世界のいたるところに生息している昆虫が、なぜ海の中にいないのでしょう?

海に限らなければ、淡水の水中でくらす昆虫はよく知られています。
タガメ、ゲンゴロウなどが有名でしょう。

ではなぜ、海中にくらす昆虫はほぼいないのでしょうか?

おはようございます。
一色出版の岩井峰人です。
(毎週月曜配信)
※今回のメルマガはリクエストをもとに書いています。

海でくらす昆虫がほぼいない理由として、呼吸の問題が指摘されます。

まず、淡水性の昆虫の呼吸方法を見てみましょう。

ゲンゴロウはよく水面へ浮上しています。
これによって息継ぎし、呼吸を行います。

タガメなどは,尻から伸びる呼吸管によって呼吸を行います。

ただ、このような方法であれば、海水・淡水、いずれでも呼吸ができそうではないでしょうか?
水面より上に呼吸するための器官を出せばいいのですから。

ではなぜ、そのような呼吸をする昆虫が海にいないのでしょうか。

その理由は、海の特徴が原因と指摘されています。

海には干満の差や波が存在しますね。

海のこうした特徴が安定した呼吸を妨げると指摘されます。


上下に波打つ水面では、確かに呼吸は難しそうですね。

他の理由には、塩分による浸透圧などいくつか挙げられそうですが、呼吸にかぎって言えば、このような事情があるようです。

ではなぜ、そもそも海中でもくらせるように進化しなかったのでしょうか。

昆虫の祖先に節足動物がいます。
節足動物は海で出現しました。

そのあと、さまざまなグループに分かれて進化します。

そのうちの一部のグループは陸上に進出しました。
そのグループは陸上生活に適応していき、昆虫として多様化したとされます。

ただ反対に、陸上に進出せず、そのまま海に残って多様化したグループもいます。
例えば昆虫の近縁なグループの甲殻類(こうかくるい)。
エビ、カニ、ミジンコなどがいるグループですね。

このグループは昆虫と同じ、節足動物を祖先に持ちます。
ただ、昆虫のように陸上進出はせず、主に海で多様化しました。

節足動物からは、陸上に進出し多様化したもの、海中に残り多様化したもの、それぞれの生存条件に応じて発展してきたと言えそうです。

まとめますと、
・呼吸の問題が海にくらす昆虫がいない理由の一つ
・昆虫は節足動物が陸上進出して多様化したグループ
・昆虫と祖先を同じだが海中に残ったものに甲殻類がある
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今回の内容は以下のものをもとにしています。
・大場裕一他編『遺伝子から解き明かす不思議な昆虫の世界』(悠書館)
盛口満「「海の昆虫」はなぜ数が少ないのか」
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