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「まだ少し眠い。。。
寄生バチには昼間、活発に動きまわるものが多いけど、
私は夕方にならないと頭がさえない。
幼虫の強靭きょうじんな皮膚を瞬時に貫くことができる産卵管は私の宝物だ。」

(『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』プロローグより)

昆虫たちはもちろん話せませんが、もし話ができたら、
このようなことをいうかもしれません。



現在ハエの本を制作中ですが、同じように、本書はセリフを中心にした構成です。
初夏のアシナガバエたち
おはようございます。
一色出版の岩井峰人から、
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私はコバネガ。
今日もやや暖かい気温で、私たちガや植物たちが活動するには、
ちょうどいい温度で助かる。

なにせ私たちガ類は、自分の体温調節が苦手なので。。。

私たちは普通の蛾のように口吻を持ちません。
花の蜜を吸うということしないのです。

代わりに、私たちはとても丈夫な大アゴを持っています。
この大アゴで、私たちの時代にはたくさんある、シダの胞子や裸子植物の花粉をかじって食べます。

一方で、同じ時代に暮らしている他のほとんどのガたちは、
植物に潜り込んでその植物を食べているようです。

例えば、私たちコバネガ科の近い親戚に、カウリコバネガ科がいます。
彼らの幼虫は、樹高60メートルに達するという巨木であるマツの実に穴をあけて潜り込みます。

潜ってからも、ただ食べるだけでなく、「幼虫室」という自分専用の部屋を作ります。
そこで、乾燥や外敵を避けながら、サナギになるようです。

この自分専用の部屋は、よっぽど居心地がいいのか、中には12年ほども部屋で暮らしているものもいるようです。

また、他の近い親戚のモグリコバネガ科がいます。

彼らの幼虫は、ブナの木の葉に潜り込みます。
その幼虫は成長すると葉っぱから出てきて、地中に移動し、そこでサナギになります。

サナギからさらに成長して成虫になると、やはり長く暮らしてきたブナの木が安心するのか、
その木の近くで暮らし、ブナの花粉を食べて生活します。

これまでの話でわかるように、私たち祖先的なガは、花粉を生活の糧にしています。

私たちが暮らしているこの時代は、白亜紀の中期。
周りを見渡せば、大型の恐竜があちこちに見えます。

ティラノサウルス、トリケラトプスの足音に怯え、プテラノドンの羽音にいつも気を使いながら、花粉をかじらなければなりません。

白亜紀中期のこの頃から、実は被子植物の適応放散、つまりいろいろな種類の被子植物が生まれてきているのです。
これに対応するように、私たちガも、食事の仕方、さらに口の形態が変化してきている仲間もいます。

口が変化してきている仲間では、大アゴでなく、口吻を持つものがみられます。
(彼らは有吻類と呼ばれます)

被子植物の多様化に応じるように、口の形態が変化してきた、、、
と、人間の賢い頭では考えたくなりますが、
彼ら有吻類は、大アゴをもつ私たちコバネガよりも前から生息していたようです。

つまり、被子植物が出現する前から彼ら口吻をもつ有吻類は暮らしていたようですが、
何にその長い口吻を使っていたのでしょうか?

彼ら有吻類が出現した時代は、ハバチ類、バッタ類、甲虫類、半翅類など他の昆虫も暮らしていました。
彼らは、コケ類、針葉樹やイチョウ類などを食べていたことがわかっています。

では、口吻を持った私たちガの祖先は、どのような食事をしていたのでしょうか。

その答えは、多くの裸子植物が分泌する「受粉滴」と呼ばれる甘いしずくに隠されています。

このしずくは、被子植物の花蜜に匹敵する糖度と高濃度のアミノ酸を含んでいるとされます。
このしずくを求めて、ガの祖先は花を訪れ、その長い口吻を使って吸引していたと考えられています。

私たちコバネガのような、大アゴをもつ祖先的なガから、
やがて口吻をもつ仲間が増えていったと思われがちですが、
必ずしもそうとは限らないようです。



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『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』
(前藤薫編/324ページ/2800円+税)

『昆虫たちの不思議な性の世界』
(大場裕一編/300ページ/3800円+税)
https://ws.formzu.net/dist/S93315378/

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