昆虫の不思議な能力の一つに、素早い動きがあることに前回は触れました。
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例えばバッタは空中で鳥に捕獲されそうになると、とっさに羽ばたきを止めます。
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止めることによって滑空して高度をすぐに下げることができます。
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ところで、バッタはどのように鳥が急接近しているのに気付くのでしょうか。
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捕獲者などが急に接近すると強く応答するニューロンが確かめられました。
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DCMDというニューロンが大きく関わっていることが指摘されています。
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ではバッタ以外の昆虫、カマキリでも同じようなことが指摘できるのでしょうか。
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バッタと違い、カマキリは捕食する側というイメージが強いですが、異なる仕組みがあるのでしょうか。
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確かにカマキリにもバッタと同様に、DCMDのような接近検出ニューロンがあることが確認されています。
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ほぼ同じ性質のようですが、大きく異なる点も指摘されています。
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バッタのDCMDは脳の中に左右一対になって存在しています。
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そして、それぞれのDCMDは、左右逆側の複眼からの情報を受け取ります。
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例えば左側のDCMDは、右側の複眼からの情報を受け取るとされます。
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しかしカマキリの場合、複眼と同じ側に軸索が伸びています。
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これはDCMDが同じ側の複眼からの情報を受け取っていることとされます。
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では、カマキリは接近刺激があった際に、どのような行動をとるのでしょうか。
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バッタでは、羽ばたきを止め、急降下によって捕食から回避しました。
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というのもカマキリの場合、バッタほど俊敏に移動することはできないようです。
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とっさに移動する代わりに、防御姿勢をとるようになったのではと指摘されています。
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特にメスのカマキリの場合、体が重く俊敏に動くことが得意ではないようです。
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そのため、とっさにできることと言えば、前脚を引いて、防御姿勢をとることだったかもしれません。
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カマキリのこの防御姿勢をとるという動作は、やはりDCMDが強く応答した時に実行されることがわかっています。
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・バッタ同様、カマキリも接近刺激に応答するDCMDが存在する
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・バッタと異なり、カマキリのDCMDは左右逆側の複眼からの情報を受け取る
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・カマキリはDCMDの応答によって防御姿勢が促される
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今回の内容は、山脇兆史『昆虫の行動の仕組み』(共立出版、2017)をもとにしています。
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