飛んで火に入る夏の虫、は昆虫にまつわる有名なことわざですね。

しかし、昆虫の中でも自ら明るく発光する種類が知られています。

代表的なものはホタルですが、コメツキムシやハエの一種にも発光するものがいます。

しかし、その割合としてはほんのわずかで、昆虫ほとんどが発光しないようです。

では発光するものの範囲を昆虫に限定せず、

生物全体に広げたら、どれほどになるか想像できるでしょうか。

おはようございます。
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昆虫以外ですぐに思い浮かぶのは、海洋生物かもしれません。

中でも深海にいるチョウチンアンコウは有名ですね。

自分の目の前に提灯のように発光器をぶら下げている、お馴染みの生き物です。

これほど独特の生き物であるので、あまり多くの種はいないのではと思うかもしれません。

しかし、実はチョウチンアンコウ亜目は169種が知られています。

アンコウ目全体で371種になりますので、多くの割合を占め、多様性のあるのがわかると思います。

このチョウチンアンコウ亜目のほとんどは発光種になるようです。

とはいっても、皆が皆、発光するのではありません。

発光するのはメスだけです。

では、オスはどのような姿かというと、
メスに比べ、極端に小さな体になっているようです。

いわゆる矮雄(わいゆう)と呼ばれるものですね。

自分に比べて極端に大きな体のメスに、コバンザメのように貼りついて暮らします。

一匹のメスに対し、複数のオスが寄生することもあるようです。

しかし、深海にいるだけに、彼らの生態は不明なことが多いようです。

確かにわかっているのは、「提灯」を使って獲物を引き寄せていることが、まず一つ。

また「提灯」から獲物を引き寄せる化学物質を放っていることも間違いないとされています。

しかし、謎なのは、この「提灯」の正体ですね。

つまり光の正体は、何になるのでしょうか。

この提灯の中には、発光バクテリアが入っているとされます。

このことは研究史においても早い時期からわかっていたようで、1928年の論文で報告があるようです。

今度は深さ1000メートルのチョウチンアンコウの世界から、もっと浅い所に目を転じてみます。

ここにも発光する魚がいます。

ヒカリキンメダイという、200〜400 mの浅いところいる魚です。

この魚の眼の下部には、楕円形の発光器が見られます。

発光の仕組みですが、上記のチョウチンアンコウと同じく、やはり発光バクテリアと共生しており、そのバクテリアを利用して発光しているようです。

このように、バクテリアを利用して発光する魚は多く知られています。

その利用にはタイプがあり、大きく2つに分けられます。

1、自由に活動している種類のバクテリアを入手して自らの発光に利用するタイプ(任意共生)

2、共生相手と独立に自由には活動できないバクテリアと共生するタイプ(絶対共生)

ほとんどの発光魚は任意共生になるようです。

しかし、上記のチョウチンアンコウとヒカリキンメダイだけは、絶対共生になります。

とはいっても、「完全な」絶対共生ではないようです。

この発光バクテリアは、ある程度の自由生活が可能で、運動できるよう鞭毛も持っています。

つまり、絶対共生できつつある中間状態とも言われています。

まとめますと、
・チョウチンアンコウ亜目には169種という多様性がある
・提灯には発光するバクテリアが入っている
・ヒカリキンメダイとチョウチンアンコウだけが発光バクテリアとの絶対共生をしている



先月2月28日に『世界の発光生物:分類・生態・発光メカニズム』という本が出版されました。
著者はホタルなど発光昆虫の専門家として有名な大場裕一先生。
本書は身近な発光生物から珍しい発光生物まで、「余すところなく紹介することを目的とする」としており、文字通り、発光生物の百科全書というに相応しいものとなっています。
実際に読んでみると、専門性が高く研究者向きの印象ですが、文体は親しみやすく、専門知識のない人でも読みやすいよう噛み砕いた内容です。
イラスト(著者による作画も多くあります)、写真も豊富で、感覚的に理解しやすい工夫もあります。
また多数挿入されたコラムには、文学作品中に触れられた発光生物の解説、研究者の発見エピソードなど、気楽に楽しめる箇所も見られます。
生物が発光する不思議に触れたいという気持ちは、多くの人に共通するものではないでしょうか。
ディープな発光の世界に入りたい人にお勧めします。
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今回の内容は、大場裕一『世界の発光生物:分類・生態・発光メカニズム』(2022年2月、名古屋大学出版会をもとにしています。

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