遺伝子から解き明かす「魚」の不思議な世界

遺伝子から解き明かす〈魚〉の不思議な世界

世界中に多くのファンを持ち、また専門家にとっても研究対象として注目度の高い魚類。最新の研究成果や分子レベルでの知見をもとに、進化・多様性・生態・発生・発達などを、各筆者の研究事例をもとにして紹介。魚類について専門性が高い話題も平易な解説文とビジュアルを通して、一般読者に魚類の興味深い内容を紹介し、同時に魚類という生き物の魅力があまねく伝わる本を目指す。

編=神田真司

B6サイズ/520ページ/4500円+税/2019年5月発売予定/978-4-909383-07-5

【目次】

第1部 脊椎動物4億年の進化の中での魚
第1章 進化と現生生物
第2章 サメは硬骨魚類にあらず その生理と生態
第3章 硬骨魚類の多様な生存戦略がもたらす進化
第4章 閉ざされた湖で起こった進化
第5章 ゲノム編集技術による魚類研究の新展開

第2部 水あれば魚あり:環境への適応と研ぎ澄まされた感覚
第6章 海水と淡水をいったりきたり 適応する力
第7章 トゲウオから探る適応進化の分子遺伝メカニズム
第8章 感覚と行動の進化 電場を使って生きる魚
第9章 魚の味覚と摂餌行動の多様性

第3部 子孫を残す戦略:魚の生殖システムの進化と様々な産み方
第10章 魚から見えてくる哺乳類と魚の繁殖システムの違い
第11章 魚の卵の膜とそれを分解する酵素の共進化
第12章 卵生と卵胎生。収斂進化といろいろな個体発生

第4部 魚の性:決定の仕方、在り方から性転換魚まで
第13章 メダカの多様性から性決定遺伝子の進化を探る
第14章 魚にも二次性徴がある、性ホルモンが司る雌雄差
第15章 性を変える魚の世界 魚はいかにして性を変えるのか?

【筆者紹介】

第1、10章 神田真司:東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻・准教授
第2章 高木亙:東京大学大気海洋研究所生理学分野・助教
第3章 矢野十織:東京慈恵会医科大学解剖学講座・助教
第4章 二階堂雅人:東京工業大学生命理工学院・准教授
第5章 安齋賢:基礎生物学研究所バイオリソース研究室・助教
第6章 渡邊壮一:東京大学大学院農学生命科学研究科・准教授
第7章 石川麻乃:国立遺伝学研究所集団遺伝学研究系生態遺伝学研究部門・助教
第8章 小橋常彦:名古屋大学大学院理学研究科・特任講師
第9章 池永隆徳:鹿児島大学理工学域理学系・助教
第11章 佐野香織:城西大学理学部化学科・助教
第12章 飯田敦夫:京都大学ウイルス再生医科学研究所再生増殖制御学分野・助教
第13章 竹花佑介:長浜バイオ大学バイオサイエンス学部アニマルバイオサイエンス学科・准教授
第14章 荻野由紀子:九州大学農学研究院附属国際農業教育・研究推進センター国際教育ユニット・准教授
第15章 野津了・小林靖尚:(野津了)沖縄美ら島財団総合研究センター動物研究室研究員、(小林靖尚)近畿大学農学部水産学科水産生物学研究室・准教授

ミエリン鞘はとも呼ばれ、軸索に巻き付いて絶縁体として働く構造である。これにより神経パルスはミエリン鞘の間隙を跳躍的に伝わる(跳躍伝導)ことで神経伝達が高速になる。ミエリン鞘は末梢神経系の神経ではシュワン細胞、中枢神経系ではオリゴデンドロサイトから構成される。

脳の中にある空洞のこと。脳脊髄液で満たされている。脊髄にあるものは中心管と呼ばれる。

神経堤細胞は脊椎動物の発生時に見られる神経管に隣接した組織。頭部では神経、骨、軟骨、甲状腺、眼、結合組織などの一部に分化する。

細胞の生体膜(細胞膜や内膜など)にある膜貫通タンパク質の一種で、特定のイオンを選択的に通過させる孔をつくるものを総称してチャネルと呼ぶ。筒状の構造をしていて、イオンチャネルタンパク質が刺激を受けると筒の孔が開き、ナトリウムやカルシウムなどのイオンを通過させることで、細胞膜で厳密に区切られた細胞の内外のイオンの行き来を制御している。刺激の受け方は種類によって多様で、cGMPが結合すると筒の穴が開くものをcGMP依存性イオンチャネルと呼ぶ。TRPチャネルも複数のファミリーからなるイオンチャネルの一群であり、非選択性の陽イオンチャネルである。発見された際に用いられた活性化因子の頭文字や構造的特徴から、A (Ankyrin), C (canonical), M (melastatin), ML (mucolipin), N (no mechanoreceptor), P (polycystin), V(vanilloid)の7つのサブファミリーに分類されている。TRPは、細胞内や細胞外の様々な刺激によって活性化してセンサーとして働いたり、シグナルを変換したり増幅したりするトランスデューサーとしての機能も併せ持つ。温度センサーやトウガラシに含まれるカプサイシンのセンサーとしても機能していることが知られている。

任意の遺伝子の転写産物(mRNA)の相同な2本鎖RNAを人工的に合成し生物体内に導入することで、2本鎖RNAが相同部分を切断して遺伝子の発現を抑制する手法。2006年には、この手法の功績者がノーベル生理・医学賞を受賞している。

様々な動物種間で塩基配列やアミノ酸配列を比較することによって、類似性や相違を明らかにする手法。この解析によって動物種間の近縁関係や進化の過程を予測することが可能になる。

発生過程で神経管を裏打ちする中胚葉組織であり、頭索類・尾索類では背骨のような支持組織としての役割を持つ。脊椎動物では運動ニューロンの分化を誘導するなど発生学的役割を持つ

魚類に顕著にみられる鰓のスリットで、哺乳類では発生の初期にはみられる。発生が進むと複雑な形態形成変化が起き、消失するが、外耳孔などは鰓裂の名残ということができる。

動物の初期発生において最初の形態形成運動として原腸陥入が起こる。原腸は消化管に分化する。この原腸陥入によって生じる「孔」を原口と呼ぶが、これが将来の動物の体の口になるのが前口動物であり、肛門になるのが後口動物である。半索動物、脊索動物は後口動物である。

ナマコの幼生のことをオーリクラリア幼生と呼ぶが、ウニのプルテウス幼生、ヒトデのビピンナリア幼生、ギボシムシのトルナリア幼生など、形態的共通性をもつ幼生全体をまとめてオーリクラリア(型)幼生と呼ぶ。今日ではディプルールラ型幼生という呼び方が広く使われている。この説はガルスタングが1928年に提唱した。その時代にはオーリクラリアという用語が使われたため(ディプリュールラ説ではなく)オーリクラリア説と呼ばれている。

Hox遺伝子はショウジョウバエで発見されたホメオティック遺伝子の相同遺伝子である。無脊椎動物のゲノムには基本的に1つのHoxクラスターがあり、脊椎動物のゲノムには4つのHoxクラスターがある。Hoxb1は4つあるクラスターのうちのBクラスターに属する1番目のHox遺伝子という意味である。

脊椎動物胚の後脳領域には頭尾軸にそった分節性(等間隔の仕切り)がみられる。この各分節をロンボメアと呼び、図14に示すように7番目までは形態的に明瞭に観察できる。

脊椎動物のゲノムにはふたつか3つのIsletが存在する。Isletは脳幹(延髄、橋、中脳)の運動性脳神経核に発現して、運動ニューロンの分化に関与している。

感桿型では光刺激はホスホリパーゼCとイノシトールリン酸経路を活性化させる。繊毛型ではホスホジエステラーゼによる環状GMPの代謝が関与している。

気嚢による換気システムは獣脚類と呼ばれる恐竜から鳥類に至る系統で段階的に進化していったと考えられる。

このような特異な形態は胚発生期には見られず、生後に発達する。その過程は頭骨に見られる「テレスコーピング現象」と並行して進む。