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この記事を見ている方の多くは、昆虫ファン、
また生物に非常に興味のある人ではないでしょうか。

日本人の昆虫好きは有名ですが、
それは現在のことだけでなく、
古来、広く生き物に興味を持っていたようです。

今回は、古文書に見られる鳥の記述から、
特に江戸期の人々の鳥に対する感じ方、接し方を見ていきたいと思います。

(今回の内容は『遺伝子から解き明かす鳥の不思議な世界』
[上田恵介編、2018年]、をもとにしています)



おはようございます。
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1 丹頂鶴(タンチョウヅル)への接し方

日本人に親しみのある鳥の一つに、鶴がいます。

長寿を意味することわざに登場したり、
縁起のいい生き物としてイメージされてきました。

江戸初期には、その鶴には丹頂鶴とともに、
マナヅル、ソデグロヅル、ナベヅルの記載が多く見られるとされます。

今ではほとんどが北海道で見られるのみですが、
当時は、これほど記載されている鶴たちは、
どの地域で鶴は見られたのでしょうか。

江戸周辺では、東京都荒川区や台東区で観察されたことがわかっています。
図7.『名所江戸百景』より「箕輪金杉三河しま」。タンチョウが渡来する豊かな自然環境が江戸周辺にも残っていたことを説明する際に用いられることが多いが、江戸周辺のツルは人為的な管理下にあった可能性も否定できない。 国立国会図書館デジタルコレクションより
図7.『名所江戸百景』より「箕輪金杉三河しま」。タンチョウが渡来する豊かな自然環境が江戸周辺にも残っていたことを説明する際に用いられることが多いが、江戸周辺のツルは人為的な管理下にあった可能性も否定できない。
国立国会図書館デジタルコレクションより

歌川広重の浮世絵では、2羽の丹頂鶴が描かれています。

関西ではあまり見られなかったようですが、
いくつかの記述が見られます。

筑前国(福岡県)の1788年の記述では、
ソデグロヅルが飛来したとされています。

また鹿児島県奄美大島では、わずかながら丹頂鶴が飛来したことが
記述されているようです。

さらに琉球でも1760年、4羽の丹頂鶴が飛来したという記述が見られます。

「かつてタンチョウは日本各地に広く分布していた。これを証明するように、江戸時代の資料では東西を問わず日本各地でタンチョウに関する記録を確認できる」
(「第10章 古文書の「丹頂」からタンチョウを探る」久井貴世より)

調査が進められた結果、丹頂鶴は日本全国に当時は見られ、
北海道など特定の地域に限られたものではなかったようです。

では、そのように全国的に見られた丹頂鶴は
江戸期の人々とどのような関わりを持っていたのでしょうか。

2 鶴を食べる

昆虫界では、数年前から「昆虫食」に注目が集まっていますね。
様々な出版物も発刊されています。

昨今の盛り上がりとは関係なく、
イナゴの佃煮など、日本での昆虫食は日常的に見られたようです。

江戸期の人々も、昆虫を食べていたか定かではありませんが、
江戸時代には権威の象徴としてあった、
丹頂鶴を食べる事例が残っているようです。

ただし、イナゴのように、庶民が食していいものではなく、
ごく限られた人にのみ許された食事でした。

もし、庶民が丹頂鶴を食べたとわかると、
藩によっては死罪に処され、または罰金(過料)などの懲罰が定められていたようです。

鶴を食べることが許されたごく一部の人々にとって、
丹頂鶴は贈答品としての意味があったようです。

「贈答品としての利用方法の一つに『塩鶴』がある」。
塩鶴というのは、文字通り、塩漬けにした鶴のこと。

調理法としては、「鶴の汁」がメインで、他に煮物、刺身などにされたようです。

しかし、現在の日本では鶴を食べるまでもなく、
他の美味しくて調理しやすい食材が好まれますが、
当時、鶴はどのような味がしたのでしょうか。

『本朝食鑑』(1697年)には、
「大抵賞する所のものは黒、白、真にして。黒きものの味い最も美しう」
とあります。

黒=ナベヅル、白=ソデグロヅル、真=マナヅルのことで、
ナベヅルが最も美味しいとされています。

では、丹頂鶴はどうだったのでしょうか。

「丹頂は肉硬く、味いならず」とあります。

飼育用には人気のあった丹頂鶴ですが、
食用としては、好まれなかったようですね。

3 江戸期の人々と昆虫

江戸期の丹頂鶴と人々の関わりは、
上記の通り、ごく一部の人に限られたようです。

例えば、荒川区などに見られた丹頂鶴の飛来も、
観賞用というより、
鷹狩りに使用された獲物として、飼育されたとされます。

対して、昆虫はより広く、高貴な人から庶民まで
たしなまれたようです。

酒肴片手に虫の声を聞き行く「虫聞き」、
蛍を愛でる「蛍狩り」、
鈴虫や松虫を売りあるく「虫売り」など、
季節の風物として好まれていたとされます。
(『昆虫たちの不思議な性の世界』大場裕一編著より)
江戸名所道外尽 道灌山虫聞
「江戸名所道外尽 道灌山虫聞」(1859年、国立国会図書館デジタルコレクション)

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『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』
(前藤薫編/324ページ/2800円+税)
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===編集ちゅう===
・「ヒトゲノム事典」
編集委員による原稿査読の進行中。

・「チョウとガの不思議な世界」
編者とやりとりして、相互査読に入るよう推進中。
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