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対面のコミュニケーションが避けられるようになった昨今。
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オンラインによる非接触コミュニケーションが推奨されるようになっています。
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非接触コミュニケーション能力は他の生き物にも、多くみられると思いますが、昆虫ではどのようなものがあげられるでしょうか。
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例えばガ類にはフェロモンという伝達手段があります。
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しかし、ガたちはそれだけでなく、豊かなコミュニケーション能力を獲得したようです。
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今回はガ類のコミュニケーションに利用される発音について触れたいと思います。
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(今回の内容は『昆虫たちの不思議な性の世界』をもとに紹介しています)
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同種の仲間との、視覚によるコミュニケーションが難しい場合が多くあります。
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音は波長が光より長く、障害物を回り込んで相手に届くためです。
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生き物がその音を発生させる手段も、鳴き声をはじめ、体の一部をこすったり、打ちつけたりと、簡単にできると言えるかもしれません。
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音によるこのようなコミュニケーションは多くみられますが、生き物の中には特殊な使い方をするものがいます。
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その代表格にあげられる一つに、コウモリ類がいます。
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いわゆる「超音波」を発し、跳ね返ってきた反響音を手がかりに対象物が何かを把握します。
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コウモリはこれを利用して、飛んでいる昆虫、特にガを捕獲しています。
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日本では、キクガシラコウモリ、ヤマコウモリなどが、ガを捕獲しているという報告があります。
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いわば先輩格として出現したものの、後出しで出現してきたコウモリの捕食対象になってしまっています。
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コウモリのエコロケーションという優れた探索能力の前では、ガたちは対抗するすべを持ちません。
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ひ弱なガたちは、現在でもコウモリの格好の捕食対象になっています------
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というように想像されがちですが、ガもなんの進化もせずに黙って食べられてきたわけではないようです。
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実はガも、コウモリに対抗できる特殊能力を獲得してきました。
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それは、相手の得意技に対し、同じような方法で対抗するものでした。
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その超音波を自らも放って、コウモリから自分の位置を見つけにくくするガがいます。
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コウモリのソナーを妨害するヒトリガの一種、Bertholdia trigona(CC BY-SA 3.00)
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このガはオスメス共に、胸に「ティンバル」とよばれる発音器官を持ちます。
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これは非常に硬くなった、薄い膜でできた発音器官です。
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この膜に付着している筋肉が伸縮することによって、音が発する仕組みです。
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それは1ミリ秒未満の非常に短い音で、「クリック状の超音波」といわれます。
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では、もしコウモリが発する超音波をヒトリガが感知すると、どうなるでしょうか。
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ヒトリガはこの刺激に反応し、ティンバルから超音波を発します。
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これによって、コウモリのエコロケーションによる捜索を妨害します。
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戦争映画などでは、敵の潜水艦が発するソナーをかいくぐるために、自軍からもソナーを発するシーンをみたこおtがないでしょうか。
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ガもこれと同じような手段をとっているのでしょうか。
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ある種のヒトリガは、捕獲される寸前に、ティンバルから多量のクリック音を発します。
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するとコウモリのソナーの働きに「異常」が生じさせます。
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コウモリは捕獲対象に近づくと、より正確に把握するために、さらに多くの音波を発します。
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しかし、同時にヒトリガからのクリック音を聞くことにより混乱し、正確な計算ができなくなるようです。
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これによって、ガはコウモリを回避するのに成功するとされます。
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やはり戦争映画でみられるような、ソナー妨害を行っていたようですね。
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ここまで読むと、ガはソナー妨害によって回避に成功するかのように思われるかもしれません。
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しかし、捕獲から回避するために、さらに別の手法を持つことが知られています。
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「音響擬態」とは、文字通り、音を利用して擬態することとされます。
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例えば、チョウの擬態には、ベーツ型、ミュラー型など有名ですね。
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しかし、ヒトリガのように、「音」を使って擬態する方法は、あまり知られていないかもしれません。
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ヒトリガ成虫には、コウモリにとって毒となる成分、アルカロイドを持つものがいます。
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そのため、コウモリが、クリック音の発するこのガを食した場合、毒をもつガであることを学習します。
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つまり、一度食したのち、クリック音の発するガを食さないようになるというわけです。
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音響擬態するガは、毒をもつ種と同じような発音パターンをコウモリに示すことで、自分が毒を持つ種であることを警告しているとされます。
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参考資料:中野亮「ガ類における交尾と防衛のための発音」『昆虫の発音によるコミュニケーション』(H23、北隆館)
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