『エネルギー資源の世界史』「エネルギー利用の視点から見た古代帝国の盛衰」

エネルギー資源の世界史

ギリシャ、ローマ帝国の衰退は、エネルギー資源の枯渇が誘引した?
古代帝国の盛衰を、エネルギー利用の視点から解説。

紀元前8世紀頃の古代ギリシャでは、多くの国家的な機能をもった小規模な都市国家(ポリス)が成立していた。紀元前5世紀前半にアケメネス朝ペルシアとアテネ(現代の民主政の源流を確立したと言われる)を中心とするポリス諸都市との間でペルシア戦争が起こり、最終的にはギリシャ側が勝利した。

ジョン・パーリンは、このようなギリシャ側の勝利の要因として、アテネ周辺の丘に存在した豊富な森林資源を指摘している。

ペルシア戦争における歴史的海戦であるサラミスの海戦においては、多数の軍船の建造が必要だったが、豊富な森林資源がそれらの建造を支持した。その一方で、パルテノン宮殿の建設などの都市における資材・エネルギー需要の拡大や、ラウリオン鉱山から産出される鉱石の製錬(精錬された銀は武器にも使用される)におけるエネルギー需要の拡大が続くと、森林資源が重要な戦略物質である認識もされていった。

その後、アテネとスパルタがギリシャを二分して覇権を争ったペロポネソスの戦い(紀元前431年から404年)の頃には、森林資源や農耕土壌の衰退が顕在化しており、森林資源の確保が勝敗を左右する要因になった。スパルタ側は昔の敵だったペルシアと同盟を組むことによりペルシア側の森林資源の利用が可能となり、結果としてスパルタが勝利したが、社会を支える森林資源というエネルギー基盤の喪失からギリシャ全体の衰退を招くことになった。

古代ローマ帝国は、イタリア半島中部に位置した多部族からなる都市国家を起源として、国力が衰弱したギリシャの都市国家を次々に征服し、領土を拡大していった。古代ギリシャがポリスの連合体で形成されているのに対して、古代ローマは中央政権が支配する領土国家であった。

2世紀頃になると、ローマ帝国の規模は最大となり、地中海世界の全域を支配するまでになった(図6)。この時、帝国は100万人を超える住民を抱えており、征服・公共事業などの様々な活動は主として人力エネルギーに依存していた。従って、そのような人力エネルギーを支えるための食料供給の土地の確保が重要であった。ローマ帝国のエジプトへの侵攻と服従は、カエサルのクレオパトラへの情欲ではなく、ローマ人によって劣化させられたイタリアの農耕土壌を背景とした、食料供給のための土地確保であったことを、チャールズ・ホールは指摘している。

「エジプトはナイルの賜物」の言葉の通り、ナイル川の定期的な氾濫によって形成された肥沃な土壌の恵みで、エジプトの壮大な文明が築かれた。このようにして、商業・貿易は栄え、公共事業等の土木・建築技術も進展し、2世紀頃には人々にとって最高の時代を迎えていた。一方で、自然資源(穀物、森林資源、太陽エネルギー)の変動に影響を受ける経済の浮き沈みという問題が存あった。

つまり、ローマ人は自然から与えられるエネルギー供給能力を超えるエネルギー消費をしていたことを意味する。結果として、生きるために必要なエネルギーを供給していた周辺の自然資源の劣化が始まり、より遠くの自然資源に依存するようになった。

そうなると今度は輸送エネルギーが発生するため、正味の生産性は落ちることになる。このような状況に対応するために、政府は金や銀などの当時の貨幣の改鋳を行った。しかし、この貨幣改鋳により過度なインフレが起こり、交易における購買力は低下した。

ジョセフ・テインターはローマ帝国の崩壊をエネルギーのバランスの崩れで説明している。ローマ人の自然資源の獲得の方法は侵略・征服であった。ある領土に形成された自然資源は、太陽エネルギーを蓄積したものである。そして、鉱物資源は人間のエネルギーで採掘し、森林資源を使用して精錬しなくてはならない。このような仕事は骨が折れるため、ローマ人はその種の作業には手を出さず、それらを有する地域を征服してそれらを獲得する手段を選んだ。

被征服国からエネルギーや富の流れができることによってローマ帝国が拡大していくと、輸送のためのエネルギーが増すとともに、帝国全体を統治する仕組みが複雑性を増してくる(例えば食料を適切に生産し適切に分配する仕組みは規模が大きくなるほど難しくなる)。そのため、統治のためのエネルギーも増してくる。

このような領域の拡大と複雑性の増加に対応するための余分なエネルギー消費が増えることになる。最終的に臨界点を超えると、全体としての劣化が始まる。

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ミエリン鞘はとも呼ばれ、軸索に巻き付いて絶縁体として働く構造である。これにより神経パルスはミエリン鞘の間隙を跳躍的に伝わる(跳躍伝導)ことで神経伝達が高速になる。ミエリン鞘は末梢神経系の神経ではシュワン細胞、中枢神経系ではオリゴデンドロサイトから構成される。

脳の中にある空洞のこと。脳脊髄液で満たされている。脊髄にあるものは中心管と呼ばれる。

神経堤細胞は脊椎動物の発生時に見られる神経管に隣接した組織。頭部では神経、骨、軟骨、甲状腺、眼、結合組織などの一部に分化する。

細胞の生体膜(細胞膜や内膜など)にある膜貫通タンパク質の一種で、特定のイオンを選択的に通過させる孔をつくるものを総称してチャネルと呼ぶ。筒状の構造をしていて、イオンチャネルタンパク質が刺激を受けると筒の孔が開き、ナトリウムやカルシウムなどのイオンを通過させることで、細胞膜で厳密に区切られた細胞の内外のイオンの行き来を制御している。刺激の受け方は種類によって多様で、cGMPが結合すると筒の穴が開くものをcGMP依存性イオンチャネルと呼ぶ。TRPチャネルも複数のファミリーからなるイオンチャネルの一群であり、非選択性の陽イオンチャネルである。発見された際に用いられた活性化因子の頭文字や構造的特徴から、A (Ankyrin), C (canonical), M (melastatin), ML (mucolipin), N (no mechanoreceptor), P (polycystin), V(vanilloid)の7つのサブファミリーに分類されている。TRPは、細胞内や細胞外の様々な刺激によって活性化してセンサーとして働いたり、シグナルを変換したり増幅したりするトランスデューサーとしての機能も併せ持つ。温度センサーやトウガラシに含まれるカプサイシンのセンサーとしても機能していることが知られている。

任意の遺伝子の転写産物(mRNA)の相同な2本鎖RNAを人工的に合成し生物体内に導入することで、2本鎖RNAが相同部分を切断して遺伝子の発現を抑制する手法。2006年には、この手法の功績者がノーベル生理・医学賞を受賞している。

様々な動物種間で塩基配列やアミノ酸配列を比較することによって、類似性や相違を明らかにする手法。この解析によって動物種間の近縁関係や進化の過程を予測することが可能になる。

発生過程で神経管を裏打ちする中胚葉組織であり、頭索類・尾索類では背骨のような支持組織としての役割を持つ。脊椎動物では運動ニューロンの分化を誘導するなど発生学的役割を持つ

魚類に顕著にみられる鰓のスリットで、哺乳類では発生の初期にはみられる。発生が進むと複雑な形態形成変化が起き、消失するが、外耳孔などは鰓裂の名残ということができる。

動物の初期発生において最初の形態形成運動として原腸陥入が起こる。原腸は消化管に分化する。この原腸陥入によって生じる「孔」を原口と呼ぶが、これが将来の動物の体の口になるのが前口動物であり、肛門になるのが後口動物である。半索動物、脊索動物は後口動物である。

ナマコの幼生のことをオーリクラリア幼生と呼ぶが、ウニのプルテウス幼生、ヒトデのビピンナリア幼生、ギボシムシのトルナリア幼生など、形態的共通性をもつ幼生全体をまとめてオーリクラリア(型)幼生と呼ぶ。今日ではディプルールラ型幼生という呼び方が広く使われている。この説はガルスタングが1928年に提唱した。その時代にはオーリクラリアという用語が使われたため(ディプリュールラ説ではなく)オーリクラリア説と呼ばれている。

Hox遺伝子はショウジョウバエで発見されたホメオティック遺伝子の相同遺伝子である。無脊椎動物のゲノムには基本的に1つのHoxクラスターがあり、脊椎動物のゲノムには4つのHoxクラスターがある。Hoxb1は4つあるクラスターのうちのBクラスターに属する1番目のHox遺伝子という意味である。

脊椎動物胚の後脳領域には頭尾軸にそった分節性(等間隔の仕切り)がみられる。この各分節をロンボメアと呼び、図14に示すように7番目までは形態的に明瞭に観察できる。

脊椎動物のゲノムにはふたつか3つのIsletが存在する。Isletは脳幹(延髄、橋、中脳)の運動性脳神経核に発現して、運動ニューロンの分化に関与している。

感桿型では光刺激はホスホリパーゼCとイノシトールリン酸経路を活性化させる。繊毛型ではホスホジエステラーゼによる環状GMPの代謝が関与している。

気嚢による換気システムは獣脚類と呼ばれる恐竜から鳥類に至る系統で段階的に進化していったと考えられる。

このような特異な形態は胚発生期には見られず、生後に発達する。その過程は頭骨に見られる「テレスコーピング現象」と並行して進む。