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「チョウ目」とネーミングされているものの、
いわゆるチョウよりもガの方が種数は相当に多いということは、
昆虫ファンならご存知でしょう。

そうはいっても、
チョウの多様さを見てみると、その豊富さはガよりも印象的です。

ガといえば、何か地味で、多様さも感じられない印象を受けないでしょうか?

なぜ、地味な印象をもつガはここまで多様化したのか、
その一端をガの起源から垣間見てみようと思います。



(今回の記事は現在制作中の『チョウとガの不思議な世界』
「ガ類における植物食の進化の起源を探る」
(今田弓女・愛媛大学)をもとに紹介します)

おはようございます。
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起源を知る大きな手掛かりには、
化石を調べることが有効な方法の一つです。

しかし、チョウやガの体は柔らかく、壊れやすいために、
化石にはなりくいようです。

ただ、個体そのものではなくても、
その生き物に関係する物、痕跡の化石は見つかることがあり、
それらも起源を知るのに、重要な情報を持つことがあります。

鱗粉の化石もその一つです。

最古の鱗粉の化石が、花粉や胞子の化石と一緒に発見されたと、
2018年の論文で報告されました。

それまで、ガの最古の化石は、
およそ1億9000万年前のものとされてきました。

ところが、この鱗粉化石はさらに7000万年さかのぼる時期のもので、
従来の起源よりもずっと前からガが存在していたことを示しています。

一方で、ガなど生物の起源を探るために、
生物が食事をした痕跡、つまり食痕を調べるという方法も取られています。

食べ方をみると育ちや性格がわかる、とは人間で言われますが、
昆虫においても、その食べ方によって、どんな昆虫だったのか、
ヒントを得られるようです。

例えば、
カメムシのような「穴あけ吸汁」タイプ、
また茎や材への「穿孔」タイプ、
葉や花をかじる「外部食」タイプ、
組織を作り変える「虫こぶ形成」タイプ、など、
その食べ方の痕跡から、その昆虫の生活史が推測できます。

中でも、祖先的なガとされるコバネガは、咀嚼型の口器を持ちます。
キタキチョウ
クリックして拡大
AからHがコバネガ科、Iはカウリコバネガ科。



ペルー高地のコケが生い茂る地域で、
このコバネガの幼虫が採集されています。

このコバネガは大顎をもち、それを使ってコケや腐った植物を食べます。

その化石は、1億3000万年前にさかのぼり、
最古の鱗粉化石より1億年ほど経過した中で、
口器の多様化、同時に食性の多様化が起きているのがわかります。

その後に出現した食べ方に、「潜葉」というものがあります。

潜葉の痕がある植物を透かしてみると、
産卵痕、坑道の軌跡、幼虫の糞、など、
潜葉した昆虫の成長記録が垣間見れます。

こういった記録について調べると、
なかにはガのものとわかる場合があります。

その最古の潜葉痕が見つかったのは、
アメリカのノースダコタ州からで、
およそ9700万年前とされます。

上記の、最古の鱗粉化石から1億年以上が経過し、
口器という重要な部位に新たな形態が出現したことがわかります。

さらに被子植物が適応放散し多様化していくと、
チョウとガは花と密接な関係を築いて進化していくことになります。

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『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』
(前藤薫編/324ページ/2800円+税)

『昆虫たちの不思議な性の世界』
(大場裕一編/300ページ/3800円+税)
https://ws.formzu.net/dist/S93315378/

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