完全変態昆虫は、蛹(さなぎ)という独特の形態を経て成虫になりますね。
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幼虫は脱皮を繰り返し、ある段階になると正しくきちんと蛹になります。
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脱皮したり蛹になるには、エクソダイソン、別名「脱皮ホルモン」というホルモンの活躍があります。
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しかし、脱皮を繰り返すなかで、どうして蛹になるタイミングがわかるのでしょうか。
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脱皮を繰り返し続けてしまったり、蛹をとばして成虫になってしまわないのは、なぜでしょうか。
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蛹になるは、エクソダイソンの活躍とそれをおさえる幼若ホルモンのはたらきが大切になります。
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この事態を、カイコを通して、より細かくみてみましょう。
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カイコ幼虫が終齢になると、幼若ホルモンが特別なはたらきをします。
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幼若ホルモンからは、Kr-h1というタンパク質が作られます。
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このKr-h1タンパク質が、正しく蛹になるためのキープレーヤーと言ってもいいようです。
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蛹になるとき、Kr-h1タンパク質は、成虫化をうながす遺伝子、成虫化遺伝子に結合します。
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結合された成虫化遺伝子は、そのはたらきをおさえられることになります。
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この結果、カイコ幼虫はいきなり成虫にならずに、正しく蛹へと変態するというわけですね。
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では実験的に、幼若ホルモンのはたらきをおさえてみます。
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すると、Kr-h1タンパク質が作られず、中途半端に成虫化がすすんでしまいます。
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その結果、中途半端に成虫化した蛹になることが報告されています。
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つまり、幼若ホルモンによるコントロールがあるおかげで、正しく幼虫から蛹へと成長できるようです。
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しかし幼若ホルモンがKr-h1タンパク質を作ることは、多くの昆虫で観察されています。
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そのため、カイコ以外でも同じ仕組みで成虫化がすすむと考えられるようです。
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この事実がわかったことで、農業などへの利用も期待されています。
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Kr-h1タンパク質は多くの昆虫で見つかりましたが、他の動物には存在しません。
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そこで、Kr-h1タンパク質を邪魔する薬剤ができれば、農業害虫の撃退に効果がありとされています。
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・Kr-h1タンパク質は成虫化遺伝子に結合してはたらきをおさえる
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今回の内容は、比留間潔「栄養と幼若ホルモンによる成虫原基の発育調節」(日本応用動物昆虫学会誌、62巻3号)をもとにしています。
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