遺伝子から解き明かす「性」の不思議な世界

遺伝子から解き明かす性の不思議な世界
科学が明らかにした多様性と進化の仕組み
編著=田中 実

B6サイズ/544ページ/4500円+税/2019年2月18日発売/ISBN978-4-909383-06-8/

あなたは男ですか、それとも女ですか、自信をもって言えますか?
自由さと頑強さをあわせ持つ性について、魚や両生類から鳥や昆虫、ヒト、植物に至るまで多くの生き物を取り上げ、それぞれ固有の性の特徴、また共通して見られる特徴を紹介し、生き物にとって性とは何かを、豊富なビジュアル群とともに解説。

〈3つの特徴〉

1 多くの生き物の性を網羅し、生き物にとって性とは何かを解説

魚や両生類に爬虫類、鳥や昆虫から哺乳類、ヒトから植物に至るまで、地球上のほぼ全ての生き物を取り上げ、様々な生き物の持つ性決定システム、性が転換または維持される仕組み、現在の性システムができあがった進化の過程を一冊に収録

2 性について科学的で正確な事実を紹介

LGBTなどヒトの性が注目を集めるが、そこには誤解・憶測が含まれ、偏見を生むんでいる可能性も認められる。性についての正確な知識が必要とされている現在、魚からヒト、植物に至るまで、8種類の生物の専門家が性について長年研究してきた成果をもとにして、性とは何かを丁寧に解説。

3 豊富なビジュアルとwebコンテンツを用いて解説

有名科学雑誌『ネイチャー』の表紙を飾ったマウスの記念碑的写真や雌雄混在(ギナンドロモルフ)の生き物の写真を掲載し、また重要な箇所には図解を用いて紹介。さらに巻末のシリアル番号を使って入れるオンラインサイトでは、高解像のカラー画像とともに本書の内容すべてが見られ、いつでも読書を可能にします。

目次

序章 雌雄はどのように作られるか
性の自由さ/性決定と性分化/細胞の性と特徴/性の進化/性の頑強さ

第1章 雌雄はどのように作られるか
1.性染色体/2.性を決める器官︱生殖腺/3.生殖腺の構造︱性ステロイドホルモン/4.生殖器官の構造

第2章 魚の性︱自由に転換する性
1.メダカを用いた性研究の事始め/2.メダカの性分化︱性決定遺伝子DMYと生殖細胞/3.性を決める体細胞と生殖(幹)細胞のパワーバランス/4.生殖細胞の性決定︱卵になるか精子になるか/5.性決定遺伝子の多様性と性のパワーバランス/6.もうひとつの性のパワーバランス︱性ステロイドホルモン/7.脳だって性分化する!/8.脳の性分化︱哺乳類と鳥類の場合/9.魚類の脳の性分化/10.魚類の脳における性ステロイドホルモン受容体の発現の性差と性的可逆性/11.魚類の脳が性分化する仕組みにはまだまだ謎が多い/12.魚類の性

第3章 両生類の性︱せめぎ合う性決定様式
1.カエルの性染色体と性決定/2.アフリカツメガエルの性決定︱アンチ雄化の性決定?/3.カエル研究からわかってきたdmrt1を介した性システム進化/4.性のデフォルト︱メス?それともオス? 捉え方で答えは違う!

第4章 爬虫類の性︱環境で決まる性
1.爬虫類、鳥類における核型の特徴やその進化/2.性決定様式の移り変わり/3.温度依存性決定/4.性染色体の起源と分化/5.爬虫類における性転換/6.爬虫類に見られる単為生殖

第5章 鳥の性︱遺伝子と性ホルモンがせめぎ合う性
1.ZZ/ZW型︱オスになるた/めには性決定遺伝子産物の量が大事/2.歌うたいの脳︱脳の雌雄差とオス化/3.半分、赤い。︱ギナンドロモルフの登場/4.脳がオスになる季節/5.脳があいつで身体がおれで︱ニワトリキメラを使った性分化の実験/6.「超遺伝子」と3種類のオスたち/7.男女を生み分けする鳥たち

第6章 哺乳類の生殖腺の性︱精巣・卵巣から生まれる性
1.未分化の性から雌雄へ︱生殖腺のつ/くりと性決定の流れ/2.性を決定する遺伝子SRY/3.精巣をつくるものたち︱SOX9-FGF9の働き/4.卵巣をつくるものたち︱RSPO1/WNT4シグナルとFOXL2の働き/5.哺乳類における卵巣形成の多様性/6.性分化する精子・卵子の通る道/7.ヒト以外の哺乳動物での性分化異常

第7章 哺哺乳類の脳の性︱感情・行動をつかさどる性
1.繁殖戦略における行動の性/差/2.情動や行動の性差をもたらす性シグナル、フェロモン/3.性行動/4.オス行動/5.メス行動/6.養育行動の性差/7.性ホルモンと脳の性差/8.脳の性的二型構造/9.社会とホルモン/

第8章 ヒトの性︱典型的な男・女とは?
1.典型的なヒトの男女︱どこ/が同じでどこが違うか?/2.遺伝子からみる典型的な男と女/3.人間社会における性︱社会では、男と女のあり方はどう決められている?/4.非典型的な性とは?/5.環境と性︱環境は性に影響するか?/6.ヒトの性の新たな捉え方︱性の揺らぎと多様性
第9章 昆虫の性︱多様な性決定遺伝子とそれらをのっとる寄生者
1.昆虫の性決定システム/とは/2.昆虫の性決定機構における多様性と類似性/3.カイコにおける性決定研究の歴史/4.ついに発見! カイコの性決定遺伝子/5.カイコが小分子RNAによってメスになる理由を探る/6.カイコのオス化遺伝子の研究から見えてきたもの/7.昆虫の性を操作する共生細菌ボルバキア

第10章 植物の性︱性決定の新たな世界
1.植物の性とその多様/性/2.植物の性決定の進化・性染色体/3.性を決定する遺伝子の発見︱「カキ」/4.性決定遺伝子の進化と論争︱ウリ科とアスパラガス/5.バラバラな性決定を生んだ「共通点」?︱キウイフルーツ/6.まだまだ未開の地︱イチゴ・ヒロハノマンテマ・スイバ/7.選ばれる性・揺らぐ性︱パパイヤ・ブドウ・栽培ガキ/8.植物の性染色体進化に一般性はあるのか?

第11章 多様な性決定システムにみられる共通性
1.性染色体の異/形化/2.性染色体の「常識?」/3.組み換え抑制がおきる至近要因︱どのようなメカニズムが働いているのか?/4.組み換え抑制がおきる究極要因︱なぜそうなったほうが有利なのか?/5.塗り替えられる「常識」/6.若い染色体/7.さらに若い性染色体たち/8.若さを保つ秘訣/9.動きまわる性決定遺伝子/10.性はなぜ存在するのか?/11.性決定遺伝子・性染色体はなぜ変わらなければならないのか?/12.性決定遺伝子はなくても性はきめられる?︱環境依存型の性決定

【筆者紹介】
第1・2・11章 田中実:名古屋大学大学院理学研究科・教授
第2章 大久保範聡:東京大学大学院農学生命科学研究科・准教授
第2章 宮副大地:東京大学大学院農学生命科学研究科
第3章 三浦郁夫:広島大学大学院理学研究科・准教授
第3章 伊藤道彦:北里大学理学部・准教授
第4章 松原和純:関西学院大学理工学部・助教
第5章 戸張靖子:麻布大学獣医学部・講師
第6章 金井克晃:東京大学大学院農学生命科学研究科・准教授
第6章 平松竜司:東京大学大学院農学生命科学研究科・助教
第7章 菊水健史:麻布大獣医学部・教授
第8章 深見真紀:国立成育医療研究センター研究所分子内分泌研究部・部長
第9章 勝間 進:東京大学大学院農学生命科学研究科・准教授
第10章 赤木剛士:京都大学大学院農学研究科・助教
第11章 菊池 潔:東京大学大学院農学生命研究科・教授

ミエリン鞘はとも呼ばれ、軸索に巻き付いて絶縁体として働く構造である。これにより神経パルスはミエリン鞘の間隙を跳躍的に伝わる(跳躍伝導)ことで神経伝達が高速になる。ミエリン鞘は末梢神経系の神経ではシュワン細胞、中枢神経系ではオリゴデンドロサイトから構成される。

脳の中にある空洞のこと。脳脊髄液で満たされている。脊髄にあるものは中心管と呼ばれる。

神経堤細胞は脊椎動物の発生時に見られる神経管に隣接した組織。頭部では神経、骨、軟骨、甲状腺、眼、結合組織などの一部に分化する。

細胞の生体膜(細胞膜や内膜など)にある膜貫通タンパク質の一種で、特定のイオンを選択的に通過させる孔をつくるものを総称してチャネルと呼ぶ。筒状の構造をしていて、イオンチャネルタンパク質が刺激を受けると筒の孔が開き、ナトリウムやカルシウムなどのイオンを通過させることで、細胞膜で厳密に区切られた細胞の内外のイオンの行き来を制御している。刺激の受け方は種類によって多様で、cGMPが結合すると筒の穴が開くものをcGMP依存性イオンチャネルと呼ぶ。TRPチャネルも複数のファミリーからなるイオンチャネルの一群であり、非選択性の陽イオンチャネルである。発見された際に用いられた活性化因子の頭文字や構造的特徴から、A (Ankyrin), C (canonical), M (melastatin), ML (mucolipin), N (no mechanoreceptor), P (polycystin), V(vanilloid)の7つのサブファミリーに分類されている。TRPは、細胞内や細胞外の様々な刺激によって活性化してセンサーとして働いたり、シグナルを変換したり増幅したりするトランスデューサーとしての機能も併せ持つ。温度センサーやトウガラシに含まれるカプサイシンのセンサーとしても機能していることが知られている。

任意の遺伝子の転写産物(mRNA)の相同な2本鎖RNAを人工的に合成し生物体内に導入することで、2本鎖RNAが相同部分を切断して遺伝子の発現を抑制する手法。2006年には、この手法の功績者がノーベル生理・医学賞を受賞している。

様々な動物種間で塩基配列やアミノ酸配列を比較することによって、類似性や相違を明らかにする手法。この解析によって動物種間の近縁関係や進化の過程を予測することが可能になる。

発生過程で神経管を裏打ちする中胚葉組織であり、頭索類・尾索類では背骨のような支持組織としての役割を持つ。脊椎動物では運動ニューロンの分化を誘導するなど発生学的役割を持つ

魚類に顕著にみられる鰓のスリットで、哺乳類では発生の初期にはみられる。発生が進むと複雑な形態形成変化が起き、消失するが、外耳孔などは鰓裂の名残ということができる。

動物の初期発生において最初の形態形成運動として原腸陥入が起こる。原腸は消化管に分化する。この原腸陥入によって生じる「孔」を原口と呼ぶが、これが将来の動物の体の口になるのが前口動物であり、肛門になるのが後口動物である。半索動物、脊索動物は後口動物である。

ナマコの幼生のことをオーリクラリア幼生と呼ぶが、ウニのプルテウス幼生、ヒトデのビピンナリア幼生、ギボシムシのトルナリア幼生など、形態的共通性をもつ幼生全体をまとめてオーリクラリア(型)幼生と呼ぶ。今日ではディプルールラ型幼生という呼び方が広く使われている。この説はガルスタングが1928年に提唱した。その時代にはオーリクラリアという用語が使われたため(ディプリュールラ説ではなく)オーリクラリア説と呼ばれている。

Hox遺伝子はショウジョウバエで発見されたホメオティック遺伝子の相同遺伝子である。無脊椎動物のゲノムには基本的に1つのHoxクラスターがあり、脊椎動物のゲノムには4つのHoxクラスターがある。Hoxb1は4つあるクラスターのうちのBクラスターに属する1番目のHox遺伝子という意味である。

脊椎動物胚の後脳領域には頭尾軸にそった分節性(等間隔の仕切り)がみられる。この各分節をロンボメアと呼び、図14に示すように7番目までは形態的に明瞭に観察できる。

脊椎動物のゲノムにはふたつか3つのIsletが存在する。Isletは脳幹(延髄、橋、中脳)の運動性脳神経核に発現して、運動ニューロンの分化に関与している。

感桿型では光刺激はホスホリパーゼCとイノシトールリン酸経路を活性化させる。繊毛型ではホスホジエステラーゼによる環状GMPの代謝が関与している。

気嚢による換気システムは獣脚類と呼ばれる恐竜から鳥類に至る系統で段階的に進化していったと考えられる。

このような特異な形態は胚発生期には見られず、生後に発達する。その過程は頭骨に見られる「テレスコーピング現象」と並行して進む。