昆虫の不思議な能力の一つに、素早い動きが挙げられるでしょう。
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「捕らえた!」と思った時には移動していることがよくありませんか。
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昆虫のこのような素早い行動は、まず相手の攻撃が自分に接近していることに気付くことが前提です。
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では、どのように昆虫は相手の攻撃を検出しているのでしょうか。
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人間でも、ボクサーは非常に素早く身を動かすことができます。
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相手のパンチをとっさのところでかわす、その動きは昆虫にたとえられることもあります。
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しかし、かわすタイミングが間違っていたら、意味はありませんね。
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相手がパンチを出す前にかわす動きをしても、何も効果もありません。
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もちろん、パンチが当たってから動いてもだめですね。
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同じように、昆虫も捕食者が自分をおそう、その瞬間にかわすようでないと効果ありません。
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空中で鳥に捕獲されそうになると、とっさに羽ばたきを止めます。
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羽ばたきを止めると浮く力が急になくなるので、滑空して高度をすぐに下げることができます。
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野球のフォークボールのように、打者の直前でボールがストンと落ちる感じかもしれません。
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ところで、バッタはどのように鳥が急接近しているのに気付くのでしょうか。
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いくつかの実験によって、接近を知らせるニューロンが確かめられています。
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その物の大きさがある値を超えたら行動を始めさせるニューロンがあるようです。
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代表的なものにLGMDとDCMDというものがあるとされています。
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この二つのニューロンは、接近刺激に最も強く応答することが確かめられています。
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どうして、特定の刺激に強く応答することがわかったのでしょうか。
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刺激を特定するために、多くの実験器具を作るのは大変そうです。
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このことを確かめたのは、ニューカッスル大学の二人、クレア・リンドとピーター・シモンズという人です。
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この二人は大変な映画マニア、、、だったかはわかりませんが、バッタに映画『スターウォーズ』を見せるという方法をとりました。
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バッタが映画を観ているとき、バッタのDCMDの応答を記録しました。
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これによってDCMDが接近という刺激に強く応答することがわかったとされます。
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なお、この実験によって二人はイグノーベル賞を受賞しています。
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DCMDが高い頻度でスパイクを発火すると、滑空行動が起きやすいことを二人は示しました。
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しかし、バッタが捕食を避けるのは飛翔中だけではありません。
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ジャンプという行動は、滑空という行動よりもだいぶ複雑な動きです。
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飛翔中と同じように、DCMDの発火によってジャンプ回避が引き起こされるのでしょうか。
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バッタに接近刺激を与えると、やはりDCMDが高い頻度で発火し、ジャンプすることがわかりました。
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ところが、DCMDを切除して同じく接近刺激を与えても、ジャンプすることがわかりました。
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どうやらDCMDはジャンプには必須ではないようです。
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ここからDCMDはジャンプを「行うかどうか」よりも、「いつ行うか」に関わることが示されました。
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・バッタが捕食を避けることにはDCMDというニューロンが関わっている
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・飛翔中にDCMDが高頻度で発火するとバッタは滑空行動をとる傾向がある
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・地上でDCMDが高頻度で発火するとバッタはジャンプ行動をとる傾向がある
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・DCMDはジャンプを「行うかどうか」よりも、「いつ行うか」に関わる
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今回の内容は、山脇兆史『昆虫の行動の仕組み』(共立出版、2017)をもとにしています。
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