2019年からのコロナ禍は、いまだに終息をみていません。

ただ、2020年には東アフリカや西アジアで、コロナ禍と同じくらい重大な事態が発生していました。

サバクトビバッタの大発生が起きていました。
このサバクトビバッタが大発生すると、農作物に大きな被害を与えることは有名です。

大発生の開始は2018年、サバクトビバッタがアラビア半島で増え始めたことにあります。

サバクトビバッタは群れをなしていない時は、背景色になじんだ体色です。

ただひとたび群れをなすと、体色が変わり、黒くなっていきます。

このような変異が起こり、巨大な群れが大移動をして植物を食い散らします。

作物だけでなく家畜のエサも激減することにより、農業への甚大な被害が起きてしまいます。

しかし、他のバッタたちはここまでの大発生や巨大な群れを形成しないのに、なぜ、このサバクトビバッタはするのでしょうか。

どのような原因で起こり、また巨大な群れをなすことに、どのようなメリットがあるのでしょうか。
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サバクトビバッタ幼虫の相変異
(上)孤独相、(下)群生相
おはようございます。
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2018年から始まった大発生の原因は、サイクロンによる大雨のようです。

2019年に西アフリカのソマリアで、観測史上最多の8回のサイクロン発生が起きました。

これによる大雨によって、サバクトビバッタのエサとなる植物が長期間、生い茂ることになります。

一口に「大発生」と言いますが、その規模はどれほどなのでしょうか。

2020年のケニアでの記録によれば、2,400平方キロメートルという面積をサバクトビバッタが覆いつくしたとあります。
この面積は神奈川県に匹敵します。

また数は1,000億から2,000億と言われます。

サバクトビバッタは1日に自分の体重と同じくらいのエサを食すとされます。

1個体の重量は2グラムほどですので、計算すると10万から20万トンもの植物を1日で食してしまうことになります。

このような甚大な被害を引き起こすサバクトビバッタは、なぜ大量発生し、かつ大移動するのでしょうか。



発生の時期については、何か特定の法則性があるわけではないようです。
不定期に、突発的に発生するということが特徴ともされます。

通常、別々にいるサバクトビバッタがですが、大雨などによってエサとなる植物が急増すると、性的に成熟した成虫が増え始めます。

さらに繁殖が頻繁に起きると、個体数が増加していきます。

やがて乾季になり植物が枯れていくと、植物が残っている地域にサバクトビバッタが集中しやすくなります。

ここで初期の群れが生まれ、徐々に群れのサイズが拡大していきます。

具体的には、若齢幼虫が1平方メートルあたり5から15頭が、8時間ほど混み合いの中にいると、脱皮のたびに体色が黒くなり始めます。
さらに2日間ほど混み合いの中にいると、互いを避けていたのとは反対に、引かれあって集まるようになります。

なお、幼虫が黒くなるのは、脳から分泌されるコラゾニンというホルモンが作用するためとされています。

混み合いを好む性質をもち、体色が黒くなるなど見た目も変わる現象を、「相変異」言います。

相変異は他の昆虫でもみられるようです。

例えば、ガのアワヨトウも集合する性質をもちます。

混み合い条件で育ったアワヨトウは、単独だったものより飢餓状態でも高い生存率を示すという報告もあります。

巨大な群れとなったサバクトビバッタは、群れを維持しながら大移動を始めます。

この巨大な群れが作物への甚大な被害を与えます。

なぜ、個々バラバラに移動するのでなく、群れで移動するのでしょうか。

エサを求めることにしても、群れであったとしたら他の個体にエサを食べられないのでしょうか。

どうやら、大移動の目的はエサを求めるだけではないようです。
ゲージで飼育した際、エサには目もくれず移動し続けるという実験の結果もあるようです。

一つには、菌類などからの感染から逃れるという効果も指摘されています。

他方では、砂漠という過酷で、また将来の予測が難しい環境にいるためとされます。

将来的に、いつエサが枯渇し、繁殖に適さない悪条件が続くかわかりません。

そのため、サバクトビバッタ移動と繁殖を繰り返すとされます。

まとめますと、

・サバクトビバッタが大発生するのは、サイクロン多発など異常な気候が起きることが大きな理由

・相変異が起きるとさらに引かれあい巨大な群れを形成

・大移動はエサが主な理由だが、砂漠という過酷で不安定な環境も一つの理由

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今回の内容は以下のものをもとにしています。
・田中誠二編『バッタの大発生の謎と生態』2020、北隆館

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