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毒を持つ生物といえば、ヘビ、サソリ、またはクラゲなどが思い浮かぶかもしれません。

そのいずれもが、主に敵を捕獲するため、または防御するために利用されるのが多いと思います。

しかし、昆虫の中には、防御に利用するにしても、その毒を「受け渡す」という変わった行動をしているものがいます。

今回は毒を獲得するために、変わった工夫をしている昆虫を紹介していきます。

(今回の内容は制作中の『コウチュウの不思議な世界』「化学物質で身を守るコウチュウたち」(橋本晃生)をもとに作成しています)

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上述の毒を持つ生き物たちの中には、その強い毒性のために、人間をも死に至らしめる者もいます。

昆虫についてはどうでしょうか。
人間に対して致死性を持つほど、強い毒をもつ昆虫はいるでしょうか。

今回の主役、ツチハンミョウ科は、カンタリジンという毒性の高い物質を持ちます。
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図1.日本の代表的なツチハンミョウ科3種。左からヒメツチハンミョウMeloe coarctatus、マメハンミョウEpicauta gorhami、キイロゲンセイZonitoschema japonica。

このカンタリジンは、ツチハンミョウ科の中でも、マメハンミョウのEpicautaが特に多く持っています。

例えば60キロの人間がマメハンミョウから毒を摂取した場合、3匹分で死に至る量に達するようです。
このような強い毒性のために、江戸時代には、マメハンミョウの毒は暗殺に利用されたとか(ただ、真偽のほどは不明ですが)。

不思議なことに、それぞれのツチハンミョウが持つ毒の量は、オスメスによって相当な差があります。
一体なぜ、性によって毒の量が異なるのでしょうか。

毒の主な役割が、昆虫の場合、敵から身を守ることにあるとすれば、オスメスで毒の量が異なることに、どのような意味があるのでしょうか。

この答えは、このツチハンミョウの繁殖の仕方と大いに関係しているとされます。

昆虫では、精子の受け渡しの際に、精包という物質も精子と一緒に渡すことが見られます。

これは、タンパク質など、メスや子に役立つ物質を含み、母体の維持や子の発育を助けてくれるものです。

このような行動は婚姻贈呈といわれ、自分の唾液のかたまりをメスにプレゼントするシリアゲムシなど、変わったプレゼントやプレゼントするときの独特の行動が知られています。

プレゼントの中身は、先ほどの精包のように、多くの場合はメスや子の栄養になるものですが、ツチハンミョウはこの点がちょっと変わっています。

ツチハンミョウがプレゼントするのは、カンタリジン。
つまり毒です。

なぜ、こんな危険なものをプレゼントするのでしょうか?

もし人間がプロポーズの際に、婚約指輪の代わりに毒薬をプレゼントしたら、すぐに破断になってしまうでしょう。

オスがカンタリジンを渡す理由は、メスが羽化後に失ったカンタリジンを補充するためとされます。

メスはカンタリジンという毒が、敵から身を守るのに役立つにもかかわらず、
羽化後にこのカンタリジンを徐々に失ってしまいます。

失う理由はまだわかっていません。

ただ、交尾の際に、オスから精子と一緒にカンタリジンをプレゼントされることによって補充され、メス体内の交尾のうという袋状の器官で徐々に吸収して、最終的には卵に移行するとされています。

毒とはいえ、カップリングを通してメスの生存に役立つをプレゼントを渡すことは、人間の婚約指輪以上に、メスに喜ばれる品かもしれません。



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(前藤薫編/324ページ/2800円+税)

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