それでも、住まいや食料を昆虫の攻撃から保護することに苦労は絶えません。
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では、近代的な科学技術に頼れなかった古代の人々は、どのような防虫対策をとっていたのでしょうか。
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現代でも食料の貯蔵には、昆虫たちによる被害がつきものです。
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具体的な数値については、1997年に報告があります。
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この報告によれば、世界的にみて、穀物・マメ類の10〜40%は昆虫による被害を受けているとされます。
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これを年間の総量で見ると、1億5000万〜6億トンもの作物を毎年失っているとされます。
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これほどの猛威をふるう昆虫による攻撃ですが、古代の人はどのように対処してきたのでしょう。
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時はアレクサンドロス大王の治世から始まるヘレニズム時代、紀元前300〜前30年頃。
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当時、貯蔵前によく乾燥させることは、最も防虫に効果的な手段として普及していました。
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この時期では貯蔵庫を高床式にして、通気性のある貯蔵部屋を用意しました。
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これにより湿気を遠ざけ、昆虫からの被害に対応したようです。
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このような通気による対応とは逆の発想による対応もあります。
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つまり気密性を高めて、酸素を遮断するという対応です。
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この呼吸によって発生する二酸化炭素で昆虫を撃退します。
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このような方法をとる穴倉貯蔵は世界各地にみられる貯蔵法とされています。
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特に17世紀のシシリー島やマルタ島では大規模に行われました。
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現代でも西サハラなどを中心に、アフリカでは一般的に採用されているようです。
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しかし、気密性を高めるといっても、酸素を遮断するほどまで高めることができたのでしょうか。
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穀物を貯蔵するにはある程度の広さ、体積が必要となるはずです。
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そのような穴倉を遮断するには、どのような工夫がとられたのでしょうか。
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その地下穴の壁を粘土で覆うことで遮断したようです。
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ただこれだけでは外部からの侵入を防げても、もともと内部にいた昆虫を根絶することはできません。
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内部にいた昆虫に対しては、穴倉内部を燻すことで根絶したとされます。
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また、密閉して貯蔵するには、量は限定されますが、容器を使った方法もとられました。
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そのために、容器の口を牛糞や粘土で塞いだとされます。
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また陶器自体も多孔質のため、通気性を持っています。
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そのため、マツヤニや石灰で外部をコーティングしたとされます。
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当時のエーゲ海沿岸、キプロスの民族ではこのような方法がとられていたとされます。
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・紀元前のヨーロッパ世界では通気性と気密性の保持によって防虫していた
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・気密性保持のために外部を粘土などでコーティングしていた
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・穀物から発生する二酸化炭素を利用して防虫していた
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次回は、防虫に利用された植物や、その植物の持つ防虫効果のある成分について触れたいと思います。
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今回の内容は、小畑弘己『昆虫考古学』(角川選書、2018)をもとにしています。
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