条鰭類特有の構造とは、中脳にある縦走堤および小脳の一部である小脳弁と呼ばれる構造である。なぜこのような条鰭類特有な構造があるのか? どのような機能を持っているのか? 研究は少ないが、現在までにわかっていることを述べて考察する。さらに、これら条鰭類特有の構造にも多様性が見られるので、それについても以下に解説する。

縦走堤

 最大の一次視覚中枢である中脳の視蓋の下に、細長い柱状の構造が前後に走行している。縦方向に走行しているので、この構造は縦走堤と呼ばれている。縦走堤は、ポリプテルスの仲間を除く条鰭類に共通して見られる(ただしチョウザメ類の縦走堤は非常に小さい)。しかし、条鰭類以外の脊髄動物には存在しない特異な構造である。縦走堤を構成する細胞は、小脳の顆粒細胞によく似た小型細胞である(縦走堤の細胞を顆粒細胞と呼ぶことも多い)。小脳では、顆粒細胞の軸索は最表層である分子層の中を互いに平行に走行し、プルキンエ細胞と呼ばれる大型細胞が分子層の中に伸ばしている樹状突起とシナプスを形成している図13A。顆粒細胞の軸索は平行線維と呼ばれている。縦走堤の細胞の軸索は、視蓋の最表層である辺縁層の中を内側から外側へと互いに平行に走行していて、やはり平行線維と呼ばれている。視蓋の辺縁層は、縦走堤の無い脊椎動物には存在しない。したがって、辺縁層もポリプテルス以外の条鰭類に特有の構造ということができる。辺縁層には、もっと深い層に細胞体をもつ錐体細胞と呼ばれるニューロンから樹状突起が伸びてきていて、平行線維とシナプスを形成している(図13B)。これは小脳の平行線維とプルキンエ細胞の間の連絡とよく似た状況である。また、小脳のプルキンエ細胞と視蓋の錐体細胞の樹状突起には多数の小さなこぶのような突起(樹状突起棘と呼ばれる)が生えている、という共通点もある。しかし、分子層に伸びる樹状突起のみをもつ小脳のプルキンエ細胞とは異なり、視蓋の錐体細胞は辺縁層に向かう樹状突起に加えて、深層に向かう樹状突起を持っているという違いもある。縦走堤は、光が上から水中に入ってくることを使って姿勢制御をする反射(背光反射)を調整するという説もあるが、残念ながらはっきりとした機能は不明なままである。

図13.真骨魚の小脳体(A)と縦走堤‒視蓋(B)の神経回路を示した模式図

A:小脳の顆粒細胞の軸索は分子層に到達すると、平行にならんで進んでいき(そのため平行線維と呼ばれる)、プルキンエ細胞の樹状突起とシナプス形成する。プルキンエ細胞の樹状突起は、平行線維に対して垂直な方向に樹状突起を広げているので、この図では重なってしまってわからないが、実際には紙面に対して垂直な方向に大きく広がって分布している。プルキンエ細胞は、延髄の下オリーブ核から登上線維と呼ばれる軸索も受けている。哺乳類の場合、登上線維はプルキンエ細胞の樹上突起に纏わりつくようにして表層方向へ向かいながらシナプス形成する。真骨類の場合は、樹状突起の基部近くにぐるっと巻きついて、そこで終わる。プルキンエ細胞の軸索は、広樹状突起細胞と呼ばれる真骨類特有の細胞に軸索を送っている。広樹状突起細胞の軸索は小脳の外に出て行く。

B:縦走堤の顆粒細胞の軸索は、視蓋の最も表面に位置する辺縁層に入り、視蓋の内側から外側へとならんで進んでいく。その途中で、錐体細胞と呼ばれる、プルキンエ細胞と似た細胞の樹状突起とシナプス形成する。錐体細胞はプルキンエ細胞と異なる特徴も持っていて、表層方向に向かう樹状突起だけでなく、深部に向かう樹状突起も持つ。錐体細胞の軸索は視蓋内に終わる。[Yamamoto N. (2017)より改変]

 縦走堤の大きさは種によって相当な違いが見られる。イットウダイはキンメダイ目に属する目の大きな種であるが、巨大な縦走堤を持っている(図9C)。一方、メダカの縦走堤はとても小さい(図9E)。キンギョの縦走堤は、イットウダイほどではないものの、かなり大きい(図9B)。組織構築にも種差が見られる。巨大なイットウダイの縦走堤は、内側と外側のふたつの部分に分けられる。それぞれの部分に線維層と顆粒細胞の層がある(図9D)。このような内外側の区分は、メダカ、キンギョ、マハゼには見られない(図9B・E・F)。またイットウダイの縦走堤においては、他の種では見られない中型から大型の細胞も数は少ないが存在している。マハゼの縦走堤は、表面に小型の顆粒細胞が層状に密に詰まっていて、中心部では細胞はまばらである(図9F)。このような同心円状の構築は、ここに紹介した他の種の縦走堤ではみられない。このような形態の多様性の要因もまた不明である。

小脳弁

 哺乳類の小脳は、左右に大きく広がっている小脳半球、左右の小脳半球の間で谷のように深く落ち込んでいる虫部、小脳の腹側部で橋と向かいあっている場所に隠れている小さな片葉−小節葉から構成されている。小脳半球の大部分は、主に橋核を介した大脳皮質からの下行性入力を受ける。虫部と、虫部に近い半球内側部は、主に脊髄からの入力を受ける。片葉−小節葉は、主に前庭神経から平衡感覚を受けている。

 真骨魚の小脳は、小脳体、小脳弁、顆粒隆起と小脳尾葉から構成されている。小脳体は、外から見て最も目立つ小脳領域である。中継核を介した終脳からの入力と脊髄からの入力を受けている。脊髄から入力を受ける場所は小脳体の一部であり、終脳由来の情報はかなり広い範囲に入力している。

 真骨魚の小脳体には、このように入力の面から考えると、哺乳類の小脳半球と虫部に相当するような要素が存在している。哺乳類の小脳半球は、哺乳類で新たに出現したとして「新小脳」と呼ぶことがあるが、果たして本当にそうなのか、注意が必要と筆者は考えている。真骨魚の顆粒隆起は名前が示すように、顆粒細胞が密集して膨隆している構造であり、側線神経と内耳神経を介して、側線感覚、聴覚、および平衡感覚を受けている。顆粒細胞の軸索は小脳尾葉の分子層(と小脳稜)に終わっている。したがって、顆粒隆起と小脳尾葉が一緒になって機能単位を形成しており、哺乳類の片葉−小節葉に相当する可能性がある。

 それでは残る小脳弁とは何か? 小脳弁は小脳体から吻側に続く場所で、中脳の脳室の中へと入っていく。脳室を塞ぐ弁のような構造なので、小脳弁と呼ばれている。小脳弁は全ての条鰭類に存在する一方、条鰭類以外の脊椎動物にはない。小脳弁は、終脳から中継核を介した入力を受けるが、小脳体と異なり、脊髄からの投射は受けない。条鰭類の小脳は全体として、哺乳類と同じく運動制御に関わっているのは間違いないが、小脳弁がより具体的にはどのような行動の制御に関わっているのか、よくわかっていない。小脳弁を除去すると、水底に沈んでしまうという報告と背光反射に関わるという報告があるが、それ以上のことは不明である。

 小脳弁にも種差がある。キンギョの小脳弁は内側葉と外側葉のふたつの葉に分けられる(図14B)。一方、メダカの小脳弁は単純で複数の葉に分けることはできない(図14A)。また、小脳弁はキンギョではとても大きいが、メダカでは小さい。衝撃的な小脳弁が、アロワナ目に属するエレファントノーズフィッシュ(図15)でみられる。驚くほど巨大なのである(図12D)。真骨類には弱い電流を周囲に発する種が存在し、「弱電気魚」と呼ばれている。エレファントノーズフィッシュは弱電気魚としてとりわけ有名であり、多くの研究がなされてきた。弱電気魚は前述のナマズと同じように特殊化した側線感覚器によって受容する電気感覚を持っている。ただし、ナマズのように自分自身では発電しない魚種では電気感覚側線器は一種類しかないのに対して、弱電気魚は複数の種類の感覚器をもっている。

図14.メダカ(A)とキンギョ(B)の小脳弁(VC)を通る横断切片(Nissl染色)。メダカの小脳弁と異なり、キンギョの小脳弁は内側葉(VCm)と外側葉(VCl)に区分けされている点に注意。LI:視床下部の下葉,OT: 視蓋,TL:縦走堤,TS:中脳の半円堤(側線、聴覚、皮膚感覚の中枢)。[Yamamoto N. (2017)より引用]

図15.エレファントノーズフィッシュ。ヒトの大脳皮質が他の脳領域を覆っているように、この魚の小脳弁は多くの脳領域に覆い被さるほど巨大化している。

 弱電気魚は、発した電流の流れが障害物や他の動物などで乱れるのを感じることで周囲の状況を把握でき、他個体とのコミュニケーションにも発電を利用する。エレファントノーズフィッシュは、ナマズと同様に電気感覚を受け取る電気感覚性側線葉をもつ(図12D:ただし大部分は奥に隠れている)。受け取る電気感覚の多様性を反映して、その大きさはナマズよりも大きい。電気感覚の発達にともなって、それに対応した一次感覚中枢が大きくなるのは他の感覚の例を見ても頷けるところである。しかし、エレファントノーズフィッシュの小脳弁の巨大化は、電気感覚性側線葉の比ではない。小脳弁は中脳の脳室の中に入っているのが普通であるが、中脳室に収まりきらずに外にも出てしまっていて、大脳、間脳、中脳、他の小脳領域、電気感覚性側線葉を含む延髄前方部の大部分の上に覆い被さっている。このような状況を、どこかで見たことがないか? 我々ヒトの大脳皮質は巨大化して小脳や延髄以外の脳領域の上に覆い被さっているが、エレファントノーズフィッシュもそれと似たような状況になっている。ただし、巨大化しているのは大脳ではなくて小脳弁であるという違いはあるが。この小脳弁の巨大化は、電気感覚の処理や電気の発生の調節などと関係があるのかもしれない。しかし、デンキウナギ目(食用にするウナギとは別の仲間)にも弱電気魚がいるが、それらの種では小脳弁はそんなに大きいわけではない。したがって、エレファントノーズフィッシュの小脳弁がなぜこれほど大きいのかはっきりした理由は不明である。

膨隆が形成されるメカニズム

 本章をここまで読んできた人の中には、「そういえばこの本のタイトルは『遺伝子から解き明かす脳の不思議な世界』だったはずで、遺伝子はどうなっているのか?」という疑問・不信を持たれた方もいるかもしれない。本来ならいよいよ、多様性が生まれるメカニズムを遺伝子というキーワードで語るべきなのであるが、残念ながらこれまで述べてきためくるめく多様性の背後にある遺伝子はほとんど全くと言っていいほど不明である。そこで、以下では多様性が生まれる過程について、個体発生や感覚器と脳の関係といった視点から論考し、どのような遺伝子を調べればよいのか考えるヒントを提供する形で筆を進める。ここで感覚器について特に考察するのは、膨隆などの脳形態の特殊化は、小脳を除くと脳や脊髄の感覚領域に見られるからである。ただし状況は、以下に考えていくように感覚の種類によって異なるかもしれない。

 嗅覚の場合、感覚細胞(嗅細胞)はそれ自身がニューロンでもあり、軸索を一次嗅覚中枢である嗅球に送っている。ウツボの嗅球が巨大なのは、感覚細胞の数の増加が原因かもしれない。すなわち、嗅細胞の個数を決定する遺伝子や遺伝子ネットワークが変化して、嗅細胞の数が増えると嗅球が大きくなる可能性がある。嗅球は、嗅細胞が位置する感覚上皮である嗅上皮の前駆体である嗅プラコードが発生中に出現する時点ではまだ存在しない。嗅細胞の軸索の束である嗅神経が終脳に到達すると、終脳の吻側端に嗅球が分化してくる。したがって、嗅細胞の数が増えて、終脳に到達する嗅細胞の軸索(嗅神経の線維)の数が増えると、それに応じて嗅球の形成に動員される終脳ニューロンの数が増える、あるいは将来嗅球を構成することになるニューロンが増えるように細胞分裂が盛んになる、といった現象が誘導される可能性がある。もうひとつ可能性があるのは、嗅細胞の個数が増えるのと嗅球のニューロンが増えて大きくなる現象の背後に、共通の遺伝子メカニズムが存在しているというものである。このような論考は、感覚細胞自身がニューロンである他の感覚系にも適用できるかもしれない(例えば皮膚の感覚装置)

 感覚を受容し、脳にその情報を送るのに、ふたつの細胞が関わっている感覚系の場合には、状況は変わってくる。例えば味覚の場合、味刺激を検出するのは味細胞であるが、味細胞それ自身はニューロンではないので軸索を持っていない。味覚を脳に伝える顔面神経、舌咽神経、迷走神経の途中には膨らんでいる場所があり、その中に突起を味蕾と脳に伸ばしている神経節細胞と呼ばれるニューロンがある(神経節とは脳や脊髄の外にニューロンが集まって存在している構造を指す)。味蕾の方に伸ばしている突起が、味細胞から味覚情報を受け取っていて、もう一方の突起が脳の一次中枢へと情報を伝えている。このような構成になっている感覚の中枢が巨大化する場合には、感覚細胞、神経節細胞、中枢の感覚ニューロンの3種類の細胞の数が増加しているであろう。構成要素が多いので、感覚中枢の巨大化を説明しうるシナリオもいろいろ想定可能になる。例えば、感覚細胞の数を規定する遺伝子あるいは遺伝子ネットワークの変化によって、感覚細胞の数が増え、それによって感覚細胞に突起を送る神経節細胞の数が増え、中枢に向かう突起の数が増えるために中枢感覚ニューロンの数が増えるという可能性が想定できる。細胞数の増加に繋がる細胞間のコミュニケーションは栄養因子が行なっているかもしれない。中枢感覚ニューロンの増加が、神経節細胞の増加をもたらし、それによって感覚細胞の増加が促されるという、上とは逆方向の影響の伝播もありうる。それ以外の想定可能なシナリオはいろいろあるが、キリがないのでこれ以上の論考はここでは行なわない。

 その種にとって重要な感覚の中枢が大きくなる現象は真骨魚以外でも見られ、そのメカニズムを明らかにすることは神経科学の重要な課題である。しかし、真骨魚の例は最も顕著で驚くべき多様性を示していて、研究材料として大変有望である。この現象の背後にあるメカニズムを明らかとするための鍵は、すでに論考したように、結局のところ個体発生の途中で幹細胞が何回分裂を行なうのか決定する遺伝子あるいは遺伝子ネットワークがどのようなものであるか、そしてその働きが種によってどのように違うのか、という問題に収斂しそうである。メダカには、もっているゲノムに違いがある「系統」と呼ばれる個体群が作られていて、生物資源として維持されている。異なる系統のメダカを全く同じ環境で育てても、終脳、小脳、中脳などの脳部位が脳全体に占める割合には違いが生じてくる。これは、遺伝的な違いが脳各部の大きさに影響を与えることを証明していて、感覚中枢の発達程度の違いも遺伝的背景の影響を受けると考えて間違いない。なお、魚類においては、哺乳類や鳥などと異なり、成体でも感覚器(例えば網膜)や脳の各所で細胞新生があるため、細胞新生の数の調節が脳の発達程度の違いに影響を与えている点にも留意が必要である。さらに、脳各部の大きさが生息環境からの影響を受けるという報告もあり、脳各部の大きさは、本章で詳しく考察した遺伝的な側面と環境の影響の両面を念頭に置く必要がある。

謝辞

この章で紹介した内容の土台となる研究は、その多くが吉本正美先生(東京医療学院大学)、石川裕二先生(放射線医学総合研究所)、伊藤博信先生(日本医科大学名誉教授)との共同研究で得られたものであり、ここに深く感謝する。

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ミエリン鞘はとも呼ばれ、軸索に巻き付いて絶縁体として働く構造である。これにより神経パルスはミエリン鞘の間隙を跳躍的に伝わる(跳躍伝導)ことで神経伝達が高速になる。ミエリン鞘は末梢神経系の神経ではシュワン細胞、中枢神経系ではオリゴデンドロサイトから構成される。

脳の中にある空洞のこと。脳脊髄液で満たされている。脊髄にあるものは中心管と呼ばれる。

神経堤細胞は脊椎動物の発生時に見られる神経管に隣接した組織。頭部では神経、骨、軟骨、甲状腺、眼、結合組織などの一部に分化する。

細胞の生体膜(細胞膜や内膜など)にある膜貫通タンパク質の一種で、特定のイオンを選択的に通過させる孔をつくるものを総称してチャネルと呼ぶ。筒状の構造をしていて、イオンチャネルタンパク質が刺激を受けると筒の孔が開き、ナトリウムやカルシウムなどのイオンを通過させることで、細胞膜で厳密に区切られた細胞の内外のイオンの行き来を制御している。刺激の受け方は種類によって多様で、cGMPが結合すると筒の穴が開くものをcGMP依存性イオンチャネルと呼ぶ。TRPチャネルも複数のファミリーからなるイオンチャネルの一群であり、非選択性の陽イオンチャネルである。発見された際に用いられた活性化因子の頭文字や構造的特徴から、A (Ankyrin), C (canonical), M (melastatin), ML (mucolipin), N (no mechanoreceptor), P (polycystin), V(vanilloid)の7つのサブファミリーに分類されている。TRPは、細胞内や細胞外の様々な刺激によって活性化してセンサーとして働いたり、シグナルを変換したり増幅したりするトランスデューサーとしての機能も併せ持つ。温度センサーやトウガラシに含まれるカプサイシンのセンサーとしても機能していることが知られている。

任意の遺伝子の転写産物(mRNA)の相同な2本鎖RNAを人工的に合成し生物体内に導入することで、2本鎖RNAが相同部分を切断して遺伝子の発現を抑制する手法。2006年には、この手法の功績者がノーベル生理・医学賞を受賞している。

様々な動物種間で塩基配列やアミノ酸配列を比較することによって、類似性や相違を明らかにする手法。この解析によって動物種間の近縁関係や進化の過程を予測することが可能になる。

発生過程で神経管を裏打ちする中胚葉組織であり、頭索類・尾索類では背骨のような支持組織としての役割を持つ。脊椎動物では運動ニューロンの分化を誘導するなど発生学的役割を持つ

魚類に顕著にみられる鰓のスリットで、哺乳類では発生の初期にはみられる。発生が進むと複雑な形態形成変化が起き、消失するが、外耳孔などは鰓裂の名残ということができる。

動物の初期発生において最初の形態形成運動として原腸陥入が起こる。原腸は消化管に分化する。この原腸陥入によって生じる「孔」を原口と呼ぶが、これが将来の動物の体の口になるのが前口動物であり、肛門になるのが後口動物である。半索動物、脊索動物は後口動物である。

ナマコの幼生のことをオーリクラリア幼生と呼ぶが、ウニのプルテウス幼生、ヒトデのビピンナリア幼生、ギボシムシのトルナリア幼生など、形態的共通性をもつ幼生全体をまとめてオーリクラリア(型)幼生と呼ぶ。今日ではディプルールラ型幼生という呼び方が広く使われている。この説はガルスタングが1928年に提唱した。その時代にはオーリクラリアという用語が使われたため(ディプリュールラ説ではなく)オーリクラリア説と呼ばれている。

Hox遺伝子はショウジョウバエで発見されたホメオティック遺伝子の相同遺伝子である。無脊椎動物のゲノムには基本的に1つのHoxクラスターがあり、脊椎動物のゲノムには4つのHoxクラスターがある。Hoxb1は4つあるクラスターのうちのBクラスターに属する1番目のHox遺伝子という意味である。

脊椎動物胚の後脳領域には頭尾軸にそった分節性(等間隔の仕切り)がみられる。この各分節をロンボメアと呼び、図14に示すように7番目までは形態的に明瞭に観察できる。

脊椎動物のゲノムにはふたつか3つのIsletが存在する。Isletは脳幹(延髄、橋、中脳)の運動性脳神経核に発現して、運動ニューロンの分化に関与している。

感桿型では光刺激はホスホリパーゼCとイノシトールリン酸経路を活性化させる。繊毛型ではホスホジエステラーゼによる環状GMPの代謝が関与している。

気嚢による換気システムは獣脚類と呼ばれる恐竜から鳥類に至る系統で段階的に進化していったと考えられる。

このような特異な形態は胚発生期には見られず、生後に発達する。その過程は頭骨に見られる「テレスコーピング現象」と並行して進む。

1. Sato, T. (1986) A brood parasitic catfish of mouthbrooding cichlid fishes in Lake Tanganyika. Nature 323: 58-59.

2. Taborsky, M. et al. (1981) Helpers in fish. Behav. Ecol. Sociobiol. 8: 143–145.

3. Hori, M. (1993) Frequency-dependent natural selection in the handedness of scale-eating cichlid fish. Science 260: 216-219.

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31. Janvier, P. (2015) Facts and fancies about early fossil chordates and vertebrates. Nature, 520(7548), 483.

卵や精子、その元となる始原生殖細胞などを指し、子孫に遺伝情報が引き継がれる細胞そのものである。

卵や精子を作る減数分裂において、母由来の染色体と父由来の染色体が対合したときに、同じ領域がランダムに入れ替わる(組み換えられる)。つまり、我々の”配偶子の”染色体は、父親と母親由来の染色体がモザイク状に入り交じったものなのである(体細胞の染色体は免疫グロブリンなどの一部の領域を除いて基本的には均一なものと考えられている)。

 タンパク質にコードされる遺伝情報をもつ塩基配列。狭義にはゲノムDNAのうち、mRNAに転写され、タンパク質になる部分。近年は、タンパク質に翻訳されないものの、機能をもつtRNA、rRNAやノンコーディングRNAなども遺伝子の中に含められるようになっている。本書では、特に注意書きのない限り、タンパク質の元となるmRNAになる部分を遺伝子、と呼ぶ。

 では、その転写因子はなにが発現させるのか、というと、やはり別の転写因子である。卵の段階から、母親からmRNAとして最初期に発現する遺伝子は受け取っているので(母性RNA)、発生の最初期に使う転写因子を含む遺伝子群に関しては、転写の必要がないのである。その後、発生、分化が進んでいくと、それぞれの細胞集団に必要な転写因子が発現し、実際に機能をもつ遺伝子の転写を促す。

遺伝子は、核酸配列の連続した3塩基(コドンと呼ばれる)が1アミノ酸に対応し、順々にペプチド結合で繋げられてタンパク質となる。3つの塩基は43=64通りになるが、アミノ酸の数は20個、stopコドンを含めても21種類しかない。したがって、同じアミノ酸をコードするコドンは複数あり、たとえ変異が入ってもアミノ酸は変わらないことがある。これを同義置換と呼ぶ。一方で、変異によってコードするアミノ酸が変わってしまう置換を非同義置換と呼ぶ。

 ふたつの系統が祖先を共通にした最後の年代。本章では、近年の分岐年代推定を利用して作成された系統樹(当該文献[9]のFig.1を参照)からおよその年代を読み取り、記入している。

 アフリカツメガエルや、コイ科、サケ目など、進化上の随所でも全ゲノム重複が起こっている。

 最もよく知られている放射性同位元素による年代測定は、放射性炭素年代測定である。炭素12Cは紫外線や宇宙線によって、空気中では一部(1/1012)が常に14Cに変換されている。つまり、大気中ではいつの時代も1兆個の炭素原子のうちひとつが14C、残りが12Cという割合なのである(太陽活動の変化などにより若干のブレはある)。しかし一旦生物の体内に炭素が取り込まれ、そしてその生物が死に、地中に埋まってしまえば、もう宇宙線も紫外線も当たらないので、14Cへの変換は起こらない。ここで14Cは放射性同位元素であることに注目したい。14Cは約5730年で半分が崩壊し12Cに変換される。したがって、14Cの比率でいつその物質が地中に埋まったのかがわかるのである(文献7)。

 ただし、この放射性炭素年代測定では、14Cの検出限界の関係で、せいぜい6万年が限界である。それより昔は火山岩に含まれる物質の、やはり放射性崩壊の半減期を元に推定される。例えば、K-Ar法では、40Kが40Arに13億年の半減期で放射性崩壊することを利用する。溶岩からできたての火山岩か、あるいは何億年も経ったものかを調べることができる。40Kは岩石中に元々大量に存在するため、差異を検出することは不可能だが、40Ar(常温で気体)は大気中には微量しか含まれないため、岩石中に封入された気体の中の40Arの含有率を計測することにより、その岩石の古さがわかる。当然、40Arの率が高い物が古い岩石である。このように、複数の放射性元素の崩壊の半減期から地質年代というのは推定される。

 南米にもごく少数ながら有袋類が現存しており、これらのゲノム解析・比較から、オーストラリア・南米で現生の有袋類の共通祖先は、実は南米で生まれ、当時陸続きだった南極大陸を経て、オーストラリアにいたったと考えられている。

 世界で最も臭いといわれているシュールストレミングをネットで取り寄せて購入したとき、人々は逃げるどころか、わざわざ悶絶するために集まってきた。いい匂いの物を取り寄せても20人もの人数は集まるとは思えず、怖い物見たさという悪趣味な好奇心はたいしたものである。無論、取り寄せた私も例外ではない。ちなみに、シュールストレミングはひとかけらをクラッカーの上に載せるくらいの食べ方なら悪くない気もする。

このふたつの硬骨の作られ方について、第3章に詳述があるので参照。

 ガノイン鱗には我々の歯のエナメル質を作る遺伝子と相同な遺伝子が発現しており(文献18)、イメージとしては歯で身体を覆われているようなもので、当然極めて強固である。

 遺伝子にはその由来によっていくつかの異なる呼び名がある。オーソログとは、共通祖先がもつある遺伝子Aが、種分化によって2種以上の生物に受け継がれた時、受け継がれた遺伝子たちをオーソログと呼ぶ。パラログとは、遺伝子重複によって生じたふたつ以上の遺伝子を指す。最近では大野乾氏の功績をたたえ、ゲノム重複によって生じたパラログで現存するものを特にオオノログOhnologと呼ぶ。

 異化と同化……この2種類の化学反応によって生命活動は維持されている。異化は物質を分解してエネルギーを取り出す代謝経路、同化はエネルギーを使って必要な物質を体の中で作り出す代謝経路。

 アデノシン三リン酸の略。生体内のエネルギー通貨として、様々な化学反応に用いられている。

 組織中の核酸分子(ここでは特定の遺伝子から転写されたmRNAを指す)の分布を検出する手法。調べたい遺伝子の塩基配列を元に、そのmRNAに特異的に結合する分子を設計・合成することで特異度の高い検出が可能となっている。

 通常の生物の核ゲノムはそれぞれの両親に由来する染色体が2本1セット存在し(ディプロイド)、その染色体間で組み替えが起こるため遺伝的な由来を辿る作業がしばしば煩雑になる。しかしミトコンドリアは母親由来であるため(ハプロイド)、そのゲノムを利用することで比較的簡便に遺伝的な類縁関係を遡ることが可能となる。

 増幅断片長多型:制限酵素で切断したゲノムDNA断片をPCRにより増幅し、断片の長さの違いを網羅的に検出比較する方法。この断片長の違いを種間の類縁関係の推定に使用することが多い。

 sexual conflict。ある形質が片方の性にとっては有利だが、もう片方の性にとっては不利な場合にオスメス間で生じる対立。

 次世代シーケンサーを利用して、各組織に発現する遺伝子の種類や量を網羅的かつ定量的に推定する解析方法。

 真核生物のゲノムに散在する反復配列のうち、一度DNAからRNAに転写され、その後に逆転写酵素の働きでcDNAとなってからゲノム中の別の座位に組み込まれるものを指す。数多くのレトロポゾンが存在しており、例えばヒトゲノムは約40%がレトロポゾンによって占められている。

 太陽光には連続したことなる波長成分の光が含まれているが、その波長によってエネルギーが異なるため、水中に到達する波長成分の割合が深さによって異なることがわかっている。特に濁ったビクトリア湖のような水環境では浅場の方が短波長である青色光の成分が多く、深場では長波長の黄色〜赤色の成分が多いことがわかっている。

 タンパク質をコードするDNA配列上の塩基置換にはアミノ酸の置換を伴う非同義置換と、伴わない同義置換がある。一般に、同義置換は生体に影響を及ぼさないため中立であるが、非同義置換は生体にとって不利であることが多い。ただしタンパク質の機能変化が個体にとって有利な場合は非同義置換の割合が上昇することが知られており、それを正の自然選択と呼ぶ。同義置換と非同義置換の割合を統計学的に比較する方法がある。詳細については第7章およびコラム「適応進化に関わる候補遺伝子や候補領域を絞り込むアプローチ」を参照。

   発生初期の胚の一部の細胞群から作られ、生殖細胞を含む様々な組織に分化可能な性質(多能性)を有する細胞株。英語名(embryonic stem cells)の頭文字をとって、ES細胞と呼ばれることも多い。

 変異体を元になった親系統と交配すること。TILLING変異体に関しては変異以外の部分を親系統由来のゲノムに置換するために行う。1回の交配で全体の50%の領域が置換されるため、90%以上を置換するためには最低4回の、99%以上を置換するためには最低7回の戻し交配が必要である。

 タンパク質の二次構造のうち代表的なモチーフのひとつ。水素結合により形成されたらせん状の形である。

 Francis Crickが1958年に提唱した、遺伝情報がDNA→(転写)→mRNA→(翻訳)→タンパク質、という流れで伝わるという概念のこと。分子生物学の基本となる極めて重要な概念である。

 ヒメダカの原因遺伝子としてだけでなく、ヒトの先天性白皮症(つまりアルビノ)やホワイトタイガーの原因遺伝子としても知られる。水素イオンを運ぶトランスポーターをコードすることがわかっているが、その黒色素産生(メラニン合成)における機能は未解明な点が多い。

 相同組換えの鋳型となる外来DNA断片のこと。通常、導入したい配列(GFP遺伝子や特定の塩基置換など)の上流・下流それぞれに、導入したいゲノム領域と相同な配列(相同アームと呼ばれる)を持ったDNA断片である。

 RNAポリメラーゼが結合し、RNAを転写するのに必要最小限の遺伝子上流配列。通常、単独では下流の遺伝子は転写されないが、周辺に転写活性化領域(エンハンサーなど)が存在すると、その影響を受けて下流に存在する遺伝子が転写される。

 オオシモフリエダシャクの「工業暗化」の例を考えるとわかりやすい。これは、産業革命以降のイギリスで、暗化型と呼ばれるより黒い個体の割合が多くなったとされる例である。この蛾は、自然が多い地域では淡色型が目立ちにくく、鳥に捕食されづらかったが、すすで黒くなった木が多い工業地帯では、より黒い暗化型のほうが目立ちにくく、生き残りやすかった。この場合、仮に蛾の色をより黒くするアミノ酸変異が生じたとすると、そのアミノ酸変異は工業地帯で生存に有利で、固定されやすいだろう。ちなみに、近年、具体的にどんな遺伝的変異がこの工業暗化に関わっていたのかが詳細に解析されつつある。

 SWS = short wave sensitive opsin、つまり短波長の光に感受性をもつオプシンのサブタイプ。

 第4章にも記載されているように、深いところには波長の長い赤い光のみが届く傾向がある。つまり、水深の深いところに棲む集団では、青い光を感受するSWSの機能は重要ではなくなってしまう。

 Gタンパク質はGTP結合タンパク質ともよばれ、GTPと結合することで活性化される。GTPを加水分解する性質をもっており、結合しているGTPがGDPに加水分解されると自身が不活性化される。受容体からの信号を中継するものは三量体(α、β、γサブユニット)として存在している。

 神経伝達物質は、放出された後、即座に分解されなければ迅速な伝達を成し得ない。したがって、こういった分解酵素の存在は、ATPが実際にその部位で神経伝達物質として働いていることの傍証となる。

 セロトニンは生体内に存在するモノアミンの一種であり、神経系では神経伝達物質として機能する。生体内のセロトニンの大部分(〜95%)は腸管に存在しており、神経系に存在するものは割合としては小さい。神経系では中脳の縫線核という部位のニューロンで産生され、情動機能等に関係しており、セロトニンの再取り込み阻害剤には抗鬱薬の作用がある。味蕾に存在するセロトニンはそれらとは別の働きをもっていると考えられる。

 迷走神経には感覚性の線維と運動性の線維の両方が含まれており、ここでの迷走感覚神経とはその中の感覚性の要素のみを指す。

 神経細胞(ニューロン)で、突起状の構造(軸索や樹状突起)以外の、核の周辺部の構造を細胞体という。

 ある細胞が放出するリガンドが、その細胞自身の受容体に働くことを自己分泌という。近傍の細胞の場合は傍分泌と呼ぶ。近隣の同じ性質をもった細胞に作用する場合と、自分自身に働く場合を合わせて、自己・傍分泌と呼ぶことが多い。哺乳類のキスペプチンニューロンは、キスペプチン以外に放出するニューロキニンB、ダイノルフィンと呼ばれるペプチドが、キスペプチンニューロン自身に作用することで、アクセルとブレーキのように働き、そのタイムラグでキスペプチンの放出を間歇的に引き起こす。これが前述のGnRHパルスを生み出しているとされている。

 市場に出ている子持ち昆布の中には、ニシン以外の魚(タラの仲間など)を用いて加工されているものもある。また、本物のニシンの卵の場合も、自然に海藻に産みつけられた卵はもっとまばらなので、あのようにびっしりと卵が並んで食べ応えのある子持ち昆布は人為的に作られているようだ。

 タンパク質の一次構造を形成する際にアミノ酸間に形成されるペプチド結合ではなく、側鎖にあるアミノ基とカルボキシル基の間に形成されるペプチド結合のこと。

 2-⑴で述べたように魚類の卵膜の別名は“コリオン”である。将来コリオンになるタンパク質のため、“材料”の意味をもつ“-genin”をつけて、コリオジェニンと呼ばれている。

 遺伝子のうち、半数体ゲノムにつき1コピー(体細胞では2コピー)しかない遺伝子以外のもの。

 共通祖先から生じたいくつかの遺伝子のうち、異なる生物種において類似または相同な機能をもつ遺伝子同士のこと。たとえば、ヘモグロビン、ミオグロビン、サイトグロビンなどは共通祖先から由来するグロビン遺伝子ファミリーであり、ヒトもマウスもこれらの遺伝子をもつが、このうちヒトのヘモグロビン遺伝子とマウスのヘモグロビン遺伝子はオーソログの関係にあるといえる。

 遺伝子ファミリーの中には、突然変異などによって機能を失ってしまうものがある。例えば、変異によって翻訳の途中にストップコドンが入ったり、プロモーターの欠損による転写不能や、転写後のプロセッシングに関与する配列の欠如による成熟mRNAの形成不全などがある。このように、配列の痕跡は残っており、どの遺伝子ファミリーに属するかは明らかだが、機能的でない遺伝子を偽遺伝子(Pseudogene)という。

 魚類では毎年数百の新種記載があり、2018年現在において硬骨魚類の現生種の記載数は3万をこえる。

 栄養リボンという邦訳は、山岸宏『比較生殖学』(東海大学出版会、1995年)による。

 第8章で触れられているデンキウナギなどは、長い身体の大部分が発電器官になっており、肛門の位置が同じように著しく前方に位置する。

 酵素活性は同じであるが、アミノ酸配列の違いによって性質の異なる酵素タンパク質。タンパク質の電気泳動度の差異から、その支配遺伝子座における遺伝子型の差異を検出できる。

 生物相の分布境界線で、この線を挟んで動植物相が大きく変化する。この線の西側が東洋区、東側がオーストラリア区とされる。ウォーレスとウェーバーがそれぞれ異なる境界線を提唱した。スラウェシ島やティモール島は両者の境界線の間に位置する。

 個体や系統を識別する上で目印となるDNA配列のこと。系統間で塩基配列が異なる領域があれば、そこをDNAマーカーとして利用できる。

 ゲノムDNAを制限酵素で切断し、100〜200kbの断片を細菌人工染色体(BAC)ベクターに組み込んでクローン化したもの。大きな領域の物理地図や塩基配列決定に必要とされてきた。

 DNAマーカーや既知のクローンを用いて、配列が一部重なり合うクローンを同定する作業を繰り返し、目的遺伝子近傍のクローンコンティグを作成する方法。

 ミュラー管とは哺乳類の発生過程で将来卵管になる管で、オスではこのホルモンの働きによって退縮する。しかし、真骨魚類にミュラー管はなく、別の機能をもつと考えられる。

 メダカ博士こと山本時男博士は、1953年d-rR系統(オスが緋色、メスが白色の限定遺伝をもとに育成作出された系統、X染色体上に潜性(劣性)のr遺伝子、Y染色体状に顕性(優性)のR遺伝子をもつ、体色により遺伝的な性の判別が可能)の孵化直後から性ホルモンを経口投与して性の人為的転換に成功した。すなわちXrXrでもアンドロゲン投与によりオスとなり、正常メスXrXrと交配して、メスメダカばかりを生んだ。XrYRもエストロゲン投与によりメスに性転換し、正常のオスXrYRと交配した。性ホルモンによる性転換が多くの研究者から示されていたが、山本博士によって初めて遺伝的な性と性ホルモンによる性転換の関連が明らかにされた。コラム⑧も参照。

 コ・オプション(co-option)、遺伝子の使い回し。既存の遺伝子が新たな機能を担うようになること。

 非同義置換よりも大きな影響を与えるのがフレームシフトである。3の単位で塩基は読まれていくが、もし、3の倍数以外の挿入/欠失が起こった場合は、その後の配列が全て読み枠がズレてしまい、その挿入/欠失より後(C末端側)ではまったく異なるタンパク質ができてしまう。

008年9月15日に、アメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングス(Lehman Brothers Holdings Inc.)が経営破綻したことに端を発して、連鎖的に世界規模の金融危機が発生した事象を総括的によぶ通称

通称ブレグジット(英語: Brexit)とは、イギリスが欧州連合(EU)から離脱すること