クモヒメバチという寄生バチは、その名の通りクモに寄生します。

寄生するには、さまざまな作戦が必要でした。

クモに飛びかかったり、麻酔をかけたり、子殺しをしたり、いくつかのハードルを乗り越え卵を産みます。

その後、ふ化して子が成長していきます。
その時にも、様々なハードルをクリアする必要があります。

どのようなハードルがあり、
どのような作戦がとられているのでしょうか?

おはようございます。
一色出版の岩井峰人から配信しています。
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****お知らせ****
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まずクリアしなくてはならないのは、
クモに見つからないようにすることです。

寄生されるとき、クモは母バチに麻酔をかけられていました。

この麻酔はしばらくすると効果が薄くなってきます。

やがて麻酔がとけ、動き回れるようになると、
クモは背中に生みつけられた卵に気づき、大慌てで振り落とそうとします。

残念なことに、運悪く見つかった寄生バチの卵はクモから落とされ、
他の捕食者のかっこうの餌食になってしまいます。。。

というようには、ならないようです。

母バチは、クモに見つからないように、またクモの脚が届かないように、
決められた位置に正しく産卵します。
卵の向きさえも、決まっているようです。

これは寄生するクモごとに使い分けられ、属・種ごとに産卵位置、向きも決まっています。

これで卵は安全な状態を保って、ふ化にいたります。
kumohimebachi
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クモヒメバチの卵の付着位置の例。
a:クサグモの頭胸部の後縁に産み付けられたニッコウクモヒメバチ(Brachyzapus nikkoensis)の卵
b:ゴミグモの腹部の先端に産み付けられたマスモトクモヒメバチ(Reclinervellus masumotoi)の卵。(『寄生バチと狩バチの不思議な世界』「
第5章 クモヒメバチ」より)
何せクモはどう猛な捕食者です。
卵はその背にあるので、
敵に襲われる危険性が低くなり、安全に成長できるようです。

次にクリアすべきは、動き回るクモの背から落ちないようにすること。

生まれたばかりの幼虫の身になってみてください。

手足のない状態です。
どうやって、振り落とされずに背にい続けられるのでしょうか。

クモはクモの都合で自由に動き、
時には捕食活動、また時には営巣に動き回ります。

つかまるための手足もなく、またつかむ所もありません。

なぜ、幼虫は落ちずに済むのでしょうか。

ここで活躍するのが、大アゴです。
幼虫は手足のないかわりに、大アゴを持ちます。

この大アゴでクモの体表に穴をあけます。
そこから体液(血リンパ)を吸い成長します。

この時、大アゴであけた穴からは体液が流れ出します。

人間だったら拭き取ったり、バンソウコウを貼ったりしますね。

もちろんクモは何もケアできないので、流れたままです。
やがて傷はカサブタとなり凝固します。

このカサブタが幼虫にとっては大助かりです。
ここはサドルと呼ばれ、幼虫を支える土台となってくれます。

また幼虫は腹部に1〜2対の突起を持っています。
この突起はタップと呼ばれます。

これがサドルに差し込まれ、クモにしっかりと固定されることになります。

クモヒメバチ幼虫はこの状態でクモの体液を吸い、成長していきます。
蛹の前、つまり終齢になると最後とばかりにクモを吸い尽くし、
カラカラになったクモは放棄されるにいたります。

しかし、蛹になると、また身の危険が高まります。
何せ、自分を守ってくれるクモは自分が吸い殺してしまいました。

ではどのように、危険を避けるのでしょうか。

ここにいたり、ハチ幼虫は身を守るため、恐ろしい作戦を実行します。

「寄主操作」と呼ばれる方法です。
次回に触れてみたいと思います。

まとめますと、
・クモに見つからない、脚が届かない位置に産卵される
・属・種ごとに産卵位置、向きも決まっている
・幼虫はクモの体に穴をあけて体液を吸う
・幼虫はクモのカサブタ(サドル)に固定される
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今回の内容は以下のものをもとにしています。
松本吏樹郎・高須賀圭三「第5章 クモヒメバチ」『寄生バチと狩バチの不思議な世界』(2020、一色出版)
・馬場友希『クモの奇妙な世界』(2019、家の光協会)
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