ツツキノコムシという甲虫を知っていますか。

漢字で書くと「筒蕈虫」ですね。
蕈という字は、キノコという意味を持つ漢字になります。

この甲虫の体型が円筒状であることに由来しています。

全世界に700種あまり、日本からは約80種が知られています。

彼らは名前の通り、キノコを利用する甲虫です。

ただキノコといってもどのキノコでも良いわけではなく、ある限定された種類のキノコを利用するようです。

おもに利用するキノコは、カワラタケ類とサルノコシカケ類を利用するグループに分けられます。

この2種類のキノコは、ともに木材を腐らせる菌類という共通した性質を持ちます。

一方で、異なる性質もあります。

例えば、
・カワラタケ類の多くは革質で、手で簡単にちぎることのできるものが多い
・サルノコシカケ類は、木質で非常に硬く、素手でキノコを解体するのが困難なものが多い。

といったことがあげられるようです。

このような性質の異なるキノコを利用するツツキノコムシですが、
どのように利用し、暮らしているのでしょうか。
ツヤツツキノコムシ
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ツヤツツキノコムシ
Octotemnus laminifrons
(https://sites.google.com/site/jpciidae/octotemnus/laminifronsより)
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多くの昆虫では、種によって食べる植物・菌類の種類が限られていることが知られています。

アゲハの幼虫はミカンやサンショウの葉、モンシロチョウの幼虫はキャベツなどのアブラナ科などがあげられるようです。

では、キノコを食べる昆虫はどうでしょうか。

キノコは気温や降水量などにより、特に発生する量が左右されやすいという性格があげられます。

このような場合、特定の種のキノコしか食べられないとしたら、生活史を成り立たせるのは非常に困難になるでしょう。

そのため、キノコを利用する昆虫は、特定のキノコだけを利用するわけではありません。

例えば、ハラタケ類のキノコを利用する双翅目昆虫は、多種のハラタケ類キノコを利用するとされます。

だからといって、どのキノコでも良いというわけでもないようです。

というのも、種によって利用するキノコの種類には偏りがあることもわかっています。

キノコを利用する昆虫の中でも、特に甲虫では利用するキノコの偏りが強く、利用範囲が狭いとされています。

ファーブルの「昆虫記」でも、4種の甲虫について、それぞれ特定のキノコを食べていると紹介されているようです。

では、上に触れたツツキノコムシは、どこまで偏りを持っているのでしょうか。

ツツキノコムシの多くの種が、卵から成虫までの生活史のほとんどをキノコで過ごします。

冒頭に触れたように、おもに利用するキノコは、カワラタケ類とサルノコシカケ類です。

ツヤツツキノコムシ属(Octotemnus)のキノコの利用の仕方について、調査がありました。

ツヤツツキノコムシには、4種いることが報告されています。

4種ともカワラタケ属をよく利用しているようです。
手で簡単にちぎれるキノコですね。

ツヤツツキノコムシ4種は、このカワラタケ属の中でも、利用する種が異なります。

・サトツヤツツキノコムシO. assimilisはカワラタケを利用する一方で同じ属のクジラタケは利用しない
・クジラタケツヤツツキノコムシ O. crassusはクジラタケを利用しカワラタケにはほとんどいない
・ニシツヤツツキノコムシ O. kawanabeiはカワラタケもクジラタケも利用している
・ツヤツツキノコムシはカワラタケもクジラタケも利用しているが他2種は不明

といった違いが報告されています。

これらの違いの理由は、どのようなものでしょうか。

単純に想像できるのは、それぞれのツヤツツキノコムシが暮らしている地域に該当するキノコしかないから、といったことですね。

しかしそう単純ではないようです。

というのも、同じ森の中に2種のキノコがあっても、利用するキノコの違いが確認されていからです。

このような、利用するキノコに偏りがあるものの、キノコ種レベルで見ると、利用には幅があるといったケースは、あまり例がありません。

しかし、これは特殊なケースというわけではなく、今までに十分な調査がなされていないだけ、との指摘もあります。

このケースのようなケースは、他の多くの菌食性甲虫でもみられることが予想されています。

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今回の内容は小林卓也「キノコを食べる甲虫」『甲虫たちの不思議な世界』(制作中)をもとにしています。
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『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』
(前藤薫編/324ページ/2800円+税)

『昆虫たちの不思議な性の世界』
(大場裕一編/300ページ/3800円+税)

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