多くの昆虫には、他の生き物と共生することが知られています。

なかでもハチでは、自分の体の中に微生物を住まわせているものもいます。

たとえば、キバチには「担子菌」という菌が共生しています。

担子菌とは平たくいえば、キノコ。

この菌を自らの体内で、いわば飼っている状態です。

なぜ、わざわざキノコを体内で飼うのでしょうか。

自分の限られた体の一部を与えてまで、一緒に生活するメリットがあるのでしょうか。

おはようございます。
一色出版の岩井峰人です。
(毎週月曜配信)

母となる雌キバチは、木に産卵管を刺して、卵を中に生みつけます。

のちに、ふ化した幼虫は、この木の中で、木をエサとして食べて成長します。

ただ、ここで問題があります。

問題はエサである木。

木には、セルロースやリグニンといった、分解されにくい物質を多く含まれます。

このままの状態では、幼虫が消化できず、栄養源として利用できません。

ここで、母キバチは生まれてくる子のために、二つの細工をしておきます。

一つは、産卵と同時に、木を弱らせる働きを持つ毒液(ミューカス)を木に送り込みます。

もう一つは、担子菌を、やはり木に送り込みます。

この菌が木質を分解、液状化してくれます。
これにより、キバチ幼虫は栄養源として摂取できるようになります。

ただこの端子菌、母キバチはどこから持ってくるのでしょうか。

産卵の都度、探して集めてくるのは大変そうですね。

実は、産卵時に打ち込む担子菌は、雌のお腹に住んでいます。
お腹の中に、マイカンギア(mycangia、菌嚢)と呼ばれる袋の中にいます。

いざ産卵!というときに同時に送りこまれる仕組みですね。

この担子菌がないと、幼虫は木を食事することができません。

これならわざわざ体内で飼うのも納得です。

キバチ幼虫は菌がいないと木を食べられません。
また菌はキバチが自分を運んで新しい木、つまり宿主に植え付けてくれます。
共生関係の典型が見られます。

まとめますと、
・母キバチはお腹の中に担子菌を住まわせている
・母キバチは産卵の時に毒液と担子菌を同時に送り込む
・担子菌が木質を分解するおかげで幼虫は食事できる
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今回の内容は以下のものをもとにしています。
・前藤薫編著『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』2020年、一色出版

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