まだまだ酷暑が続いていますね。

しかし、砂漠の暑さに比較すれば、日本の暑さも涼しく感じられるかもしれません。
気休めですが。

もしその砂漠に何も持たずに行ったとしたら、水分補給できずどれだけ不安になるでしょう。

このような環境で暮らす昆虫は、どのように水分補給するのでしょうか。

おはようございます。
一色出版の岩井峰人から配信しています。
(毎週月曜配信)

「世界最古の砂漠」と聞いて、どこを思い浮かべますか。

サハラ砂漠が有名ですが、ここではないようです。

約8000万年前に形成されたナミブ砂漠、ここが世界最古の砂漠とされます。

ナミブ砂漠は南アフリカ西部に位置し、アンゴラと南アフリカにわたります。
年間降雨量120mm。
東京は1800mmほどですので、東京の10%以下の降雨量です。
その過酷な環境が想像できます。

このようなひどく乾燥した地域に暮らす昆虫など、いるのでしょうか。

ゴミムシダマシ類の一種に「キリアツメ」(Stenocara phalangium)と呼ばれる昆虫がいます。
このキリアツメは、ナミブ砂漠に暮らす昆虫です。

ではこの乾燥した環境の中、どのように水分補給するのでしょうか。

アフリカ大陸西岸にはベンゲラ海流、また西風海流といった海流があります。
この海中がナミブ砂漠に大きな影響を与えます。
その影響によって濃霧が発生します。

濃霧によって湿度の高くなった状態を利用し、キリアツメは水分補給します。

ただ、どのように霧の状態から水分を得るのかが問題です。

人間でも、ミストサウナに入っていて、ただ口を開けていても水分補給はできません。
キリアツメも、ただ口を開いて待っているだけではないはずです。

キリアツメが水分補給する様子を見てみましょう。

まず濃霧が発生すると砂漠の小高いところに登ります。

そしてお尻を持ち上げ、頭を下げた、逆立ちのような姿勢を取ります。

この姿勢を保っていると、しばらくして、体表に水滴が発生します。
体表についた水分が結露してできた水滴です。

頭を下げているキリアツメの口元には、水滴が流れ込んでいます。

逆立ち姿勢によって水分補給ができるというわけですね。

ただ、他の昆虫でもこの逆立ち姿勢をとることがあります。

しかし、キリアツメが水分補給しやすいのは、他にも秘密があります。

キリアツメは、特別に長い後脚を持ちます。
この長い後脚が、水分を集める逆立ち姿勢を維持するのに役立っています。

また種によっては水滴が流れやすいように、体表に厚めのワックスがコーティングされています。
さらに、前翅に水滴の流れる溝が刻み込まれているものまでいるようです。

このような工夫も、キリアツメが水分を獲得しやすい理由になっています。

まとめますと、
・キリアツメは砂漠で水分補給するよう発達している
・体表に結露した水滴が口元に流れ水分補給する
・水分補給には、長い後脚、体表のワックス、前翅の溝、が役立っている
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今回の内容は以下のものをもとにしています。
・大場裕一他編『遺伝子から解き明かす昆虫の不思議な世界』2015

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