昆虫は変温動物のため、気温の低い冬には活動しづらくなります。
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ガ類の中でもヤガ科の種類で、冬ヤガと呼ばれる種類です。
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この冬ヤガですが、具体的にはどのような活動を示すのでしょうか。
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「年1化で低温期に成虫が現れる種」のガが、冬ヤガとされます。
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さらに言えば、「おおよそ紅葉の時期から新芽が芽吹く頃」に活動するともされます。
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しかし、一体なぜ冬ヤガは、多くの昆虫、多くの動物が活動しにくい冬という低温期に、
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低温期に活動するといっても、実際は何度くらいで活動するのでしょうか。
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参考までに他の昆虫はどの程度、低い温度まで活動できるのか、下に書き出してみましょう。
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・クワガタムシ科は10℃以下で越冬する(休眠する)
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一方で冬ヤガは、糖蜜トラップを利用した調査によれば、
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いかに冬ヤガが低い気温でも活動することがわかりますね。
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さらに、林冠に雪の残るような寒い時期に活動するガ類も知られています。
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このような時期に羽化するものに、タニガワモクメキリガがいます。
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雪が舞う0〜2℃の気温時にもライトトラップに飛来することから、
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かなりの低温でも活動していることがうかがえる、とされます。
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ただ、前日より気温が上がった日と下がった日とでは、上がった日の方がよく飛来するようです。
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単純に気温だけで決まるのではなく、いくつかの要因によって活動する・しないが決まるとされています。
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このように、他の昆虫に比べても低い気温で活動している冬ヤガです。
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では、あえて低い気温に活動するのには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
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過酷とも言える環境下で活動する彼らは、どのようなメリット受け取っているのでしょうか?
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一つ目のメリットは、孵化を芽吹きに合わせられることです。
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芽吹き時の葉は柔らかいうえ、タンニンなどの摂食阻害物質が少ないことが知られています。
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二つ目のメリットは、成虫どうしの資源をめぐる競争が少ないことです。
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冬ヤガ成虫のほとんどの種が採餌をおこなうと考えられています。
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ただ、低温期にはエサ資源となる花や樹液の量は少なくなるはずです。
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それでも、寒冷地の厳冬期を除けば、晩秋から早春にかけて連続的に開花する植物があります。
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サザンカ、チャ、ビワ、ツバキ、フキノトウなどです。
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これら植物は、冬ヤガにとっては重要な蜜源となっているようです。
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三つ目のメリットは、捕食者からの回避があげられます。
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ガ類の捕食者には、どのようなものがあげられるでしょうか。
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クモ類、捕食性節足動物、コウモリ類、鳥類などが考えられます。
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このような捕食者は、低温期の活動には不向きとされます。
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例えば、クモ類や捕食性節足動物は、低温期にはほとんど活動しません。
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また、コウモリ類も活性が低くなることが知られています。
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このような理由に加え、冬ヤガは基本的に夜行性であることもあげられます。
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このようなメリットが、冬ヤガが低温期に活動することに繋がっているとされます。
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しかし、冬ヤガは冬という時期、夜行性という特徴のためか、
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生物学的な情報はまだ、十分には蓄積されていないようです。
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今後、さらに情報を蓄積することで、より説得力のある説が提唱されることが期待されています。
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今回の記事は、四方圭一郎「寒い季節に現れる「冬ヤガ」の仲間とその魅力」『チョウとガの不思議な世界(制作中)』をもとにしています。
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