瀬戸内海に伯方島(はかたじま)という小さな島があります。

愛媛県今治市の島です。

この島にいるある昆虫は、メスしかいないようです。

なぜ、このような事態になったのでしょうか。
また、どのように子をつくっているのでしょうか?

おはようございます。
一色出版の岩井峰人です。
(毎週月曜配信)

ヒゲコメツキ(Pectocera fortunei)はその名の通り、立派なヒゲが特徴になっています。

このヒゲを持つのはオスだけ。

ヒゲコメツキのオスを一目すれば、頭部から突き出た大きな櫛(くし)のようなヒゲがすぐに気づきます。

このヒゲコメツキは北海道から四国、九州に至るまで各地に見られるようです。

ただ伯方島のヒゲコメツキには特殊な事情があります。

その事情とは、この島のヒゲコメツキは全てメス。

また、九州の対馬のヒゲコメツキも調べられ、結果はこちらも全てメス。

さらに、韓国のヒゲコメツキも調べられました。

調べられた限り、韓国のヒゲコメツキも全てメス。

もちろんヒゲコメツキにはオスもいます。

ではなぜ、このようなメスばかりの地域があるのでしょうか。

寄生した相手の生殖を操作することで有名な微生物にボルバキアがいます。

ボルバキアよる「オス殺し」という話は有名ですね。

アワノメイガなどに寄生するボルバキアは、生殖を操作して次世代をメスだけにしてしまいます。

ただ、今回のヒゲコメツキ場合は、これとは異なるようです。

メスばかりが生まれる特殊な個体群が韓国で現れた。
この個体群が日本に移ってくると、元々いた日本在来の個体群を駆逐して、特殊な個体群が取って代わった。

このようなシナリオが考えられるようです。

この特殊な個体群はメスがメスだけを生むという特殊な生殖の仕組みです。

単為生殖と呼ばれる仕組みですね。

この特殊な生殖の仕組みを持つ個体群が、在来の個体群を駆逐したと考えられるようです。

まとめますと、
・伯方島のヒゲコメツキはメスだけ。
・対馬や韓国のヒゲコメツキもメスだけ。
・単為生殖という特殊な生殖の仕組みを持つ。
・韓国で特殊な個体群が現れ伯方島などに移ってきたと考えられる。
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今回の内容は以下のものをもとにしています。
・大場裕一編『昆虫たちの不思議な性の世界』2018年

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