幼虫が葉っぱにもぐり、葉を食して成長する昆虫は「潜葉性」昆虫と呼ばれます。

もっと愛きょうのある呼び名としては、「絵かき虫」というものもあります。

「絵かき」、つまり
「昆虫が絵をかく」とは、どのようなことを指しているのでしょうか。



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絵かき虫とは、主に幼虫が葉に潜る習性がある昆虫を指しています。

このような習性を持つ昆虫には、以下のような種類があります。
チョウ目 ハエ目 コウチュウ目 ハチ目

ではこれらの昆虫が、どのように絵をかくのでしょうか。

もちろん画材を使うわけではないようです。

幼虫は葉に潜り、それぞれの種に特有の進路で食べ進みます。

幼虫の食べたあとが模様のようになり、これを「絵」と見立てているわけですね。
なお、幼虫の食べたあとは「潜孔」と呼ばれます。

この潜孔は種類によって、オリジナルの模様を描くことが指摘されています。

・どのような形に食べ進むか
・葉のどのような組織を食べるか
・フンを潜孔の中に残すか

といったことが大きな原因となって、さまざまな絵が描かれるようです。

ではそもそも、絵かき虫はなぜ、葉に潜り、潜孔を残すのでしょうか。

これに対してはいくつかの理由が指摘されており、
まず一つには、葉に含まれる防御物質を利用するということがあげられています。

もう一つに、寄生バチからの寄生攻撃を避けるということが指摘されます。

寄生バチはチョウ目などの幼虫の最たる天敵と言えるかもしれません。

この寄生バチの攻撃を回避することは、大きな適応的な意義があると指摘されています。

具体的には、潜孔の形を複雑に曲がりくねったものにしたり、急に角度をかえることがあげられます。

なにせ寄生バチは視覚を使って獲物を探すことが知られています。

この寄生バチの習性を利用し、潜孔をたどって寄生相手を探す寄生バチを惑わすという対抗策と指摘されています。

このような発達した対抗策をも持つ葉もぐりという習性は、進化的にわりと最近に獲得された習性と思われるかもしれません。

しかし、起源はとても古いもののようです。

というのも、チョウ目で原始的な種類とされるものにコバネガがいます。

コバネガは苔を食べ、苔類食という習性を持ちます。

このコバネガのような祖先的な種類にも、葉もぐりが見られます。

また、9700万年前の地層からは、モグリチビガの潜孔の化石が見つかったという報告があります。

ジュラ紀のこの頃は、裸子植物が生い茂っていた時期ですね。

葉もぐりの習性は、裸子植物の時期にすでに現れていたようです。

その後、被子植物の出現とともに多様化したと指摘されています。

まとめますと、
・絵かき虫という葉にもぐる昆虫がいる
・種類によっていろいろな葉の食べ方がある
・潜孔を利用して寄生バチの攻撃を避ける効果がある
・裸子植物全盛期には既に現れ、被子植物の出現とともに多様化した

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今回の内容は、広瀬俊哉『絵かき虫の生物学』(H23、北隆館をもとにしています。

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