秋に鳴く虫の歌声は、この時期、さすがにもう聞かれなくなりました。
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例えばエンマコオロギは前翅をこすり合わせ、音を出します。
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このようにバッタ目は翅を使って音を出すものが多いですが、
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バッタ目コオロギ科の中に、ヒバリモドキ科があります。
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コオロギ科なので、ヒバリモドキも翅を使って鳴くと思われがちですが、そうではないようです。
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オキナワヒバリモドキという種は、翅は発達しているのですが、鳴くのに翅は使いません。
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しかし、口ひげではこすり合わせても音がでそうにありません。
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このオキナワヒバリモドキは、口ひげを葉など基物に叩きつけて音を出します。
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これはドラミングと呼ばれ、他のヒバリモドキでも観察されているようです。
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例えば京都産のキアシヒバリモドキでも、同様のドラミングが観察されています。
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ドラミングには翅を使った発音によるコミュニケーションと同様な役割があるとされます。
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つまり、メスへの求愛、縄張りのアピールなどの役割があるとされます。
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少ないながらもこのような方法でコミュニケーションをとる昆虫には、ある傾向が認められます。
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樹冠や朽木を生活の場としていること、また同種同士が密集して生活していることがあげられます。
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このように振動を利用したコミュニケーションをする昆虫は、日本以外でも観察されます。
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南アフリカにいるゴミダマムシの一種は、オスがメスへの求愛にお腹を地面に打ち鳴らします。
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そのリズミカルな音から、現地ではトクトク虫(tok-tok beetle)と呼ばれ親しまれています。
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変わった例としては、アメンボのコミュニケーションもよく知られていますね。
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オスは脚で水面を振動させ、メスの誘惑、縄張りのアピールを行います。
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しかも、メスはオスの振動情報をもとに、オスのクオリティーもチェックしているとされます。
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振動時間が長いほどメスに受け入れられることが知られています。
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昆虫のコミュニケーションとして、発音は広く伝えられるというメリットがあります。
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一方で敵に見つかりやすいというデメリットもあります。
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地面や植物や水面の振動を利用したコミュニケーションは広くは伝わりませんが、敵に見つかりにくいというメリットがあります。
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進化的には、草むらでなく樹上など目立つ場に生活の場を移したことで、目立ってしまうデメリットと引き換えに、鳴くのをやめて、振動をコミュニケーション手段としたと考えられるようです。
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・ヒバリモドキの中にはドラミングでコミュニケーションするものがいる
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・密集して生活するものにドラミングを使う傾向がある
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・水を利用した振動コミュニケーションにアメンボがいる
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・振動コミュニケーションは狭い範囲だが、敵に見つかりにくいコミュニケーション手段とされる
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今回の内容は、大場裕一編『昆虫たちの不思議な性の世界』(一色出版、2018)、宮武賴夫編『昆虫の発音によるコミュニケーション』(2011、北隆館)をもとにしています。
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