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寒い冬を越すことは、多くの生き物にとってまさに生死をかけた戦いになっています。

もちろん、昆虫にとっても越冬は命がけのイベントといえるでしょう。

多くは卵やサナギという形で越冬するのが見られます。

ただ今回紹介するキタキチョウは、オスの中に、成虫で越冬するタイプがいます。
また一方で、越冬しないタイプのオスもいます。

越冬するタイプ、越冬しないタイプ、それぞれが自分の子孫を残すために、様々な工夫を凝らしていることが、調査によって明らかにされています。

今回はキタキチョウの越冬イベントと精子競争の関係について紹介したいと思います。
(今回の記事は現在制作中の『チョウとガの不思議な世界』「精子を託すオス」(小長谷達郎・基礎生物学研究所)をもとに紹介します)

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キタキチョウ
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キタキチョウのオスには、越冬するタイプとしないタイプがいると言いました。

もちろん、両方のタイプとも自らの子孫を残すためには、メスと交尾しなくてはなりません。

それぞれが交尾するタイミングは、越冬タイプでは3〜5月という春の時季に、非越冬タイプは晩秋である10〜11月に行います。

メスはその後、4月後半から産卵を始めます。

ここで、一つの疑問が生じます。

交尾によって、非越冬タイプのオスの精子を晩秋に受け取ったメスは、その精子を保存しつつ、過酷な冬を乗り越えなければなりません。

メスは精子を保存するのに、少なからずコストを払っています。

そのコストを引き受けても、越冬前に精子を受け取っていることは、何か理由があるのでしょうか。

かたや越冬タイプのオスの精子を春に受け取ったメスは、間もなく産卵ができます。
したがって、精子保存のコストはほとんどないはずです。

なぜ、冬を越す前に精子を受け取っているのでしょうか。

この疑問に対して、二つの仮説が従来、検討されてきました。

1)保険説:越冬後に交尾できない可能性があるので、越冬前に精子を受け取っておく
2)栄養説:交尾の際に精包が獲得でき、越冬に向けて栄養確保できる

検証の結果、2)栄養説が妥当とされています。

精包には越冬に利用できる栄養が含まれているので、メスの越冬成功を助け、ひいては子孫を残すチャンスが増えることにつながります。

(ちなみに、精包を持つメスと持たないメスで、越冬生存できる確率を検証した結果、精包を持つ方が倍近く生存率が高かったとされています)

このように、越冬前に精子+精包を受け取る種は、越冬生存率が低い種が多いことが知られています。

例えば、渡りを行い大集団で越冬するのが有名なオオカバマダラ(越冬生存率25%)、日本産ウラギンシギミ(越冬生存率20%以下)がいます。

これらの種は、いずれも越冬前に交尾をします。

越冬するのにリスクが低く、越冬生存率が高い種にとっては、わざわざ越冬前に精包を受け取る必要はないかもしれません。

逆にキタキチョウのように、越冬にリスクがあり、越冬生存率が低い種にとっては、精包はオスからのありがたい贈り物になっているといえるようです。

命をかけた越冬前に、保存にコストのかかる精子を受け取るメス。

自らの命は消える前に、来春の我が子の誕生のために精子を託すオス。

自らと子孫のために様々なメリットを受け、コストを支払いながら、生存戦略が成り立っているようです。

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『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』
(前藤薫編/324ページ/2800円+税)
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なお、ハチたちの綺麗な写真がたくさんありますが、
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