昆虫はさまざまな環境に適応しています。

中でも水面という特殊な環境に暮らすアメンボ。

水と空気の接触面を巧みに利用するために、大きく特殊化しているようです。

その特殊化した能力、つまり強く撥水する能力がアメンボの最たる特徴と言えるかもしれませんん。

その撥水能力は、どのような仕組みによって支えられているのでしょうか。



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多くの昆虫ではクチクラという表面構造を持っていますね。

クチクラとは体の表面を覆い、乾燥などから体を保護している膜のような構造です。

甲虫で多くみられるものですね。

そもそもこのクチクラは高い撥水性を持ちます。

したがい、多くの甲虫もその撥水性は高いことが指摘されます。

ただ、アメンボは水面という特殊な環境で暮らしています。

その撥水する能力は超撥水性と言われ、昆虫の中でも特に高い撥水能力を示します。

どのような仕組みが、この超撥水性を支えているのでしょうか。



アメンボの場合、二層構造といわれる仕組みを体表に持ちます。

二層とは、広い間隔で生えている剛毛の層と、狭い間隔で生えている微毛という層の二つの層のことです。

この二層構造が水面で暮らすのに必要な超撥水性を支えているとされます。

剛毛は、長く先細りした突起という形状です。
これは先端に水滴を持ち上げ、体表に水が入らないようにしています。

微毛は、短く先端が折れ曲がった形状です。
これは水中に潜った時、毛板と言われる層となります。
これによって体表を覆う空気を貯蔵できるようにしているようです。

このような超撥水性という特徴は、アメンボだけの専売特許ではありません。

チョウにも高い撥水性があることは以前から指摘されていました。

なかでもアサギマダラの翅には、極めて強力な撥水性があることが確認されています。

またこのアサギマダラもアメンボ同様、二つの異なる仕組みで撥水性を維持しています。

アサギマダラの翅には、アサギ色の有色の領域と、半透明の領域、二つの領域があります。

有色の領域は多くのチョウと同様、2種類の鱗粉が重なり表面を覆っています。

一方、半透明の領域は、小さな鱗粉が重なり合うことなく、覆っています。

小さな鱗粉は基質のわずか18〜35%のみしかを覆っていません。
そのため基質がむき出しの状態です。

ところで撥水性の能力を測るのに、接触角がという指標が利用されます。

この接触角の数値が高いほど、強い撥水性を示すとされます。

例えば、90度以下は親水性、90度以上は撥水性、150度を超えるものは超撥水性とされています。

多くのチョウの翅は150度ほどの高い撥水性を持ちます。

ところが、アサギマダラの翅の半透明の領域は160度以上の非常に高い数値を示します。

なぜ、アサギマダラにはこのような接触角の高い領域、つまり強力な撥水性を持つ領域があるのでしょうか。

その理由は、長大な距離の渡りにあるようです。

アサギマダラは時に2000キロメートル以上の移動を行います。

このような長距離の渡りを支える仕組みとして、超撥水性があるとされます。

何しろ、彼らは鳥のように破損したら生えかわるというわけにはいきません。

また6か月という比較的長い成虫の寿命期間を支えるためという指摘もあります。

まとめますと、
・アメンボの水面の生活には超撥水性という特徴が役立っている

・アメンボの体表は剛毛と微毛の二層構造からなる

・アメンボの二層構造は水面と水中での暮らしを支えている

・アサギマダラの翅の半透明領域は長大な渡りを支える要因になっている
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今回の内容は、佐久間正幸他編『昆虫科学が拓く未来』(京都大学出版会、2009)をもとにしています。

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