前回はクマバチが、お腹にダニを住まわせている話題に触れました。

ダニは自分より相当に大きな相手に寄生します。

クマバチは自身のお腹にポケット(アカリナリウム)を用意して、ダニを迎え入れていました。

寄生とはいえ、何か平和な印象を受けませんか。

しかし、多くの寄生の場合、決して平和な共生とはいかないかもしれません。

寄生相手から一方的にメリットを受け取ろうとする場合、特にそう言えるようです。

その中でも、自分より強い生き物に寄生する、勇ましい昆虫がいます。

彼らはその体に、ある変わった特徴をもちます。

おはようございます。
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クモは多くの昆虫にとって脅威となっていますね。

普段、クモの巣を見かけるとわかるように、
クモは自身より大きな昆虫さえとらえていることがあります。

そのような、どう猛な生き物をとらえようというハチがいます。

寄生バチは土の中、木の中、また海の上にただよう昆虫まで寄生相手とします。
ですから、どう猛な生き物にまで寄生しても不思議はないかもしれません。

クモに挑むこの勇ましいハチは、クモヒメバチというハチです。

このハチグループは、クモを寄生相手として進化してきました。

クモヒメバチの身体的な特徴に、そのことが現れています。
Kumabachi1
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網の枠糸を伝ってオオヒメグモに接近するマダラコブクモヒメバチ(Zatypota albicoxa)の雌成虫。(『寄生バチと狩バチの不思議な世界』「第5章 クモヒメバチ」より)
まず脚の先端の形を見てみましょう。

多くのハチはカギの形をしているので、爪というように説明されます。
特に前脚は1本の爪になっていて、触角の清掃などに使用されるようです。

ではクモヒメバチではどうでしょうか。

そこにいわゆる爪は見られません。
代わりに、拳のようにふくらんだ形になっています。

これでは葉っぱや枝など、さまざまなものに体を安定させるのには不便のように思えます。
なぜ、このような不便な形になったのでしょうか。

この拳のような形には理由があります。
それはクモをとらえるタイミングに関係しているようです。

クモヒメバチはクモに接近するとき、糸をつたって行きます。

この時、もし脚がカギのようであったら、どうでしょうか。
相当に不便なことが想像できますね。
しかし拳のような形のおかげで、クモの巣の糸を歩くとき、安定して渡りやすくなっています。

クモをとらえるように進化したことがわかる事例は、まだあります。

産卵管を見てみましょう。

いま産卵管とはいったものの、クモヒメバチはこれを産卵のために使うわけではありません。
何に使うかといえば、クモに突き刺す針として使います。

1)クモに針を突き刺し
2)神経毒を注入し
3)麻酔をかけ
4)卵を体表に産みつける

これが、クモヒメバチのハンティングプランです。

クモを動けないようにし、その後体表に卵を産みつけるというプランですね。

これを実行するためには、針がクモに刺さりやすくなっている必要があります。

そのため、産卵管は先端にいくほど細くなるという特徴をもちます。

では他のハチの産卵管はどうなっているのでしょうか。

寄生バチのなかには、寄生相手の繭(まゆ)や植物の茎に突き刺すグループがいます。

その産卵管は、ノコギリのような歯を持っています。

これは硬いものに突き刺しやすいように進化したためかもしれません。

また産卵管を文字通り、卵を産むために使うハチもいます。
彼らは卵を先端まで通す必要があります。
そのため、全体がほとんど同じ太さになっています。

では、この産卵管を使ってクモヒメバチは、どのようにクモに麻酔をかけ、捕食するのでしょうか。
次回はこれに触れてみたいと思います。

まとめますと、
・クモヒメバチは膨らんだ脚の先端をもつ
・膨らんだ脚先端のおかげでクモの巣を移動しやすくなっている
・クモヒメバチの産卵管はクモに刺さりやすいように進化した

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今回の内容は以下のものをもとにしています。
松本吏樹郎・高須賀圭三「第5章 クモヒメバチ」『寄生バチと狩バチの不思議な世界』(2020、一色出版)
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