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(2018年、白揚社、370ページ、2500円+税)
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著者はアリゾナ大学昆虫学研究員という職位のJ・O・シュミット。
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ハチ・アリ類に刺された時の痛みを数値化したシュミット指数を生み出した方です。
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2015年にこの指数、ハチ・アリ類研究が評価されイグ・ノーベル賞を受賞しているようです。
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とにかく自分が刺されてみて、それを基準にハチ・アリ類を分類しようという発想が面白いですね。
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本書の巻末には、痛みを数値化したリストが載っています。
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例えばセイヨウミツバチの刺された際の痛みレベルは「2」。
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刺された時の感想がコメント欄にありますが、「どうにか耐えられる痛み」とあります。
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そのリストをもとに、最も痛み与える昆虫をたどっていくと、、、
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痛みレベル「4」になっている2つの昆虫があります。
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このハチはタランチュラを獲物とすることで有名かもしれません。
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刺された時のコメントは「目が眩むほどに凄まじい痛み」とあります。
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セイヨウミツバチより倍の痛みになり、あまりピンときませんが相当に危険な痛みのようですね。
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各章では、このような激痛を引き起こす昆虫の針や毒について深掘りしていくというスタイルをとっています。
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45文字*18行体裁と、ページ単位の文字数は一般的な量だが、行間が広めにとられていて読みやすい。
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カラー口絵はあるが、本文中に写真はない。刺された時の写真、採集の様子などの写真を期待する人も多いのでは。
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例えば「第9章 孤独な麻酔使いたち」では、最たる痛みを引き起こすオオベッコウバチの生態と、激痛を起こす原因を紹介しています。
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このハチの痛みを引き起こす原因は、毒の成分に隠されているとされています。
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もちろん、針を刺すことによる物理的な痛みもありますが、より大きな原因は、このハチがもつ毒の特有の成分によって引き起こされるとされます。
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成分には、「最高濃度のクエン酸塩、…アセチルコリン、キニン類」があります。
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これらの成分は多くの場合、痛みを起こす原因となりますが、それらが本当に痛みを起こしているのかは、まだ確かめられていないようです。
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とにかくオオベッコウバチは、捕食者に強烈な痛みを与えて追い払っています。
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「哺乳類に与える致死作用は、ミツバチの毒液の3%にとどまる」とされます。
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目が眩むほどの痛みを与える毒であれば、自分を狙ってくる捕食者に対して、強烈な作用を与える毒性を持っているのではないでしょうか。
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オオベッコウバチの毒がわずかなダメージしか与えない理由は、このハチの暮らし方にあります。
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このハチは単独性であり、仲間とコロニーを作って暮らしてはいません。
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そのため、捕食者が自分を攻撃してきても、自分が逃げられるように、一時的に痛みを与えれば済むことです。
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もし守るべきコロニーがあれば、一時的だけでなく、捕食者を動けなくする、また死んでしまうほどのダメージを与えなくてはいけません。
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オオベッコウバチにとってはそこまでする必要はないため、致死性は弱い毒になっていると推測されています。
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もうひとつの痛みレベル4の昆虫は、サシハリアリ(Paraponera clavata)。
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上記のオオベッコウバチは確かに激痛を与えますが、その痛みの持続時間は2分程度と長くはありません。
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このサシハリアリは激痛が4〜5時間は続くようであり、その間、氷で患部をずっと冷やしておかないと震えが出るほどの痛みを伴うようです。
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そのほか、本書にはコハナバチ科、ヒアリ、スズメバチ、アシナガバチなど、著者が実際に刺されたハチ・アリ類を紹介していきます。
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痛みのレベルとともに、生態、採集するときの注意やエピソードをまじえ、臨場感を感じてもらう工夫を施して展開されています。
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特に本書の目玉は「痛みレベル」ですので、それをいかに伝えるかがポイントになっています。
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ただ、この目的が実現されているかは微妙で、「こっそりじわじわ攻めてくる痛み」「ブルドッグに噛まれたような痛み」など、言葉を変えて表現していますが、あまりピンとはこないかもしれません。
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それよりも、毒針で刺してくる昆虫たちを、いかに捕らえ、どのような面白い生態を持っているか、その紹介がメインになっている印象が強く、楽しく読めそうです。
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