前回までのメルマガでは、
寄生バチの巧みな寄生方法を紹介しました。

今回は昆虫からやや離れ、鳥にスポットライトを当て、寄生という現象を見てみたいと思います。

おはようございます。
一色出版の岩井峰人から、
メルマガをお届けしています(年中無休、毎週月曜の更新)。



今回は、『遺伝子から解き明かす鳥の不思議な世界』(上田恵介編)
の中から紹介したいと思います。
juuiti
(上)仮親に対して翼の裏側を誇示するジュウイチの雛。
(下)ジュウイチの雛の口内と翼の裏側。
右下囲いは宿主であるルリビタキの雛の口内の紫外線写真。
矢印はジュウイチおよびルリビタキの雛の口。
Martin Stevens撮影.

上の2点は寄生する鳥と寄生される鳥(宿主)です。
ジュウイチ(カッコウの仲間)のヒナが、
ルリビタキの巣に寄生している様子を示しています。

いわゆる托卵ですね。

寄生したジュウイチのヒナはルリビタキの親鳥(仮親)に餌をもらい、
育ててもらいます。
ruribitaki
雌雄で外見が異なる性的二型に加えて、雄内で年齢による二型が存在するルリビタキ。高齢な雄は青色(上)、若い雄はオリーブ褐色(中)、雌はオリーブ褐色(下)。後者ふたつの外観は見分けがつかないほど似ている。



その時、この仮親に自分が子どもと認識してもらうように、
ある工夫をしています。

ルリビタキの本当の子どもと同様に、
体の特定の部分が紫外線に特に強く反射するようになっています。

つまり翼の裏側と口内が強く反射するようになっていて、
盛んにそこをアピールしているようです。

これによって餌を仮親からもらいやすくなってい流とされます。

また、健康なヒナほど紫外線の反射が強いこともわかっていて、
餌がもらいやすくなっているようです。
(以上、「1章 鳥がみている色彩の世界」田中啓太より)

また別の鳥の托卵も見てみましょう。

「EPC」という言葉を知っていますか。
婚外交尾と呼ばれるもので、別のつがいのオスと交尾することです。

鳥の世界では少なからず、メスが間男と交尾し卵を産み、
夫との卵と一緒に育てることがあるようです。

例えばアオガラでもこの現象が見られます。
面白いのは、夫は自分の巣を羽で装飾しますが、
これがいじられた形跡があると、
間男の存在を疑い子どもに給餌する回数が著しく減ることです。
アオガラ
では、そもそもなぜ、メスは婚外交尾するのでしょうか。

いくつかの仮説がありますが、
最も検証されてきた説をみてみましょう。

メスはモテるオスとの子どもを産めば、
自分の子どももモテる可能性が高くなり、
より多くの子どもを残せるようになるために、
婚外交尾するというものです。

例えばツバメのオスは、尾羽が長いほどメスを惹きつける傾向があります。
そして間男になるオスは、尾羽が長い傾向にあることが検証されています。
tubame
また、別の仮説を見てみましょう
夫が自分の血縁者であった場合、子どもの生存率は低くなります。
このリスクヘッジのため、非血縁者である間男を父親として選ぶという仮説もあります。

さらに別の仮説によれば、キンカチョウによる検証では、
婚外交尾する個体は遺伝的に決まっていることが示されています。

つまり、「EPC をするオスの娘はEPC をするようになる傾向をもつ」(「5章 EPC 今昔物語」三上かつら)とされます。
このような遺伝的な相関性の検証は、「パーソナリティ」というテーマとして近年、
鳥類研究では注目されています。



今回は「寄生」という言葉を昆虫に限らず、
広く捉えて鳥の生態を紹介しました。

動物たちが、いかにコストをかけず、いかに確実に、いかに多くの子どもを残そうとしているか、
垣間見れたのではないでしょうか。



『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』装丁が完成しました。
丸山宗利博士による推薦の言葉も帯に入れ、印刷手配できました。

丸山宗利氏 推薦!

「ハチというと人を刺す昆虫という印象を持つ人が多いが、大半は他の生物に寄生し、人に害を与えることはない。世界では15万種以上のハチが知られているが、その背景には寄生相手との駆け引きで進化した、驚くほどの生活様式の多様性がある。本書では日本の気鋭のハチ学者たちが、世にも面白いハチの多様性を余すところなく紹介している。」
cover_hachi
【予約注文、受付はじめました】

『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』
(前藤薫編/324ページ/2800円+税)

完成が見えてきまして、予約注文の受付をはじめました。
https://ws.formzu.net/dist/S93315378/

上記のリンクから、ご希望のタイトルの部数と発送先を入力し、
送信ください。
全国一律、送料無料で、完成しだい、お送りします。

なお、ハチたちの綺麗な写真が手元にたくさんありますが、
紙の本ではモノクロで掲載になると思います。

巻末のパスワードをつかったオンライン版では、
綺麗なカラー写真、動画も視聴できますので、
本を買った際には、オンライン版を利用することを、
お勧めします。

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一色出版では、動画を含めたオンライン版で、
内容すべてが読める本を刊行しています。

文章だけでは伝わらない臨場感を、動画で視聴できます。

また、本では白黒で小さくなった写真も、
カラーぼ高解像写真で見られます。

お手元のスマホやPCで、
いつでも生物の不思議さを体験してみてください。

===編集ちゅう===
・「寄生バチと狩りバチの不思議な世界」
表紙をはじめ、装丁がほぼ完成。
しかし、最終段階で相当修正がでてきましたが。

・「ヒトゲノム事典」
要匡先生による「ケラチン」「コラーゲン」など入稿。
そろそろ編集委員による執筆原稿も必要に。

・「チョウとガの不思議な世界」
初校段階のままですが、相互査読に入るよう推進中。
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