うつくしの街 川越

うつくしの街 川越
小江戸成長物語
監修=山野清二郎・松尾鉄城
編集企画=寺島悦恩・小林範子

B6サイズ/400ページ/2500円+税/2019年6月30日発売/ISBN978-4-909383-11-2

祭、城、寺社から美術、舟運、まちづくりまで
一大観光都市となった今の川越をかたちづくる江戸から令和までの歴史を、研究者や商家をはじめ15人が紡ぎ出す言葉を手掛かりにディープな川越、そのアイデンティティに直に触れる(全内容を収録したオンライン版によって、いつでも読書が可能になります)

「ディープな川越」を発信

「現代の都市には「パリンプセスト」という言葉が見事に当てはまるといえる。「パリンプセスト」とは、本格的な印刷術というものが存在しなかったヨーロッパ古代・中世において、羊皮紙を使って写本がなされたのであるが、羊皮紙は非常に高価であったため、前に書かれたものを消し、その上に書いていったものである。
一見消えかかったように見えても、この現代のモダンな都市の下には、何とも魅力的な歴史・文化資源が存在し、そのたっぷりとした栄養を吸って現代の都市があるというわけである。」(序章より)

商家の営みや農家の暮らし、祭の活気からまちづくりの活動まで、人々の生活様式を何層にも重ね、今に至る川越。各層を縦に深く掘り下げるとともに、さまざまな営みを、ことによると風化していきかねない川越の、現在を作ってきた生き証人ともいえる方々の声、歴史研究者、実際にまちづくりに携わってこられた方々の声を横につなぎ、三年以上の月日をかけて出版にいたった、「ディープな川越」を伝える一冊。

目次

序 章 川越イノベーション&リノベーション
「ディープな川越」を発信/「日本遺産」と文化資源のストーリー化/川越の文化を五感で発信/川越商人の財力と町民の結束力が素晴らしい文化を生む/今後の川越のあり方を模索

第一章 蔵造りと洋風建築の町並みを歩く
明治二六年大火以前の町家建築/土蔵造り町家の建設/ヴァラエティーに富む蔵造りの町家/洋風建築の登場/地元職人による擬洋風建築/外国人技師や建築家の介在/都市文化を象徴する洋風町家

第二章 喜多院の歴史と文化財を訪ねて
Ⅰ 喜多院の歴史
戦国期の無量寿寺の衰退と新たな復興/江戸時代の無量寿寺「喜多院」の隆盛/明治維新期からの無量寿寺「喜多院」
Ⅱ 喜多院の文化財
「慈恵堂」(潮音殿・大師堂)/なぜ、慈恵堂を「潮音殿」というのか/仙芳仙人(真人)の伝説/明星の杉と川越第一中学校校歌/山門と番所/寛永一五年(一六三八)移築の江戸城からの家光使用の御殿/慈眼堂/鐘楼門/多宝塔/松平大和守家廟所/どろぼうはし(橋)/五百羅漢/職人尽絵屏風

第三章 知恵伊豆そして家康の血をひく大名も城主になった川越藩
家康江戸入府の頃の川越と初代藩主酒井重忠/幕府と川越と天海/酒井忠利・忠勝と堀田正盛そして寛永の大火/「知恵伊豆」松平信綱/柳沢吉保と秋元家の時代/松平大和守家の時代/最後の藩主松井松平家

第四章 川越祭︱世界が認めた小江戸の大祭
ユネスコ無形文化遺産登録/藩主が氷川祭礼を奨励︱江戸天下祭の面影を伝承/明治二十六年の大火後に江戸系川越型の山車が出現/敗戦から一年後には再起を目指して祭礼が復活/神幸祭が文政の祭礼絵巻のように復興/二十五年間の論議を踏まえ山車行事の日程を変更/さらなる発展を願い将来への課題を考える

第五章 川越と江戸・東京を結んだ新河岸川舟運
新河岸川舟運のはじまり/新河岸川の水源/新河岸川舟運の隆盛期/舟の種類/上りの舟の原動力/「問屋船」と「出居仕船」/船頭という仕事/船頭さんの暮らしと信仰/川越舟歌/仙波河岸の開設と東京とのつながり/新河岸川舟運の終焉/新たな新河岸川文化の正しい理解を

第六章 名産 川越唐桟と川越イモ
Ⅰ 川越唐桟が世に出るまで
甲州谷村の絹織物/海保青陵が激賞した川越の家中織りと絹平/開国による川越織物の変化/「唐桟」とは/喜田川守貞と川越唐桟
Ⅱ 川越イモの歴史
サツマイモがきた道/享保の大飢饉/武蔵野台地の畑作新田/川越イモの元祖/江戸の焼きいも屋/焙烙焼きから釜焼きへ/川越イモが日本一のサツマイモになったわけ/明治の川越イモ産地/サツマイモの先生・赤澤仁兵衛/あかづる(赤蔓)・あおづる(青蔓)からべにあか(紅赤)へ/大正期の川越イモ/太平洋戦争による食糧難時代のサツマイモ

第七章 循環型農業のモデルとしての武蔵野・三富新田
萱の原から林と畑へと変わった武蔵野/水、土、風、自然条件の厳しい武蔵野台地/信綱、吉保、吉宗による三段階の武蔵野開拓/三富新田はどのように開拓されたのか/開拓地の様子︱三つの困難の克服の知恵/文治政治が息づく三富開拓/離村者をなくす様々な工夫/特産品に見る生活の知恵/人が介在し、創造する循環型農業/歴史に寄り添って生きる三富の農業後継者たち

第八章 服部家にみる川越町家の暮らし
城下の町家/商い/町家に住まう/習い事・行事・祝い/寺社参り・講

第九章  江戸初期川越の町人像
『榎本弥左衛門覚書』/少年時代の遊び/自宅建築を天海に相談/家光の鹿狩りと子ども心/手習い・講学所/男伊達と喧嘩/川越大火と江戸城の遺構/家業である塩の仲買/家督相続/弥左衛門の人生哲学

第十章 川越城下の総鎮守氷川神社
氷川神社の由来/創建縁起/川越城下の総鎮守/氷川神社の社殿/主な摂末社/社宝並びに神社関係古文書類/現在の境内/明治の祠官山田衛居
コラム 河越太郎重頼の供養塔がある養寿院

第十一章 川越の美術︱岩佐又兵衛、狩野吉信、小茂田青樹、小村雪岱を中心に
岩佐又兵衛/狩野吉信/小茂田青樹『春の夜』『薫房』/小村雪岱

第十二章 現代の川越のまちはどのように形成されてきたか
武蔵野台地の先端にあるまち、川越/市街地の変遷/城下の町割り/明治の大火と蔵造りの町並み/町並み保存運動のはじまり/歴史を生かしたまちづくりへ/市民の保存運動/点から面へ/建造物保存の実際/歴史を反映したまちづくりに/川越市が取り組むまちづくり/美しいまちの演出/町並みの演出に欠かせない小物/観光地化する川越

第十三章 一番街商店街と町並み委員会
一番街商店街と町並み委員会/蔵造り商家/コミュニティマート構想モデル事業/町並み委員会の発足/町づくり規範/行政の協力/電線の地中化/伝統的建造物群保存地区/都市景観推進団体

第十四章 川越蔵の会︱歴史的景観を生かしたまちづくりへの取り組み
文化財保存運動/蔵の会が発足する/「蔵詩句大賞」と「蔵の街かるた」/伝統的建造物保存のための活動/法人化後の活動/川越の職人技や手仕事、道具/住民、商店街、行政と一緒になった活性化への支援協力/テレビ番組「春日局」と「つばさ」

第十五章 魅力ある川越観光の創出へ向けて
一九六〇年代から七〇年代の川越の観光資源と一番街/蔵造り町並みの保存への模索/蔵造り建物の保存活動/観光地化への取り組み/川越観光の課題/川越観光のあたらしい変化と取り組み課題

第十六章 鼎談 蓮馨寺とその門前町をめぐって
コラム 菓子屋横丁が蘇った

【筆者紹介】(執筆当時)
監   修  山野清二郎(埼玉大学名誉教授・川越市文化財保護審議会会長)
松尾鉄城(女子栄養大学特任教授・川越市文化財保護審議会副会長)
編集・企画  寺島悦恩(東京電機大学教授・NPO法人アートバーブズフォーラム理事長)、小林範子(尚美学園大学講師・NPO法人アートバーブズフォーラム副理事長)
執筆者一覧
序 章 小林範子(同上)
第一章 羽生修二(東海大学名誉教授・川越市文化財保護審議委員)
第二章 松尾鉄城(同上)
第三章 寺島悦恩(同上)
第四章 谷澤勇(元関東山車祭研究会副会長)
第五章 松尾鉄城(同上)
第六章 井上浩(小江戸川越観光親善大使・元サツマイモ資料館館長)
第七章 松本富雄(元三芳町郷土資料館館長)
第八章 服部安行(服部資料館館長・川越文化財保護協会会長)
第九章 梶川牧子(川越市教育委員会教育長代理)
第十章 山田禎久(川越氷川神社宮司・小江戸川越観光協会副会長)
山野清二郎(同上)
コラム 金剛清輝(養寿院住職)
山野龍太郎(埼玉県立小川高等学校教諭)
第十一章 寺島悦恩(同上)
第十二章 荒牧澄多(NPO法人全国町並み保存連盟常任理事)
第十三章 可児一男(元町並み委員会委員長)
第十四章 原知之(NPO法人川越蔵の会前理事長・陶舗やまわ代表取締役)
第十五章 溝尾良隆(立教大学名誉教授・第4次川越市総合計画審議会会長)
第十六章 粂原恒久(蓮馨寺住職・小江戸川越観光協会会長)
山野清二郎(同上)
松尾鉄城(同上)
コラム  長井和男(前菓子屋横丁会会長)

コメント

ミエリン鞘はとも呼ばれ、軸索に巻き付いて絶縁体として働く構造である。これにより神経パルスはミエリン鞘の間隙を跳躍的に伝わる(跳躍伝導)ことで神経伝達が高速になる。ミエリン鞘は末梢神経系の神経ではシュワン細胞、中枢神経系ではオリゴデンドロサイトから構成される。

脳の中にある空洞のこと。脳脊髄液で満たされている。脊髄にあるものは中心管と呼ばれる。

神経堤細胞は脊椎動物の発生時に見られる神経管に隣接した組織。頭部では神経、骨、軟骨、甲状腺、眼、結合組織などの一部に分化する。

細胞の生体膜(細胞膜や内膜など)にある膜貫通タンパク質の一種で、特定のイオンを選択的に通過させる孔をつくるものを総称してチャネルと呼ぶ。筒状の構造をしていて、イオンチャネルタンパク質が刺激を受けると筒の孔が開き、ナトリウムやカルシウムなどのイオンを通過させることで、細胞膜で厳密に区切られた細胞の内外のイオンの行き来を制御している。刺激の受け方は種類によって多様で、cGMPが結合すると筒の穴が開くものをcGMP依存性イオンチャネルと呼ぶ。TRPチャネルも複数のファミリーからなるイオンチャネルの一群であり、非選択性の陽イオンチャネルである。発見された際に用いられた活性化因子の頭文字や構造的特徴から、A (Ankyrin), C (canonical), M (melastatin), ML (mucolipin), N (no mechanoreceptor), P (polycystin), V(vanilloid)の7つのサブファミリーに分類されている。TRPは、細胞内や細胞外の様々な刺激によって活性化してセンサーとして働いたり、シグナルを変換したり増幅したりするトランスデューサーとしての機能も併せ持つ。温度センサーやトウガラシに含まれるカプサイシンのセンサーとしても機能していることが知られている。

任意の遺伝子の転写産物(mRNA)の相同な2本鎖RNAを人工的に合成し生物体内に導入することで、2本鎖RNAが相同部分を切断して遺伝子の発現を抑制する手法。2006年には、この手法の功績者がノーベル生理・医学賞を受賞している。

様々な動物種間で塩基配列やアミノ酸配列を比較することによって、類似性や相違を明らかにする手法。この解析によって動物種間の近縁関係や進化の過程を予測することが可能になる。

発生過程で神経管を裏打ちする中胚葉組織であり、頭索類・尾索類では背骨のような支持組織としての役割を持つ。脊椎動物では運動ニューロンの分化を誘導するなど発生学的役割を持つ

魚類に顕著にみられる鰓のスリットで、哺乳類では発生の初期にはみられる。発生が進むと複雑な形態形成変化が起き、消失するが、外耳孔などは鰓裂の名残ということができる。

動物の初期発生において最初の形態形成運動として原腸陥入が起こる。原腸は消化管に分化する。この原腸陥入によって生じる「孔」を原口と呼ぶが、これが将来の動物の体の口になるのが前口動物であり、肛門になるのが後口動物である。半索動物、脊索動物は後口動物である。

ナマコの幼生のことをオーリクラリア幼生と呼ぶが、ウニのプルテウス幼生、ヒトデのビピンナリア幼生、ギボシムシのトルナリア幼生など、形態的共通性をもつ幼生全体をまとめてオーリクラリア(型)幼生と呼ぶ。今日ではディプルールラ型幼生という呼び方が広く使われている。この説はガルスタングが1928年に提唱した。その時代にはオーリクラリアという用語が使われたため(ディプリュールラ説ではなく)オーリクラリア説と呼ばれている。

Hox遺伝子はショウジョウバエで発見されたホメオティック遺伝子の相同遺伝子である。無脊椎動物のゲノムには基本的に1つのHoxクラスターがあり、脊椎動物のゲノムには4つのHoxクラスターがある。Hoxb1は4つあるクラスターのうちのBクラスターに属する1番目のHox遺伝子という意味である。

脊椎動物胚の後脳領域には頭尾軸にそった分節性(等間隔の仕切り)がみられる。この各分節をロンボメアと呼び、図14に示すように7番目までは形態的に明瞭に観察できる。

脊椎動物のゲノムにはふたつか3つのIsletが存在する。Isletは脳幹(延髄、橋、中脳)の運動性脳神経核に発現して、運動ニューロンの分化に関与している。

感桿型では光刺激はホスホリパーゼCとイノシトールリン酸経路を活性化させる。繊毛型ではホスホジエステラーゼによる環状GMPの代謝が関与している。

気嚢による換気システムは獣脚類と呼ばれる恐竜から鳥類に至る系統で段階的に進化していったと考えられる。

このような特異な形態は胚発生期には見られず、生後に発達する。その過程は頭骨に見られる「テレスコーピング現象」と並行して進む。

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31. Janvier, P. (2015) Facts and fancies about early fossil chordates and vertebrates. Nature, 520(7548), 483.

卵や精子、その元となる始原生殖細胞などを指し、子孫に遺伝情報が引き継がれる細胞そのものである。

卵や精子を作る減数分裂において、母由来の染色体と父由来の染色体が対合したときに、同じ領域がランダムに入れ替わる(組み換えられる)。つまり、我々の”配偶子の”染色体は、父親と母親由来の染色体がモザイク状に入り交じったものなのである(体細胞の染色体は免疫グロブリンなどの一部の領域を除いて基本的には均一なものと考えられている)。

 タンパク質にコードされる遺伝情報をもつ塩基配列。狭義にはゲノムDNAのうち、mRNAに転写され、タンパク質になる部分。近年は、タンパク質に翻訳されないものの、機能をもつtRNA、rRNAやノンコーディングRNAなども遺伝子の中に含められるようになっている。本書では、特に注意書きのない限り、タンパク質の元となるmRNAになる部分を遺伝子、と呼ぶ。

 では、その転写因子はなにが発現させるのか、というと、やはり別の転写因子である。卵の段階から、母親からmRNAとして最初期に発現する遺伝子は受け取っているので(母性RNA)、発生の最初期に使う転写因子を含む遺伝子群に関しては、転写の必要がないのである。その後、発生、分化が進んでいくと、それぞれの細胞集団に必要な転写因子が発現し、実際に機能をもつ遺伝子の転写を促す。

遺伝子は、核酸配列の連続した3塩基(コドンと呼ばれる)が1アミノ酸に対応し、順々にペプチド結合で繋げられてタンパク質となる。3つの塩基は43=64通りになるが、アミノ酸の数は20個、stopコドンを含めても21種類しかない。したがって、同じアミノ酸をコードするコドンは複数あり、たとえ変異が入ってもアミノ酸は変わらないことがある。これを同義置換と呼ぶ。一方で、変異によってコードするアミノ酸が変わってしまう置換を非同義置換と呼ぶ。

 ふたつの系統が祖先を共通にした最後の年代。本章では、近年の分岐年代推定を利用して作成された系統樹(当該文献[9]のFig.1を参照)からおよその年代を読み取り、記入している。

 アフリカツメガエルや、コイ科、サケ目など、進化上の随所でも全ゲノム重複が起こっている。

 最もよく知られている放射性同位元素による年代測定は、放射性炭素年代測定である。炭素12Cは紫外線や宇宙線によって、空気中では一部(1/1012)が常に14Cに変換されている。つまり、大気中ではいつの時代も1兆個の炭素原子のうちひとつが14C、残りが12Cという割合なのである(太陽活動の変化などにより若干のブレはある)。しかし一旦生物の体内に炭素が取り込まれ、そしてその生物が死に、地中に埋まってしまえば、もう宇宙線も紫外線も当たらないので、14Cへの変換は起こらない。ここで14Cは放射性同位元素であることに注目したい。14Cは約5730年で半分が崩壊し12Cに変換される。したがって、14Cの比率でいつその物質が地中に埋まったのかがわかるのである(文献7)。

 ただし、この放射性炭素年代測定では、14Cの検出限界の関係で、せいぜい6万年が限界である。それより昔は火山岩に含まれる物質の、やはり放射性崩壊の半減期を元に推定される。例えば、K-Ar法では、40Kが40Arに13億年の半減期で放射性崩壊することを利用する。溶岩からできたての火山岩か、あるいは何億年も経ったものかを調べることができる。40Kは岩石中に元々大量に存在するため、差異を検出することは不可能だが、40Ar(常温で気体)は大気中には微量しか含まれないため、岩石中に封入された気体の中の40Arの含有率を計測することにより、その岩石の古さがわかる。当然、40Arの率が高い物が古い岩石である。このように、複数の放射性元素の崩壊の半減期から地質年代というのは推定される。

 南米にもごく少数ながら有袋類が現存しており、これらのゲノム解析・比較から、オーストラリア・南米で現生の有袋類の共通祖先は、実は南米で生まれ、当時陸続きだった南極大陸を経て、オーストラリアにいたったと考えられている。

 世界で最も臭いといわれているシュールストレミングをネットで取り寄せて購入したとき、人々は逃げるどころか、わざわざ悶絶するために集まってきた。いい匂いの物を取り寄せても20人もの人数は集まるとは思えず、怖い物見たさという悪趣味な好奇心はたいしたものである。無論、取り寄せた私も例外ではない。ちなみに、シュールストレミングはひとかけらをクラッカーの上に載せるくらいの食べ方なら悪くない気もする。

このふたつの硬骨の作られ方について、第3章に詳述があるので参照。

 ガノイン鱗には我々の歯のエナメル質を作る遺伝子と相同な遺伝子が発現しており(文献18)、イメージとしては歯で身体を覆われているようなもので、当然極めて強固である。

 遺伝子にはその由来によっていくつかの異なる呼び名がある。オーソログとは、共通祖先がもつある遺伝子Aが、種分化によって2種以上の生物に受け継がれた時、受け継がれた遺伝子たちをオーソログと呼ぶ。パラログとは、遺伝子重複によって生じたふたつ以上の遺伝子を指す。最近では大野乾氏の功績をたたえ、ゲノム重複によって生じたパラログで現存するものを特にオオノログOhnologと呼ぶ。

 異化と同化……この2種類の化学反応によって生命活動は維持されている。異化は物質を分解してエネルギーを取り出す代謝経路、同化はエネルギーを使って必要な物質を体の中で作り出す代謝経路。

 アデノシン三リン酸の略。生体内のエネルギー通貨として、様々な化学反応に用いられている。

 組織中の核酸分子(ここでは特定の遺伝子から転写されたmRNAを指す)の分布を検出する手法。調べたい遺伝子の塩基配列を元に、そのmRNAに特異的に結合する分子を設計・合成することで特異度の高い検出が可能となっている。

 通常の生物の核ゲノムはそれぞれの両親に由来する染色体が2本1セット存在し(ディプロイド)、その染色体間で組み替えが起こるため遺伝的な由来を辿る作業がしばしば煩雑になる。しかしミトコンドリアは母親由来であるため(ハプロイド)、そのゲノムを利用することで比較的簡便に遺伝的な類縁関係を遡ることが可能となる。

 増幅断片長多型:制限酵素で切断したゲノムDNA断片をPCRにより増幅し、断片の長さの違いを網羅的に検出比較する方法。この断片長の違いを種間の類縁関係の推定に使用することが多い。

 sexual conflict。ある形質が片方の性にとっては有利だが、もう片方の性にとっては不利な場合にオスメス間で生じる対立。

 次世代シーケンサーを利用して、各組織に発現する遺伝子の種類や量を網羅的かつ定量的に推定する解析方法。

 真核生物のゲノムに散在する反復配列のうち、一度DNAからRNAに転写され、その後に逆転写酵素の働きでcDNAとなってからゲノム中の別の座位に組み込まれるものを指す。数多くのレトロポゾンが存在しており、例えばヒトゲノムは約40%がレトロポゾンによって占められている。

 太陽光には連続したことなる波長成分の光が含まれているが、その波長によってエネルギーが異なるため、水中に到達する波長成分の割合が深さによって異なることがわかっている。特に濁ったビクトリア湖のような水環境では浅場の方が短波長である青色光の成分が多く、深場では長波長の黄色〜赤色の成分が多いことがわかっている。

 タンパク質をコードするDNA配列上の塩基置換にはアミノ酸の置換を伴う非同義置換と、伴わない同義置換がある。一般に、同義置換は生体に影響を及ぼさないため中立であるが、非同義置換は生体にとって不利であることが多い。ただしタンパク質の機能変化が個体にとって有利な場合は非同義置換の割合が上昇することが知られており、それを正の自然選択と呼ぶ。同義置換と非同義置換の割合を統計学的に比較する方法がある。詳細については第7章およびコラム「適応進化に関わる候補遺伝子や候補領域を絞り込むアプローチ」を参照。

   発生初期の胚の一部の細胞群から作られ、生殖細胞を含む様々な組織に分化可能な性質(多能性)を有する細胞株。英語名(embryonic stem cells)の頭文字をとって、ES細胞と呼ばれることも多い。

 変異体を元になった親系統と交配すること。TILLING変異体に関しては変異以外の部分を親系統由来のゲノムに置換するために行う。1回の交配で全体の50%の領域が置換されるため、90%以上を置換するためには最低4回の、99%以上を置換するためには最低7回の戻し交配が必要である。

 タンパク質の二次構造のうち代表的なモチーフのひとつ。水素結合により形成されたらせん状の形である。

 Francis Crickが1958年に提唱した、遺伝情報がDNA→(転写)→mRNA→(翻訳)→タンパク質、という流れで伝わるという概念のこと。分子生物学の基本となる極めて重要な概念である。

 ヒメダカの原因遺伝子としてだけでなく、ヒトの先天性白皮症(つまりアルビノ)やホワイトタイガーの原因遺伝子としても知られる。水素イオンを運ぶトランスポーターをコードすることがわかっているが、その黒色素産生(メラニン合成)における機能は未解明な点が多い。

 相同組換えの鋳型となる外来DNA断片のこと。通常、導入したい配列(GFP遺伝子や特定の塩基置換など)の上流・下流それぞれに、導入したいゲノム領域と相同な配列(相同アームと呼ばれる)を持ったDNA断片である。

 RNAポリメラーゼが結合し、RNAを転写するのに必要最小限の遺伝子上流配列。通常、単独では下流の遺伝子は転写されないが、周辺に転写活性化領域(エンハンサーなど)が存在すると、その影響を受けて下流に存在する遺伝子が転写される。

 オオシモフリエダシャクの「工業暗化」の例を考えるとわかりやすい。これは、産業革命以降のイギリスで、暗化型と呼ばれるより黒い個体の割合が多くなったとされる例である。この蛾は、自然が多い地域では淡色型が目立ちにくく、鳥に捕食されづらかったが、すすで黒くなった木が多い工業地帯では、より黒い暗化型のほうが目立ちにくく、生き残りやすかった。この場合、仮に蛾の色をより黒くするアミノ酸変異が生じたとすると、そのアミノ酸変異は工業地帯で生存に有利で、固定されやすいだろう。ちなみに、近年、具体的にどんな遺伝的変異がこの工業暗化に関わっていたのかが詳細に解析されつつある。

 SWS = short wave sensitive opsin、つまり短波長の光に感受性をもつオプシンのサブタイプ。

 第4章にも記載されているように、深いところには波長の長い赤い光のみが届く傾向がある。つまり、水深の深いところに棲む集団では、青い光を感受するSWSの機能は重要ではなくなってしまう。

 Gタンパク質はGTP結合タンパク質ともよばれ、GTPと結合することで活性化される。GTPを加水分解する性質をもっており、結合しているGTPがGDPに加水分解されると自身が不活性化される。受容体からの信号を中継するものは三量体(α、β、γサブユニット)として存在している。

 神経伝達物質は、放出された後、即座に分解されなければ迅速な伝達を成し得ない。したがって、こういった分解酵素の存在は、ATPが実際にその部位で神経伝達物質として働いていることの傍証となる。

 セロトニンは生体内に存在するモノアミンの一種であり、神経系では神経伝達物質として機能する。生体内のセロトニンの大部分(〜95%)は腸管に存在しており、神経系に存在するものは割合としては小さい。神経系では中脳の縫線核という部位のニューロンで産生され、情動機能等に関係しており、セロトニンの再取り込み阻害剤には抗鬱薬の作用がある。味蕾に存在するセロトニンはそれらとは別の働きをもっていると考えられる。

 迷走神経には感覚性の線維と運動性の線維の両方が含まれており、ここでの迷走感覚神経とはその中の感覚性の要素のみを指す。

 神経細胞(ニューロン)で、突起状の構造(軸索や樹状突起)以外の、核の周辺部の構造を細胞体という。

 ある細胞が放出するリガンドが、その細胞自身の受容体に働くことを自己分泌という。近傍の細胞の場合は傍分泌と呼ぶ。近隣の同じ性質をもった細胞に作用する場合と、自分自身に働く場合を合わせて、自己・傍分泌と呼ぶことが多い。哺乳類のキスペプチンニューロンは、キスペプチン以外に放出するニューロキニンB、ダイノルフィンと呼ばれるペプチドが、キスペプチンニューロン自身に作用することで、アクセルとブレーキのように働き、そのタイムラグでキスペプチンの放出を間歇的に引き起こす。これが前述のGnRHパルスを生み出しているとされている。

 市場に出ている子持ち昆布の中には、ニシン以外の魚(タラの仲間など)を用いて加工されているものもある。また、本物のニシンの卵の場合も、自然に海藻に産みつけられた卵はもっとまばらなので、あのようにびっしりと卵が並んで食べ応えのある子持ち昆布は人為的に作られているようだ。

 タンパク質の一次構造を形成する際にアミノ酸間に形成されるペプチド結合ではなく、側鎖にあるアミノ基とカルボキシル基の間に形成されるペプチド結合のこと。

 2-⑴で述べたように魚類の卵膜の別名は“コリオン”である。将来コリオンになるタンパク質のため、“材料”の意味をもつ“-genin”をつけて、コリオジェニンと呼ばれている。

 遺伝子のうち、半数体ゲノムにつき1コピー(体細胞では2コピー)しかない遺伝子以外のもの。

 共通祖先から生じたいくつかの遺伝子のうち、異なる生物種において類似または相同な機能をもつ遺伝子同士のこと。たとえば、ヘモグロビン、ミオグロビン、サイトグロビンなどは共通祖先から由来するグロビン遺伝子ファミリーであり、ヒトもマウスもこれらの遺伝子をもつが、このうちヒトのヘモグロビン遺伝子とマウスのヘモグロビン遺伝子はオーソログの関係にあるといえる。

 遺伝子ファミリーの中には、突然変異などによって機能を失ってしまうものがある。例えば、変異によって翻訳の途中にストップコドンが入ったり、プロモーターの欠損による転写不能や、転写後のプロセッシングに関与する配列の欠如による成熟mRNAの形成不全などがある。このように、配列の痕跡は残っており、どの遺伝子ファミリーに属するかは明らかだが、機能的でない遺伝子を偽遺伝子(Pseudogene)という。

 魚類では毎年数百の新種記載があり、2018年現在において硬骨魚類の現生種の記載数は3万をこえる。

 栄養リボンという邦訳は、山岸宏『比較生殖学』(東海大学出版会、1995年)による。

 第8章で触れられているデンキウナギなどは、長い身体の大部分が発電器官になっており、肛門の位置が同じように著しく前方に位置する。

 酵素活性は同じであるが、アミノ酸配列の違いによって性質の異なる酵素タンパク質。タンパク質の電気泳動度の差異から、その支配遺伝子座における遺伝子型の差異を検出できる。

 生物相の分布境界線で、この線を挟んで動植物相が大きく変化する。この線の西側が東洋区、東側がオーストラリア区とされる。ウォーレスとウェーバーがそれぞれ異なる境界線を提唱した。スラウェシ島やティモール島は両者の境界線の間に位置する。

 個体や系統を識別する上で目印となるDNA配列のこと。系統間で塩基配列が異なる領域があれば、そこをDNAマーカーとして利用できる。

 ゲノムDNAを制限酵素で切断し、100〜200kbの断片を細菌人工染色体(BAC)ベクターに組み込んでクローン化したもの。大きな領域の物理地図や塩基配列決定に必要とされてきた。

 DNAマーカーや既知のクローンを用いて、配列が一部重なり合うクローンを同定する作業を繰り返し、目的遺伝子近傍のクローンコンティグを作成する方法。

 ミュラー管とは哺乳類の発生過程で将来卵管になる管で、オスではこのホルモンの働きによって退縮する。しかし、真骨魚類にミュラー管はなく、別の機能をもつと考えられる。

 メダカ博士こと山本時男博士は、1953年d-rR系統(オスが緋色、メスが白色の限定遺伝をもとに育成作出された系統、X染色体上に潜性(劣性)のr遺伝子、Y染色体状に顕性(優性)のR遺伝子をもつ、体色により遺伝的な性の判別が可能)の孵化直後から性ホルモンを経口投与して性の人為的転換に成功した。すなわちXrXrでもアンドロゲン投与によりオスとなり、正常メスXrXrと交配して、メスメダカばかりを生んだ。XrYRもエストロゲン投与によりメスに性転換し、正常のオスXrYRと交配した。性ホルモンによる性転換が多くの研究者から示されていたが、山本博士によって初めて遺伝的な性と性ホルモンによる性転換の関連が明らかにされた。コラム⑧も参照。

 コ・オプション(co-option)、遺伝子の使い回し。既存の遺伝子が新たな機能を担うようになること。

 非同義置換よりも大きな影響を与えるのがフレームシフトである。3の単位で塩基は読まれていくが、もし、3の倍数以外の挿入/欠失が起こった場合は、その後の配列が全て読み枠がズレてしまい、その挿入/欠失より後(C末端側)ではまったく異なるタンパク質ができてしまう。