筋肉には速筋と遅筋があると聞いたことがあるでしょうか。

速筋は「あまり力はないが速く動く」。

遅筋は「大きな力を出せるがゆっくり動く」。

目的に応じて使い分けされています。

例えば二枚貝が閉じるときです。

ゆっくりと閉じますが、一度閉じたら素手で開けるのが難しいほど。

このときは遅筋が活躍しています。

アギトアリは動物界トップクラスの速さでアゴを閉じられます。

このとき、アギトアリのアゴには、どちらの筋肉が使われているでしょうか。

おはようございます。
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アギトアリは普段、大きなアゴを左右に開いています。

捕食などのとき、ピストルの撃鉄が打ち下ろされるように、この開いたアゴを瞬時に閉じます。

瞬間的に閉じるということはつまり速筋か、と思うかもしれません。

しかし実際は遅筋が使われているようです。

左右に開かれたアゴは、筋肉が強く引き伸ばされロックされています。

ロックできているのは、留め具がわりの器官があるためのようです。

目の前に獲物がくる。
そのとき、
留め具が外され、
ハイスピードで閉じるアゴで挟撃します。

このとき活躍する筋肉は非常に頑固な筋肉である遅筋です。

このときの筋肉の状態は、
硬くてほとんど伸長しないゴムを強引に引き伸ばした時をに喩えられるかもしれません。

ゴムを目一杯引き伸ばすと、凄まじく高い弾性エネルギーが蓄積されます。

多くの脊椎動物の骨格筋の伸縮範囲は常態にくらべ10から20%とされます。

対して、アギトアリのアゴ筋肉の伸縮範囲は3%ほどしかありません。

まさに硬くてほとんど伸長しないゴムに相当するようです。

留め具がパッと外された瞬間、引き伸ばされた頑固な筋肉が解放されると、
アゴは一瞬で閉じるという仕組みです。

このアゴの閉じる速度は、速筋の収縮の動きを大きく上回ります。

このような仕組みによって、アギトアリは比類ないスピードでアゴを閉じています。

一方で、留め具のない多くの他のアリは速筋によってアゴを閉じるようです。

まとめますと、
・伸縮性のない遅筋によってアギトアリのアゴは動物界トップクラスのスピードを誇る
・多くの脊椎動物の骨格筋の伸縮範囲は10%、アギトアリのアゴ筋肉は3%ほど。
・多くのアリは速筋によってアゴを閉じる
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今回の内容は、岩本裕之『昆虫たちのすごい筋肉』(2019年、裳華房をもとにしています。

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