『ヒトゲノム事典』が発売になりました。
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『ヒトゲノム事典』
編者:斉藤成也ほか/11/10発売/A5上製/448ページ/本体12,000円



ミツバチでもセイヨウミツバチは豊富な資料で紹介されています。

一方で日本の固有のミツバチ、ニホンミツバチについてはまとまった資料はあまりないようです。

今、日本固有と言いましたが、ニホンミツバチとは言うものの、一つの確立された種ではありません。

トウヨウミツバチ(Apis cerana)の1亜種という位置付けられます。

トウヨウミツバチは日本や東南アジア、インド全域含め、アジアに広く生息しています。

中でもニホンミツバチはトウヨウミツバチの生息域でも北限に位置しています。

その北限とは青森県の北端、下北半島です。

下北半島は1、2月の頃はマイナス8度まで気温が下がります。

なぜ、このような寒さの厳しい地域まで生息域を伸ばすことができたのでしょうか。

おはようございます。
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ミツバチには最低限、この温度以上でないと発育できないという発育零点という温度が決まっています。

セイヨウミツバチで確認されたことですが、幼虫とサナギは25度以上でないと発育できません。
トウヨウミツバチでもほぼ同じと予想されています。

ミツバチの発育零点は昆虫の中でも高いものになるようです。

例えばゴキブリ類またカの一種ハマダラカでは7度、サバクトビバッタで19度と記録されています。

このように、ニホンミツバチは昆虫の中でも特に高い発育零点を持ちます。

なぜ、巣内の温度を高く保てているのでしょうか。

その理由としては、まず巣を作る場所に関係しているようです。

他のミツバチ、例えばオオミツバチは木の高い所に巣を作ります。

これに対し、ニホンミツバチは木の空洞、うろに巣を作ります。

オオミツバチは開放された空間に、ニホンミツバチは閉鎖空間に巣を作っているようです。

当然、閉鎖された場所の方が保温効果が期待できそうです。
ニホンミツバチ
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古木の空洞に巣を作るニホンミツバチ。同じところに20年以上営巣が続くこともある(佐々木正己『ニホンミツバチ』より)
さらに別の理由が指摘されます。
それは巣の作りに関係しています。

オオミツバチやコミツバチは1枚の板状の巣を作ります。

対してニホンミツバチは、複数の板状の巣を作ります。

ニホンミツバチは木のうろなど閉鎖空間に、複数の板状の巣を作ることによって高い保温効果を獲得できたようです。

寒さ厳しい下北半島まで生息域を伸ばしたのは、このような習性があったためのようです。

同じことはセイヨウミツバチにも当てはまります。

セイヨウミツバチはアフリカ南端からスカンジナビア半島まで、さらに広い地域に生息できています。

ニホンミツバチと同じく、温度調節がしやすい巣の作り方を獲得できたことが大きな理由のようです。

しかし、本当にこれだけの理由では、雪の降り積もる冬を越すことができるのでしょうか。

人間に置き換えては、どのようでしょうか。

もし暖房のよくきいた家に住めたら、それだけで越冬するのに困らないでしょうか。

家の中でなるべく動かず、消費エネルギーを抑えたとしても、食料の心配はついて回ります。

ハチもどうにかして越冬する間の栄養を確保しているはずです。

栄養の確保という難問を、ニホンミツバチ、セイヨウミツバチはどうしているのでしょうか。

2種に共通して発達しているのが、大量に蜜を貯蔵するという習性です。

ニホンミツバチは2月ころにはツバキなどから、年末期にはビワやサザンカなどに訪花して蜜を蓄えます。

年間を通じて、実に多様な花から蜜を採取してきます。

多様な花から蜜の採取の仕方を学習できたことも、寒冷な地域に生息できるようになった要因のようです。

この習性に目をつけた動物は、効率よく大量の栄養源を得られます。

人間では養蜂という生業を成立させたことになりますね。

ここまで特に巣の暖房について触れてきました。

しかしニホンミツバチ含むトウヨウミツバチは、インドネシアという熱帯にまで生息しています。

当然、冷房についても効率的な仕組みを持っているはずです。

次回はニホンミツバチの冷暖房、温度調整の方法などに触れてみたいと思います。

まとめますと、
・ニホンミツバチは寒冷な下北半島まで生息域を伸ばしている
・巣が閉鎖空間にあり、複数の板状からできているので保温効果が高い
・年間を通じ多様な花から蜜を採取して越冬にも備えられる



『ヒトゲノム事典』が発売になりました。
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今回の内容は、佐々木正己『ニホンミツバチ』(海游舎、2011第2版)をもとにしています。

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