サイトカイニンは細胞分裂を助け、成長をうながす植物ホルモンですね。 |
ではなぜ、虫こぶはこの小さなお助けマン、サイトカイニンを多く含んでいるのでしょうか。
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虫こぶとは、植物の一部分に起きた異常な細胞分裂の結果とされます。
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その虫こぶの中には、ハチの幼虫が入っているのが見かけられます。 |
ハチ幼虫は内側から虫こぶを食べ、成長して行きます。
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では、虫こぶの中の幼虫が食べ続けると、どうなるのでしょうか? |
幼虫が食べてもどんどん補充されるように、細胞分裂がきちんと続けて起こります。
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ここで活躍するのが、小さなお助けマン、サイトカイニンです。 |
この小さなお助けマンがアミノ酸などの栄養を虫こぶに流れるよう、助けてくれています。 |
というのも、虫こぶのある場所には、特にこの小さなお助けマンがたくさんいるためです。
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ではなぜ虫こぶだけに、このお助けマンがたくさんいるのでしょうか? |
植物の他のところから、呼び寄せられているのでしょうか?
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このハバチ幼虫の体内の成分を調べた報告があります。
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すると、このハバチ幼虫の体内からは、通常の植物よりも100〜1000倍もの高い濃度のサイトカイニンが見つかりました。
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つまり、サイトカイニンは植物の他の所から呼び寄せられているわけではないようです。
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サイトカイニンという植物ホルモンは、本来、植物の中で生まれます。 |
ところがこの調査によって、ハバチ幼虫自身の中で生まれていることがわかったのです。
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昆虫では、産卵または摂食の時、化学物質を植物に与え、植物に異常な細胞分裂、成長をうながすことがあります。
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ここではこのハバチ幼虫が食事の際、自分の体内で生まれたサイトカイニンを植物に分泌し、この小さなお助けマンの活躍で、虫こぶの成長をうながしていたようです。
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ではこのハバチ幼虫が植物を食べるたびに、その部分が全部、異常な細胞成長がうながされるのでしょうか? |
それに、幼虫が成長し、虫こぶから出ていった後も、サイトカイニンは生まれ続けているのでしょうか?
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10月頃、成長したハバチ幼虫は虫こぶから脱出します。 |
この時のハバチを調べたところ、サイトカイニンはほぼ、見つからなかったようです。
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というのは、サイトカイニンがもう不要になったからと推測されています。 |
虫こぶからすでに脱出してしまっているため、虫こぶの成長をうながす必要がなくなった、ということですね。
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・ハチ幼虫が植物ホルモンであるサイトカイニンを作っている |
・虫こぶから脱出したハチ幼虫はサイトカイニンを作らなくなる |
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