多くの昆虫には、多くの暮らし方があります。

その多様化した暮らしの中でも、わずか0.015%の昆虫にだけ見られるスタイルがあります。

それはオスによる卵の世話。

「父育」といわれるスタイルです。

おはようございます。
一色出版の岩井峰人です。
(毎週月曜配信)

卵の世話という希少なスタイルは全て、カメムシ目(半翅目)にみられます。

カメムシ目の中でも、タガメ、コオイムシをはじめとするコオイムシ科に90%ほどが含まれます。

では、このような卵の世話という希少なスタイルは、どのような進化を経て成立したのでしょうか。
また、具体的に、卵の世話とはどのようなことをするのでしょうか。

カメムシ目の多くの産卵場所は、幼虫がエサとする草です。

産卵後、親は卵の世話をすることなく放置します。

しかし、以下のような行動がみられます。
これらは、卵の世話というスタイルが進化する前段階となったとされます。

・ツノカメムシは産卵後に卵を守るような行動をとる
・ヘリカメムシは一頭のオスが複数のメスを守るというハーレムを形成する

中でもヘリカメムシの一種Phyllomorpha laciniataは、植物の葉や茎など静的な場所に卵を産むよりも、
「移動する巣」であるオス背中に産んだ方が、孵化率が高くなるとされます。

これらの行動が形を変え、偶然にも卵を守るような行動になった可能性が指摘されます。

卵の保護という行動が、その時の暮らしによく適応し、ひいては習性となっていったのではとされます。

まとめますと、
・ごくわずかな昆虫にのみ卵の世話がみられる
・ツノカメムシ、ヘリカメムシに卵の世話の前段階(前適応)がみられる
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今回の内容は以下のものをもとにしています。
・大場裕一編『昆虫たちの不思議な性の世界』2018年、一色出版
・上田恵介編『遺伝子から解き明かす鳥の不思議な世界』2019年、一色出版

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