私の娘は先日、8歳になりました。

生まれてくる前は、
きっと男の子だろうと思い込んでいて、
男の名前しか考えてなく、
女の子と聞かされたときは、
そんなはずはない、
と奥さんからのメールを見直したことを覚えています。

なぜ、生き物はオスとメス、2タイプなのでしょうか。

ただ、3タイプ、4タイプもあったら、
名前も考えるのが大変そうですが。

今回は、昆虫の性的2型について、
特に変わった性の決まり方に触れてみようと思います。



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ところで、爬虫類の性の決まり方は、
特に変わったものがあることが知られています。

よく話題になるのが、発生期の温度によって性がきまること。

例えば、爬虫類の性決定には3パターンがあり、
1 胚発生の時期が低温だとメス、高温だとオス
2 胚発生の時期が低温だとオス、高温だとメス
3 胚発生の時期が低温か高温だとメス、中間だとオス
という3つが知られています。
(『遺伝子から解き明かす性の不思議な世界』「第4章 爬虫類の性」より)

ほとんどの爬虫類が1か2に入るようですが、
唯一3のパターンなのが、
イグアナ科のクビワトカゲ。
Collared_lizard_in_Zion_National_Park
クビワトカゲ(ウィキペディア(Wikipedia)より)

調査では十分な個体数が得られてないようですが、
多様な性の決まり方がうかがえます。

さて、昆虫にも、温度によって性が決まるものがいるとされています。

ヤブ蚊の一種(Aedes stimulans)では、
幼虫期の水温が28度以上の場合、
遺伝的にオスであっても
メスになるとされます。
(『昆虫たちの不思議な性の世界』「第1章 男になるか女になるか」より)

また、他に性の変わった決まり方をするものもいます。

タマバエの一種では、母親の体液の栄養状態により
性が決まるとされます。

同じく双翅目のクロバエ科のホホジロキンバエでは、
性染色体が存在しないで、
母親の遺伝子型によって性が決定するとされます。
メス化因子をもつ母親からは、全てメスが生まれ、
そうでない場合は、全てオスが生まれます。

さらに、スペイヤーキノコタマバエなどでは、
性染色体の数が減ることによって性が決まります。

つまり、3本のX染色体のうち、
1本を失うとメス、2本失うとオスになります。

では、性染色体を持たない膜翅目では、どうでしょうか。

今から150年以上も前に、
セイヨウミツバチの観察の結果から、
受精卵から生まれるのはメス、
未受精卵から生まれるのはオス
ということが推察されました。

未受精卵から生まれるオスは、
つまりは父親がいないことになります。

このような変わった性決定は、どのような利点があるのでしょうか。

●利点その1「交尾しなくても母親は息子を生める」
未受精卵でも子が生まれるので、必ずしも精子が必要ではなくなります。

●利点その2「子の性を生み分けられる」
産卵する際に、卵に精子をかければメス、かけなければオスというように、
オスメスのバランスを調整できます。

●利点その3「オス同士がメスをめぐる無駄な争いをしなくて済む」
寄生バチでは寄生相手から、非常にたくさんの子が誕生することがよく見られます。

生まれてきたオスたちがたくさんいる場合、交尾相手となるメスをめぐり、熾烈な争いをしなくてはなりません。

そこで、オスの数を調整することによって、
メスをめぐる無駄な争いを避けることにつながります。

しかし、その後、ガの幼虫に寄生する
シマメイガコマユバチという寄生バチを調べていると、
受精卵からもオスが生まれることが明らかになったとされます。
(『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』「第7章 ハチの性と生殖を操作する」より)

他にも、寄生バチでは、タマゴバチをメスばかりにする研究が進められています。
タマゴバチとは、文字通り、卵に寄生する寄生バチ。

その寄生相手は、作物の茎や葉に潜るため殺虫剤が効きにくいガ類です。
つまり害虫としてのガ類の天敵として、防除に役立てることが狙いです。

その際、タマゴバチのメスに共生微生物を感染させ、
メスばかりにします。

これによってハチの増殖率を大きく増加させることができ、
防除の効果を高めることが期待されています。
以上、爬虫類から始まり、
昆虫たちの不思議な性の決まり方について見てきましたが、
いかがでしょうか。

この他にも、
性を操作するバクテリア、
同性愛行動をする甲虫など、
バリエーション豊富な性の決まり方が、知られています。

様々な性決定によって、
昆虫の多様さが生み出されるのを、
垣間見ることができそうです。



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『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』
(前藤薫編/324ページ/2800円+税)
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===編集ちゅう===
・「ヒトゲノム事典」
編集委員による原稿査読の進行中。

・「チョウとガの不思議な世界」
編者とやりとりして、相互査読に入るよう推進中。
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