ドロバチには、ある変わった種がいることは、前回のメルマガでお伝えしましたね。
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アトボシキタドロバチというドロバチの一種は、胸と腹にポケットを持ちます。
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お腹にポケットを持つといっても、カンガルーのように自分の子どもを入れておくのではないようです。
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なにも寄生生物を入れるポケットを発達させる必要はなかったのでは、と思うかもしれません。
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ドロバチ幼虫の体液を吸いますし、ドロバチ蛹には卵を生みつけます。
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しかし、ダニは相手から栄養をむさぼってばかりではありません。
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ハチの天敵である他の寄生バチからの攻撃に対し、ダニはドロバチを守ってくれます。
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このように、ハチ自身を守ってくれるダニを住まわせるのに、アカリナリウムというポケットは役立っているのですね。
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ただし、このアカリナリウという器官はなにも、寄生バチの専売特許ではありません。
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日本固有のクマバチには、5種いることが知られています。
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キムネクマバチ、アマミクマバチ、オキナワクマバチ、アカアシセジロクマバチ、オガサワラクマバチになります。
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国内最大級のハナバチ。胸部が黄色いことから、「キムネ」とされる。大アゴで木に穴を掘る姿が「大工(carpenter)」を連想させることに由来(英名はLarge carpenter bee)
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これらのクマバチのなかにも、同様にアカリナリウムをもつものがいるようです。
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アカリナリウムがあるということは、ダニがそのポケットに住み込み、共生していることがわかりますね。
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ただ、クマバチに寄生するダニは、ドロバチに寄生しているものとは異なり、ほとんどが別のグループ(Sennertia属)のダニになります。
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ドロバチに住むダニは、天敵である寄生バチからドロバチを守ってくれました。
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では、クマバチに住むダニは、どのようなメリットをクマバチに与えているのでしょうか。
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メリットの一つには、ダニは巣の中のフンやゴミを食べることで清掃してくれるという点です。
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ドロバチに与えていたメリットと比べると、ややインパクトが弱いようにも感じられますが。。。
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こうした役割を持つダニたちですが、上にあげたクマバチの一種、キムネクマバチ(Xylocopa appendiculata、ハチ目ミツバチ科)には変わった寄生の仕方がみられるようです。
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このクマバチのアカリナリウムにダニが住み込んでいるのですが、他の部位にもダニが住み込みしているようです。
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しかも、アカリナリウムと別の部位にいるダニは、体サイズの異なるダニのようです。
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このダニはアカリナリウムに住むにはサイズが大きすぎるため、胸の毛に絡まるようにして寄生します。
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そのためか、脚先は大きなカギ状になっていて、毛から離れにくいように発達しているようです。
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ただ、寄生とはいっても、巣の中のフンやクマバチの集めた花粉団子を食べたりするだけです。
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体液を吸うなど、いわゆる寄生者がするようなことではないようですね。
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・ドロバチだけでなくクマバチにもアカリナリウムを持つものがいる
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・クマバチに住むダニはスカベンジャーとしての役割を持つ
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・クマバチに住むダニは体サイズによって別々の部位にいる
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・牧野俊一/岡部貴美子「第12章 竹筒のなかの小宇宙:営巣トラップに集う生き物たち」前藤薫『寄生バチと狩りバチの不思議な世界』(2020)
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・岡部 貴美子、牧野 俊一「キムネクマバチ Xylocopa appendiculata circumvolans のアカリナリウムと便乗するダニ相」日本ダニ学会誌、2002 年 11 巻 2 号
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