「魔の時間」をより安全に乗り越えるように進化した、新種のハチが報告されました。
下の動画ではこのハチの集合まゆの形成過程が見られます。
「Cocoon mass formation of Meteorus」
https://www.youtube.com/watch?v=AuHarLHolPM

いかがでしたでしょうか?

なぜハチたちは、あのような金平糖型の集合まゆを作るのでしょうか。

おはようございます。
一色出版の岩井峰人から配信しています。
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寄生バチの一種にコマユバチがいます。

コマユバチは他のハチ類と同じように、まゆを作って蛹になり、羽化します。

しかし、まゆを作る段階は寄生バチにとっては危険な時間帯です。

というのは、この時間帯は敵の目に自らをさらし、無防備になってしまうからです。

その危険を乗り越え、無事にまゆを作れたとしても、安心はできません。

まゆの中の蛹に寄生しようとする、他の寄生バチの攻撃にさらされるためです。

他にも、捕食、病因、環境ストレスなどのさまざまな危険を避けなくてはなりません。

まゆを作り、蛹になるまでのこのような「魔の時間」は、
飼い殺しを行う寄生バチにとっては避けられません。

どのように、この時間帯を乗り越えるのでしょうか。

コマユバチ幼虫たちはまゆを作る際、みんなで集まり同時にまゆを作り始めます。

一つ一つバラバラのまゆを作るのではなく、まゆ同士が接合して、大きな一つのまゆ集合体になります。

なぜ、わざわざ大きな塊を作るのでしょうか。

大きな標的となり、敵に余計に見つかりやすくなるという危険性が増すのではないでしょうか。

一つの大きなまゆの塊を作ることメリットに、露出面積を小さくすることがあげられます。

これによって、攻撃やストレスを抑えることができそうです。

しかし、この戦略をさらに発展させた新種が発見されました。

Meteorus stellatus Fujie, Shimizu & Maeto sp. nov.とされます。

生物多様性のホットスポット、南西諸島での発見のようです。

発展させたのは、まゆの並べ方。

他の種の集合まゆと違い、整然と並んでまゆを作ることが指摘されています。

この様子が、冒頭の動画で示されたものです。

また全ての個まゆは外向きに並ぶように集合まゆを作ります。

最終的には球形を帯びた金平糖型の大きな集合繭になります。

球形にできるのは、このハチの仲間が繭を空中に吊り下げて作る習性があるためとされます。

球形にという形状によって、乱雑に集合するよりも露出面積を小さくなります。

露出部分を少なくすることにより、敵にさらされる部分を小さくし、危険さを下げようとしているようです。

つまり、アリや二次寄生バチの攻撃から防御しやすくなります。

また、気温の変化や乾燥などの環境ストレスも小さくなりそうです。

まとめますと、
・寄生バチには集合まゆを作るものがいる
・集合まゆの作り方をさらに進化させた新種が報告された
・球形の集合まゆは攻撃やストレスにより強くなっている
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今回の内容は、『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』の編者、前藤薫先生らによる以下の論文をもとにしています。
Fujie S, Shimizu S, Tone K, Matsuo K, Maeto K (2021) Stars in subtropical Japan: a new gregarious Meteorus species (Hymenoptera, Braconidae, Euphorinae) constructs enigmatic star-shaped pendulous communal cocoons. Journal of Hymenoptera Research 86: 19-45. https://doi.org/10.3897/jhr.86.71225

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