現在のフランスにおいて、日本発祥の柔道はすでに、国技と呼ぶにふさわしい地位を得ている。道場やクラブで練習するすべての人びとの数を示す柔道連盟の2016年度の登録者数は約60万人で、これはサッカーとテニス、馬術に次ぐ4番目に多い数字である。競技会に出る選手と指導者だけが登録を義務づけられている日本とは事情が異なるので、単純な比較はできないが、この数字は同じ年の講道館への登録者数(約16万人)の約4倍に相当する。フランスの人口が日本の約半分であることを考えると、柔道の裾野の広がりは誰の目にも明らかであろう。

 フランスにおける柔道の国技化は、①1905年にパリで行なわれた異種格闘技戦における柔術の勝利と(図12)、これをきっかけにした護身術としての柔術の流行、②柔道の精神性と教育効果とを見抜き、その本質と魅力を当時の上流階層の人びとに巧みに伝えたフランス人の存在、③2016年リオ・デ・ジャネイロ大会までのオリンピックで、日本に次ぐ51個のメダルを獲得するまでにいたった競技力の強化が織りなした結果である。