普通、ハチといえば花々に飛来して、蜜などエサ資源を集めていることを思い浮かべると思います。
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ただ、ハチといっても寄生バチについては、変わったエサ資源の求め方をしていて、多くの方法が進化してきたようです。
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なかでもヒメバチ科という、寄生バチのなかで最も豊富な種数を誇るハチは、それだけ多くの方法を持つように進化しました。
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寄生相手としては、完全変態昆虫のほぼ全てに寄生することが知られています。
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完全変態昆虫と一言でいいましたが、昆虫網の中でも種数が多い上位4目である、鱗翅目、膜翅目、双翅目、鞘翅目を含みます。
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その上、クモ類にまで寄生しますので、寄生相手の豊富さに比例して、多くの寄生方法が生まれたことがわかるかもしれません。
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この多様化した寄生の方法の中でも、特に変わったものに、「水中に潜る」という寄生方法があげられます。
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また、寄生したはいいけど、成長する間の酸素の確保、また羽化したあとの水中からの浮上はどのようにされているのでしょうか?
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川の中の石の上に、トビケラの巣ができていることがあります。
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このような巣を作るトビケラの一種に、ニンギョウトビケラが知られています。
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ニンギョウトビケラは全国にみられる普通種で、成虫の体長は10 mmほど。
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そのニンギョウトビケラの幼虫は巣のなかで蛹になります。
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その蛹に寄生するのが、ヒメバチ科のミズバチ(Agriotypus gracilis)です。
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ミズバチの成虫は通常、陸で生活していて、水中に常にいるわけではないようです。
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では、どのように水中にいるニンギョウトビケラに、自らの卵を生みつけるのでしょうか?
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成虫となったミズバチのメスは、寄生相手を探す際に、まず石や水草をつたって水中に入ります。
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その際に特徴的なことは、触覚を背中に這わせているという点です。
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これは寄生相手の探索に、触覚を用いていない、つまり匂いを頼りにしていないことを意味するようです。
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では何を頼りにしているかというと、視覚があげられます。
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水中での探索なので、匂いが頼りにならないのは当然かもしれません。
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また、視覚を頼りにした寄生相手の探索という方法は、水中に限ったことではありません。
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水中に潜る際にも、石に付着するニンギョウトビケラの巣を空中から視覚を頼りに探索しています。
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巣が見つかると、前述のように水草などをつたって水中を歩いていきます。
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巣にたどり着いたミズバチは、巣のなかに産卵管を差し込み、なかに蛹がいれば産卵を始めます。
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その後、孵化したミズバチ幼虫はその年の夏に成熟幼虫になります。
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しかし、巣は水中にあるわけですから、その間、水中で酸素を確保しなければなりません。
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ミズバチ幼虫は巣のなかで、どのように酸素を得ているのでしょうか?
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答えは、ニンギョウトビケラの巣から飛び出てている、平べったい長いヒモにあるようです。
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このヒモの先をたどっていくと、ミズバチの繭に繋がっているのがわかります。
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このヒモは繭の一部となっていて、ヒモを通じて水中の酸素を得て、同時に二酸化炭素を放出しているとされます。
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こうしてガス交換を行いつつ、羽化するまで安全に成長できますが、羽化した後にも難関が待っています。
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羽化したてのミズバチは水中から空中へ脱出する必要があります。
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水中からどのように、水面までたどり着くのでしょうか?
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産卵の際、ミズバチ成虫のメスは、石や水草をつたって水中に入ってきました。
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羽化したミズバチが脱出するときは、それとは異なる方法で水面までいくようです。
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水中で羽化したミズバチ成虫は、その後、泡に包まれてそのまま浮かび上がり、水面に浮上するとされます。
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体の表面に密に生えた毛が、泡を身にまとうのに役立っているようです。
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今回の内容は、小西和彦「アリとトビケラ」『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』をもとにしています。
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