日本から海外に渡っていた昆虫

このところ、強い地震が続きました。
日本列島の立地の特異性が、その由来ともされます。
日本の昆虫の地理分布も、日本列島の起源と関係が大いにあるとされています。

日本列島の起源と昆虫の地理分布には、どのような関係性があるのでしょうか。

おはようございます。
一色出版の岩井峰人です。
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●日本列島の由来
そもそも、日本列島はどのように形成されてきたのでしょうか。

日本の大部分はもともと、ユーラシア大陸の東の端に位置していた、陸の塊であったとされます。
その後、大陸から裂けるように分裂し、徐々に日本列島が形づくられたようです。
時代は2000万年前のころとされます。

大陸から引き離された列島は、東北および西南の陸塊という、二つの陸塊として分離しました。
それぞれ回転して合体し、一つの列島を形成したため、「観音開き型」とも呼ばれるようです。

のちに日本となる陸塊に昆虫も乗ってきたので、日本の昆虫は大陸の系統の後継となっているとされます。
そのため、このような昆虫たちは「大陸の出店(サテライト)」とも称されることがあるようです。

では、日本の昆虫は、全部が大陸の後継と考えていいのでしょうか。

●海洋島から生まれた独自の系統
日本列島は、大陸から裂けて形成されたと言いましたが、他にも由来はあるようです。
海洋島と言われる諸島は、大陸から裂けてできたのではなく、海底火山の活動による隆起などによって形成されてきました。
大陸から裂けてできた部分とは別に、独立に諸島が形成されたと言われています。

このような性格をもつ海洋島には、大陸の昆虫の後継ではなく、別の系統の昆虫が渡ってきた可能性が指摘されています。
海洋島がつくられた当初は、当然、まだ昆虫たちはほとんどいません。
しかしその後、飛翔してきたり、海面に浮いて流されてきたりなど、海洋島に昆虫の系統がつくられていきます。

日本の場合、大陸から裂けてできたということと、同時に海洋島という部分もあわせ持ちます。
そのため、大陸の後継だけでなく、独自の系統も生まれたと言われています。

では日本列島の原型がつくられたあとは、どのように昆虫の系統ができたいったのでしょうか。

●日本列島の起源と日本の昆虫地理
日本列島の原型ができたあとも、大陸から複数のルートで移入があったようです。
これが、日本の豊富な昆虫分布を作るのに大きな影響を与えたとされています。

北方からの移入には、ユーラシア大陸からサハリンを経由して移入してきた昆虫がいたようです。
例えば、ジャノメチョウの一種シロオビヒメヒカゲ、セセリチョウの一種カラフトタカネキマダラセセリは、サハリン経由で移入してきた可能性が高いと指摘されています。

南方からの移入も調査されています。
ミナカワトンボ科のトンボ類は現在、東南アジア広域、台湾などに生息しています。
日本国内では、琉球諸島だけに生息しているトンボ類です。
このトンボ類を分子系統解析した結果、その移入ルートが示唆されました。
南方から台湾を経由し、まず西表島、ついで石垣島に分散してきたとされます。

このように、複数の由来で、現在の昆虫の系統ができていったことが示されています。
・ユーラシア大陸から裂けて日本列島がつくられる際に乗ってきた昆虫
・海洋島に渡ってきた昆虫
・日本列島の原型ができるころ、複数のルートで移入してきた昆虫
これらにより、現在の昆虫の系統地理がつくられていきました。

しかし、日本の昆虫は、大陸など海外から移入してきただけなのでしょうか。
逆に、大陸へと「移出」していった昆虫は、いないのでしょうか。

●逆方向に分散した日本の昆虫、コオイムシ
コオイムシは、日本列島の広域、東アジア全般に生息する半翅目の水生昆虫です。
オスが背中で卵塊を背負って、子育てすることで有名な昆虫ですね。

分子系統解析の結果、山陰地方・九州グループのコオイムシは、大陸側のものよりも、祖先的であることがわかりました。
これは、日本にいた昆虫が大陸側へと、「逆方向」に分散した、特別な例としてあげられます。

同じように、タイコウチ、ミズカマキリなど、水生の半翅類においても、日本列島のものが大陸よりも祖先的であることが示されているようです。

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今回の内容は、東城幸治・伊藤建夫「日本の地理と昆虫相の成立」『遺伝子から解き明かす昆虫の不思議な世界』、東城幸治「男の仕事・女の仕事」『昆虫たちの不死溥儀な性の世界』をもとにしています。


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